エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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第5回公害資料館連携フォーラムin大阪が開催されました!

 f:id:l-library:20171215135919j:plain全国の公害資料館が集まり、公害の記録・教訓をどう伝えるかを話し合う「第5回公害資料館連携フォーラム」が12月15日(金)から17日(日)にかけて、15日はフィールドワークとして大阪市西淀川区及び尼崎市、16・17両日は大阪市立大学で分科会として開催され、参加しました(イベントの概要は以下の通り)。

日時:2017年12月15-17日(金-日)

会場:大阪市立大学

内容:

フィールドワーク
12/15(金)  13-17時
西淀川コース(定員30名)
尼崎コース(定員25名)

基調講演 (12/16 13-15時)
「記憶の繋ぎ方:場所の力とメモリアル」東 自由里(ひがし じゆり)

分科会
12/16(土)
分科会16-1 資料保存「公害資料の活用」
分科会16-2 学校「公害と差別を考える」
分科会16-3 地域づくり「公害患者が望む「公害の教訓」の活かされ方とは」

12/17(日)
分科会17-1 公害入門「日本の公害環境問題の克服と裁判の役割」
分科会17-2 語り部語り部からの学びを深める」
分科会17-3 企業「企業とともに公害の経験を伝える」  

f:id:l-library:20171216153936j:plain 15日は尼崎市フィールドワークに参加し、尼崎公害患者・家族の会が地域環境改善のために開設した「赤とんぼの里」で代表の松光子さんからお話を伺ったのち、公害対策のために整備された元浜緑地、北堀キャナルベース、尼崎の森中央緑地を経て、尼崎市立地域研究史料館で公害について収集した資料(上の写真)を閲覧しました。

 16日には、公害問題に関する資料を活用していくための取り組みについて考える分科会「公害資料の活用」に参加し、尼崎市史料館の松岡弘之さんから「文書館の機能と役割」と題する報告がありました。報告に続いて30名をこえる参加者のみなさんによりアイデアを出し合うワークショップも実施され、活発な議論が行われました。 f:id:l-library:20171216174333j:plain

 17日には、公害資料館の基本となる「語り部」の話を聞くこと、場をつくることの意味を考える分科会「語り部から学びを深める」に参加しました。水俣病イタイイタイ病のような、原因企業がはっきりしている公害、一方尼崎、西淀川の公害のような大気汚染による呼吸器疾患は責任の所在が明確でないゆえの複雑さが存在します。それゆえ、各地で活動が独自に発展する中、「すりあわせ」をする作業をしないと公害資料ネットワークとして次の段階に進めない、そういう思いが反映した議論となりました。(ボランティアスタッフ・森井雅人)

新着雑誌です(2017.12.23)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。

労政時報 3942号 2017.12.8 (201310059)

労政時報 3943号 2017.12.22 (201310083)

ビジネスガイド No848 2017.1.10 (201310034

労務事情 No1353 2017.12.15 (201310026)

賃金事情 No2753 2017.12.20 (201310091)

月刊人事マネジメント 324号 2017.12.5 (201310174)

労働基準広報 No1943 2017.12.1 (201310141)

労働基準広報 No1945 2017.12.21 (201310117)

旬刊福利厚生 No2236 2017.11.28 (201310208)

季刊労働法 259号 2017.12.15 (201310232)

賃金と社会保障 1695号 2017.12.10 (201310067)

労働法律旬報 1901号 2017.12.10 (201310166)

労働法令通信 No2470 2017.11.28 (201310125)

労働法令通信 No2471 2017.12.8 (201310158)

労働法令通信 No2472 2017.12.18 (201310182)

労働法令通信 No2473 2017.12.28 (201310216)

労働法学研究会報 No2657 2017.11.15 (201310240)

労働法学研究会報 No2659 2017.12.15 (201310257)

 

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追悼:笑福亭仁勇さん

 当館が今年5月に開催した「炭鉱の記憶と関西 三池炭鉱閉山20年展」で創作落語を上演してくださった笑福亭仁勇(しょうふくてい・にゆう)さんが12月16日に急逝されました。享年59歳。12月11日に脳内出血で倒れて帰らぬ人となりました。

 直前まで元気だったのに、あまりにもあっ気ない逝去に、言葉を失います。ボランティア精神にあふれた、優しい方でした。先月も飲み会で子育て話や政治の話、あれこれと盛り上がったばかりだったのに。大阪のおばちゃん5人に囲まれた仁勇さんは嬉しそうに写真に収まっておられました。その時に一緒に撮ってもらった写真が最後になるとは。

 下の写真は、「あの日の炭坑節」を語る仁勇さん(5月7日、エル・おおさか9階にて)。この展示会では2回上演していただき、2回とも立ち見が出る盛況でした。人情噺に涙を流しながら聞いていた人もいました。

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 訃報を受けて、当館と「関西・炭鉱と記憶の会」では、連名で弔電をお送りしました。

「突然の旅立ちに、私たちは悲しみにくれています。炭鉱展で披露いただいた創作落語の軽妙な語り口を思い浮かべながら、ご厚情に感謝するとともに、ご冥福を心よりお祈りいたします。」

 また、記憶の会のメンバーが通夜式に参列し、受付を手伝いました。その様子を

「落語家さんや吉本関係の方も大勢来られていましたが、一般受付が最も多いように思いました。仁勇さんがどれだけ区内のイベントに関わり、地域の人たちと心を通わせていたかよくわかりました。
 高齢者の施設での催しから小学校での読み語り、野外イベント、音楽イベント、最近では0円食堂のお手伝いまで。
 あらゆる場で企画力と現場での労力を惜しまない方でした」と語っています。

 仁勇さんが教えてくれた助け合いの精神をわたしたちも大事にしていきます。どうぞ安らかにお眠りください。

  関西・炭鉱と記憶の会、エル・ライブラリー (文責:谷合佳代子)

デジタルアーカイブの講演会、満員御礼

 12月7日に開催したデジタルアーカイブ学会と当館との共催イベントは、会場満杯の36人が参加して盛況の裡に終了しました。以下、簡単に概要報告を。

デジタルアーカイブ学会関西支部第1回例会

日時:12月7日(木)13:00~16:30
場所:エルおおさか本館6階604号室
報告1:デジタルアーカイブに関わる肖像権を60分で学ぶ in 関西 
    福井健策(弁護士・骨董通り法律事務所)
報告2:国立民族学博物館における地域研究画像デジタルライブラリの構築と研究者支援
    飯田卓(国立民族学博物館 学術資源研究開発センター 准教授)
    丸川雄三(国立民族学博物館 人類基礎理論研究部 准教授)
主催:デジタルアーカイブ学会関西支部、エル・ライブラリー

  

  まずは関西支部の代表である原田隆史先生(同志社大学)からのご挨拶。非会員の参加が多かったので、「ぜひ学会にご参加を」と呼びかけられました。

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 そして前半は福井弁護士による、軽妙トークながら中身の濃ーい著作権法のお話です。みなさん非常に熱心に聞いておられました。

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 肖像権がテーマとなる今回の講演では、「被撮影者がカメラに向かってこんな風にポーズをとった場合は、撮影され公開されることに無言の承認があったと考えるべき」と、講演の最中にポーズをとるお茶目な福井先生。

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 大忙しの福井先生は押し寄せる質問をテキパキとさばいた後、某放送局へ直行。ユーモアあふれるお話で、楽しみながらしっかり勉強ができました。やはり図書館・博物館関係のみなさんは肖像権や著作権の問題で悩みが尽きないようで、実務的な質問が多数寄せられました。

 続いては、民博(国立民族学博物館)の飯田先生と丸川先生による、現在進行形の写真デジタルアーカイブプロジェクトの説明です。写真は文字情報がないため、メタデータをつけるのが至難の業ですが、研究者個人や団体が持っている写真を民博に託し、民博が写真のデジタル化とデータベース作成の最低限の作業までやってくれるという、ありがたいプロジェクトです。

 ↓プロジェクトの概要を説明する飯田先生。

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メタデータの作成方法その他の技術面について解説する丸川先生。

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  こちらはまだまだコンテンツが少ないとのことで、デジタルアーカイブを1年で構築するという荒業を実験中です。MLAのいろんな機関でさまざまな取り組みが行われているということが実感できた講演でした。やはり肖像権の処理が大変手間のかかることのようです。

 講演の後は飯田先生と丸川先生を囲んで懇親会。こちらも異様なほどに盛り上がって、デジタルアーカイブという新しい世界をこれから構築していく意気込みが参加者から感じ取ることができました。現場の悩みも尽きない、という情報交換もできて大変有意義でした。当館でも今後、労働資料のデジタルアーカイブを進めていくために、クリアしないといけない課題が山積していることを実感しました。日々勉強、日々前進、日々精進。(谷合)

新着雑誌です(2017.12.14)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち、最新のものは貸出できません。

労務事情 No1352 2017.12.1 (201310018)

賃金事情 2752号 2017.12.5 (201310109)

企業と人材 No1058 2017.12.5 (201310075)

労働判例 No1165 2017.12.1 (201310042)

労働経済判例速報 2326号 2017.1130 (201310133)

人事実務 No1179 2017.12.1 (201099066)

労働法学研究会報 No2658 2017.12.1 (201310000)

労働法律旬報 1901号 2017.12.10 (201310166)

賃金と社会保障 1694号 2017.11.25 (201310190)

旬刊福利厚生 No2235 2017.11.14 (201309978)

月刊人事労務 345号 2017.10.25 (201310224)

 

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「子どもの貧困」を問い直す 家族・ジェンダーの視点から

(松本伊智朗編/法律文化社/2017年10月/A5判272頁) 

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 本書は、「子どもの貧困」を家族・ジェンダーの視点からの議論を試みた研究会の成果であり、3部構成12論考からなっている。

編者の松本伊智朗が序論において、研究会の共通認識を概括した上で、各論考についての論点と特徴を明快に規定していて、本書が個人論文集ではなく、明確な問題意識の下になされた集団作業の成果であり、継承発展させる視点を共有しやすくし、読者にとってもアクセスしやすい書となっている。

 「子どもの貧困」を生み出す構造として―1)親や大人の生存権と幸福追求権の侵害の側面、2)子ども権利の侵害の側面、3)子どもの養育・教育の家族依存の側面―の三つの側面がそれぞれ進行すると同時に、相互規定的に強化されているが、本書は主にこの第3の側面に焦点を当てている。家族という仕組みを相対化し、そこに女性が負ってきた社会的不利がどのように埋め込まれてきたのかを明らかにして、貧困を問い直していく作業が必要であり、本書はその試みの形を示したい―と編者は述べている。

 さらに、「子どもの貧困」に対する社会的関心が高まり、子どもの貧困対策法・大綱の設定にみられるように、政策的課題として意識されるようになったことは、この十年を考えると、一定の前進であると評価できるが、現在の議論と政策動向には危惧がある―として、子どもの貧困対策法に所得保障の観点が薄く、学習支援が強調されることは、子どもの貧困を社会問題としての貧困から分断し、対策を矮小化するという指摘は、本書の問題提起を共有化する重要性を認識させられる。 

 本書の構成と執筆者は以下の通りである。

  • 第1部 子どもの貧困と政策‥‥ 湯沢直美、藤原千沙、阿部彩、フラン・ベネット
  • 第2部 生活の今日的特徴と貧困の把握‥‥ 蓑輪明子、丸山里美、鳥山まどか
  • 第3部 ジェンダー化された貧困のかたち‥‥ 吉中季子、大澤真平、杉田真衣、藤原理佐、田中智子

 字数の関係で各論の紹介はできないが、印象的だった部分の一端を少し挙げてみたい。

 藤原千沙は(2章「新自由主義への抵抗軸としての反貧困とフェミニズム」)、「貧困を生み出さす元凶」としての「新自由主義という統治」に対する抵抗軸として、「依存を包摂する社会」を対置する。依存を認識しないで構築された近代市民社社会は、効率性や合理性の追求に価値を置き、女性は分断されるが、フェミニズムは、この構造に異議を申し立て、ケアを受けること、ケアを与えることの双方が、決して奪われることのない財として、社会で取り扱われるべきことを求めてきた。女性の貧困に声をあげ、その克服をめざすジェンダー平等は、子どもの貧困を克服するうえで共通の目標となる― と述べている。

 ケアの権利については、湯沢直美も(2章「子どもの貧困対策の行方と家族主義の克服」)―「子どもの貧困」問題は、経済的困窮という所得の問題ばかりでなく、人間の生存に不可欠なケアを社会全体でいかに確保するのか、という根源的な問いを孕んでいる― と述べている。

 蓑輪明子は(5章「新自由主義下における日本型生活構造と家族依存の変容」)、労働市場の変容と労働力の商品化の進行という観点から今日の生活構造の特徴について整理し、脱商品化に向けた論点を提示している。労働力商品化それ自体にルールを確立する必要性(特に労働時間と賃金水準)を説き、女性や子どもの労働力商品化が劣悪な労働市場の基盤となるという歪んだ連関を断ち切ることができると述べている。

 杉田真衣は(10章「若年女性の貧困と性的サービス労働」)、女性の貧困に関する論争的な論点の一つである性的サービス労働に対して、「あってはならない」という認識の弊害を具体的に挙げ、興味本位の関心や憐みやスティグマが伴う視線に対して、「そこにあるもの」という事実から出発し、「当事者が自分の境遇について話すことができる環境を作っていくこと」の重要性を指摘する。これは貧困の解決をめざす取り組み全体で共有すべき指摘である。

 各論考とも、具体的な検証と示唆深い視点に学びが多い書である。(伍賀偕子(ごか・ともこ):元「関西女の労働研究会」代表)

      

『女工哀史』と猪名川 ― いよいよ刊行間近

当ブログで4回にわたって連載した「『女工哀史』と猪名川 ― 名著は兵庫県で書かれた」を執筆された小田康徳氏の最新刊が、いよいよ刊行間近となりました。

 今回は、そのことを報じた、朝日ファミリー・デジタルの記事をご紹介しましょう。大田季子さんが書いた記事では、『歴史と猪名川川西市域から見た・川と人との物語―』(仮題)というタイトルで年明けにも神戸新聞総合出版センターから出版されるとのこと。

www.asahi-family.com

 大田さんの記事では、猪名川女工哀史の関係が多くの写真とともにわかりやすく謎解きされています。ぜひお読みください。