エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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過労死・過労自殺の現代史 ~働きすぎに斃れる人たち~

『過労死・過労自殺の現代史 ~働きすぎに斃れる人たち~』

 熊沢 誠 (岩波現代文庫/2018年12月/文庫版435頁)

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 本書は、2010年に岩波書店から刊行された『働きすぎに斃れて―過労死・過労自殺の語る労働史』の現代文庫版であるが、各事例の2010年後の推移や2018年に強行採択された「働き方改革関連法」へのコメントも含めて、「現代文庫版へのあとがき~過労死・過労自殺の現時点」が加えられて、より深みを増している。

 原本は、企業社会のしがらみや「強制された自発性」に絡めとられながら、限界をこえるまで働き、過労死・過労自殺した労働者の50を超える事例(80年代からおよそ2007年頃まで)について、遺族の告発手記や裁判記録などを丁寧に分析して、ニッポンのいびつな社会構造に迫り、「重層的な要因を帰納法的に考察している」。

 80年代「過労死」が社会問題として浮上し、不名誉にも“カロウシ”が国際用語として出回りはじめたこの時期に並行して、労働時間法制が変形労働時間制をはじめ、解体の道を急速に辿る労基法改悪が重ねられてきて、憤りを抑えがたい。そのような時期に刊行された原著の意義はすこぶる大きな役割を果たしたと思う。

 近年、過労死・過労自殺は減ることなく、若者や女性に普通のことになった非正規雇用化と差別化が深く関わって、表面に浮び出ない事態も増えている一方、“働き方改革”がはやり言葉のように謳われているなか、品切れとなっていたこの原著が読みやすい文庫版として刊行されたことは、意義深く喜ばしいことである。

 著者は、――過労死・過労自殺の重層的な要因の論理化にあたり、働かせる企業労務、労働行政の不備と労働組合の機能不全、社会保障の日本的性格を考察した上で、「強制された自発性」に閉じ込められた労働者の主体意識のあり方に注目した。あえて労働者の主体性を凝視したのは、現時点の労働組合の国際相場を割る機能不全と、本来の組合運動のもつ可能性への労働者自身のあきらめとの、相互依存関係の克服を希求するからだ――と強調している。

 とりわけ、「労働行政の不備と労働組合の機能不全」については、終章の「過労死・過労自殺をめぐる責任の所在」の3節にリアルな事例検証を通じて告発されている。多くの事例検証を追っていくと、労働組合はどこに出てくるのか、むしろ労災認定の証言などでは企業と一緒になって抑える側に居て、労働運動に関わってきた者としては苦しくなるような場面がいくつも重なる。

 著者は労働組合について、――今では組合員である正社員についても、一人ひとりのノルマ、残業、サービス残業などには、ほとんどタッチしなくなっている――と指摘し、そして、―企業に求められる能力と成果の内容と水準へのノンエリート的規制、人事考課による労働条件格差の限定を含む「個人処遇」のチェック、労働者が自分に割り当てられた労働にまつわる苦しみをいつでも訴えることのできる組合運営の慣行構築――を提起している。

著者は、――過労死・過労自殺を労働現場で根絶するためには、労働組合こそが「個人の受難にどこまでも寄り添う」思想と行動を取り戻すことがやはり不可欠だという見果てぬ夢を追い続ける――と述懐している。この「希求」が、苦しくなるような事例検証も含めて、本書に貫かれていて、読者を以下の言葉に誘ってくれる。

 ――働く人びとの主体性は、命と生活を守るためには、仕事のありかたについて発言できる、個人の受難に寄り添うことのできる連帯の労働組合運動の再構築に発揮されるべきであろう。普通の労働者と市民がそう気づくとき、長らくただ見送り続けてきた過労死の葬列の途絶える日がきっと訪れる――。(伍賀偕子<ごか・ともこ> 元「関西女の労働問題研究会」代表)

新着雑誌です(2019.4.11)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

賃金事情 No2781 2019.4.5 (201341518)

労政時報 3970号 2019.4.12 (201327889)

ビジネスガイド No870 2019.5.10 (201327822)

月刊人事マネジメント 340号 2019.4.5 (201327970)

労働法学研究会報 No2690 2019.4.1 (201327855)

賃金と社会保障 1726号 2019.3.25 (201327913)

地域と労働運動 223号 2019.3.25 (201327947)

労働基準広報 No1989 2019.4.1 (201328002)

労働基準広報 No1990 2019.4.11 (201341450)

労働情報 No980 2019.4.1 (201341484)

 

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ボランティア・市民活動ライブラリー訪問記

 桜が満開で人だらけの天満橋駅近くにある、大阪ボランティア協会さんの事務所を当館の館長・谷合と館長補佐・千本(ちもと)が訪ねました。こちらは「ボランティア・市民活動ライブラリー」という図書室を備えておられます。エル・ライブラリーから徒歩5分の至近距離にあることですし、所蔵資料も一部重なっていることもあり、今後は資料を通じた連携をより一層深めていけるようにと、まずはご挨拶に伺いました。

 ちょうど、資料整理担当のボランティアさんたちが会議を始めようとされているタイミングでお邪魔することになりました。畳敷きの上がり框で掘りごたつふうのテーブルがしつらえてある、とても居心地のいい会議場所です(下の写真)。手前に見えている写真パネルは、ボランティア協会の歩みを示したもの。

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 壁にしつらえられた書架には、図書や雑誌、報告書、文書ファイルなどが並びます。目録の採録が一通り終わり、現在、協会会員限定で貸し出しを行っています。 会員外の一般の方でも、自由に閲覧できるそうです。

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 閲覧スペースにはさわやかな木製机が並びます。

 広々とした事務所スペースに居心地のいいミーティングスぺース、そして書架にきれいに並んだ図書。明るい室内に多くのスタッフのみなさんの活発な声が響く、とても生き生きとした居心地のよさそうなところでした。 

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 事務スペースも図書閲覧スペースもオープンになっていて、すべてワンフロア内におさまっています。コーヒーセットも用意されており、1杯100円~のカンパを払ってセルフサービスでいただけます。

 大阪ボランティア協会は50年以上の歴史を誇る老舗のボランティアセンターです。このたび蔵書データベースを整えられましたが、まだWEB公開するには至っていません。そのための資金は寄付で集めるとのことで、現在、「蔵書検索システム構築」寄附金を募集しています。みなさまのご協力をお願いいたします。詳しくは下記リンク先をご覧ください。(谷合佳代子)

■寄附募集について http://www.osakavol.org/09/donation.html
■ライブラリーについて http://www.osakavol.org/07/library/index.html

社会福祉法人大阪ボランティア協会の基本情報>

〒540-0012 大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F

市民活動スクエア「CANVAS谷町」

TEL 06-6809-4901 FAX 06-6809-4902

Email: office@osakavol.org

WEBサイト:大阪ボランティア協会 トップページ

 

社会運動史研究の現在地 ——『社会運動史研究』第1巻合評会(5/10)

【まちライブラリーブックフェスタ参加企画】

 当館館長谷合佳代子のインタビューが掲載されている『社会運動史研究』1巻が刊行されました。これを記念して、5月10日(金)に当館にて合評会と書庫見学会を開催します。

 以下、主催者である編集者の開催趣旨を転載します。

 今年2月に刊行された『運動史とは何か——社会運動史研究1』(大野光明・小杉亮子・松井隆志編、新曜社)の合評会を開催します。
 『社会運動史研究』は、運動史研究のメディアが見当たらない現状を前に、運動史研究にたずさわる人びとが議論を交わし知見を共有できる場をつくりだそうと、新しく始められたばかりのメディアです。
 発起人の3人は社会学を専門とする研究者ですが、この新しいメディアを、さまざまな領域の研究者と共有できる場として、また、職業的研究者の営みに閉じずに運動現場とも結合しうる場として、育てていきたいと考えています。
 第1巻は「運動史とは何か」と題し、さまざまな角度から、運動史研究の視座や方法論、現在の問題、過去の事例などが論じられました。今回の合評会では、『社会運動史研究』がめざす運動史研究のプラットフォームづくりの第一歩として、編者とともに第1号の内容について議論し、運動史研究の今後の課題を探ります。
 会場となるエル・ライブラリーの館長・谷合佳代子さんは、第1巻に登場し、運動史資料の魅力と現在の社会運動アーカイブズが置かれた危機的状況を語っています。
当日は、谷合さんのガイドでエル・ライブラリーの書庫見学会を実施し、そこから議論をスタートさせます。貴重な書庫見学の機会です。
 ふるってご参加ください!!

●コメンテーター●
伊藤綾香——国際経済労働研究所準研究員、福祉社会学・社会運動論
黒川伊織——神戸大学大学院国際文化学研究科協力研究員、日本思想史・社会運動史

●参加費●無料

●定員15名 / 要・事前申込み●
スペースの関係から定員を設けます。
参加ご希望のかたは、『社会運動史研究1』編集委員会 <socialmovementhistory2018@gmail.com> まで、メールでお申し込みください。そのさい、メールの件名は「エル・ライブラリー合評会申込み」とし、メール本文にはお名前と懇親会参加の有無を明記ください。

日時:2019年5月10日(金)

16:00〜17:00 エル・ライブラリー書庫見学会
17:00〜17:10 『社会運動史研究1』編者による発刊の趣旨説明
17:10〜17:30 コメント①伊藤綾香さん
17:30〜17:50 コメント②黒川伊織さん
17:50〜18:10 編者からの応答
18:10〜19:00 議論

●終了後、懇親会あり●
●主催●
エル・ライブラリー、『社会運動史研究1』編者一同

社員研修用DVD

 新入社員研修の季節になりました。この時期に人気のDVDを7タイトル8本受け入れしましたので、ぜひご活用ください。

 なお、DVDの貸し出しはサポート会員様に限らせていただいています。サポート会員の説明はこちらです↓

http://shaunkyo.jp/members/

 DVDの貸出し点数と期間はは3本1週間。予約も可能です。詳しくはこちらをご覧ください↓

http://shaunkyo.jp/dvd/

 今回新しく入ってきたDVDは以下の通りです。

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パワーハラスメントを考える(全2巻)

◆障害者は困っています!合理的配慮へのポイント2(発達障害、知的障害、精神障害

◆”危険軽視”によるヒューマンエラー 常に安全行動を。そのためには?

◆みんなで守って、繰り返し災害ゼロ!現場の基本ルール(冊子付)

◆なぜ不安全行動をするのか【改訂版】その心理的要因をさぐる

◆初級ビジネスマナー第2巻

◆建設現場で働く皆さん これだけは守ろう 基本ルール17か条

新着雑誌です(2019.4.3)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1381 2019.4.1 (201327632)

企業と人材 No1074 2019.4.5 (201327608)

人事実務 No1195 2019.4.1 (201327665)

労働判例 No1194 2019.4.1 (201327699)

労働経済判例速報 2370号 2019.3.20・30 (201327723)

労働法律旬報 1932号 2019.3.25 (201327756)

労働法令通信 No2514 2019.3.18 (201327582)

労働法令通信 No2515 2019.3.28 (201327616)

旬刊福利厚生 No2268 2019.3.26 (201327558)

 

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新着雑誌です(2019.3.26)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

賃金事情 No2780 2019.3.20 (201327442)

労務事情 No1380 2019.3.15 (201327418)

労政時報 3969号 2019.3.22 (201327509)

労働判例 No1193 2019.3.15 (201327475)

季刊労働法 264号 2019.3.15 (201327343)

労働法学研究会報 No2688 2019.3.1 (201327426)

労働法学研究会報 No2689 2019.3.15 (201327301)

賃金と社会保障 1724号 2019.2.25 (201327335)

賃金と社会保障 1725号 2019.3.10 (201327368)

旬刊福利厚生 No2267 2019.3.12 (201327392)

労働基準広報 No1986 2019.3.1 (201327517)

労働基準広報 No1988 2019.3.21 (201327319)

月刊人事労務 361号 2019.2.25 (201327459)

地域と労働運動 222 2019.2.25 (201327483)

労働法令通信 No2512 2019.2.2 (201327376)

労働情報 No979 2019.3.1 (201327400)

 

詳細な目次はこちら

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