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プラザと資料センター存続を要望する研究者のコメントを掲載します

 大阪府労働情報総合プラザは、大阪府商工労働部が設置し、(財)大阪社会運動協会が委託を受けて運営している図書館です。大阪社会運動協会は大阪府の出資団体ではなく、民間の公益法人であり、大阪社会運動資料センターを運営しています。資料センターとプラザは一体の運営を行うことによって、広く皆様に社会・労働関係の専門的な資料を提供しております。

 しかしこのたび、大阪府財政再建プロジェクト試案が発表され、当館は廃止という案が示されました。試案の通りであれば、図書館は本年7月末をもって閉館となります。

 この事態に対して、関西の労働関係研究者から大阪府に対して、コメントが寄せられていますので、その一部をここに掲載いたします。

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 大阪社会運動協会とその資料センターには、大学院生としてかけだしの頃から、有形無形のサポートを賜りました。その細やかな サーヴィスと充実したコレクションによって、これまでのわたしたちの教育研究活動を支えてきてくれています。『大阪社会労働運動史』の執筆にも参加いたしました。研究者として貴重で有意義な経験をさせていただいたと思っています。あのように大部で充実した通史を企画し編纂し発行しえたこと自体が、この財団法人の力量と存在意義を示しています。大阪社会運動協会に蓄積されたハードとソフトは、大阪府民にはもちろん、彼の地の経済・産業・労働・社会に関わりと関心をもつさまざまなひとびとにとってかけがえのない財産であると痛感します。次代にまで継承するためのご理解とご尽力を切望する次第です。

  福島大学経済経営学類 準教授 熊沢 透

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 大阪社会労働運動史執筆のために、1980年代から現在に至るまで大阪社会運動協会所蔵の資料を使っている。同協会には独自の調査データ資料や小さな会議資料(謄写版印刷)に至るまで他の図書館にはないものが多数揃っており、それらがなければ大阪社会労働運動史の執筆は不可能である。大阪の社会労働運動は、戦前から今日に至るまで全国をリードしてきた地域であり、いわば日本の社会労働運動を代表するものである。それらの全貌を明らかにすることは、日本の社会労働の基底を浮き彫りにすることであり、学問的実践的に極めて重要な作業である。現在、韓国、中国をはじめとするアジアの諸国から日本の労働への関心が非常に高まっており、そのなかでも先進地域として名を馳せてきた大阪への注目度は群を抜いている。そうしたニーズに応えるためにも、大阪社会運動協会の所蔵資料をこれまで以上に充実させ、労働面の大阪・アジア間交流の一層の推進を図る核となるべきである。

    大阪市立大学教授 玉井金五

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1)「総評の初期資料(ガリ版刷り)」が揃っており、一次資料を用いる研究には貴重なものである。また、この初期資料は大学などにはなく、社会運動協会を利用するしか方法はない。
2)大阪のみならず、関西地域の建築・建設関係企業の社史が比較的おおく揃っていること。
3)勤務校(龍谷大学)にはない国労関係の資料があることがありがたい。
4)入手困難な戦後思想関係の雑誌(たとえば『知識と労働』など)がある。
5)長時間にわたる一次資料の閲覧・メモ・ノート作りに際して、静謐な環境(資料室隣の部屋)が利用できることは、研究者にとってはありがたい。

 上記のような条件を揃え、優秀なスタッフ陣を抱える資料センターの存続を強く望み、大阪府にはしかるべき予算措置をとられるよう、要望します。
 
            龍谷大学社会学部教授 原田 達

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 大阪社会運動資料センターは、豊富な一次資料を含むここにしかない貴重な資料の蓄積と収集によって、社会労働運動史はもちろん、広く大阪の社会史研究にきわめて有益なアーカイブとなっております。補助金の打ち切りは、資料の散逸を招き、収集の継続を不可能にし、大阪府民の貴重な公共財の喪失を招くこととなります。
 研究の面においても、また学生院生の教育の面においても当センターの存続を強く願っております。

         大阪府立大学  伊田久美子

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 大阪は戦前、戦後にかけて社会・労働運動の一中心地であったが、社運協はその「地の利」も生かして、この分野に関するきわめて貴重な文献資料の保管と収集につとめてきており、その実績は全国の研究者から高い評価を受けている。
 収蔵する資料は、代表的な研究書や統計類はもとより、未公刊のものが多い散逸しがちなパンフレットや冊子、なかなか入手しがたい社会運動の担い手自身による記録・回顧録を含む。このような資料の多くは、もちろん近隣の大学の図書室で閲覧できるものではない。社運協は、いわば大阪府の独自的な文化遺産であり、府が引き続き、その存続・発展をはかるべきことは論をまたない。
                                 
       甲南大学名誉教授 熊沢誠 

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 2000年代前半に行われた松下電器の経営改革を分析する際に、大阪社会運動協会が所蔵する松下電器産業労働組合『経過報告』という資料を使用しました。この資料は半年毎に作られる数百ページの冊子であり、大阪社会運動協会以外では所蔵されていません。いわゆる「中村改革」と呼ばれるこの経営改革は、松下電器始まって以来の大規模で歴史的な改革です。それについては、数多くの本や論文が出版されていますが、大部分はインタビューや公表経営データにもとづくものです。松下電器産業労働組合『経過報告』という資料には、経営側の提案内容、労働組合側の質問内容、交渉経緯などがかなり詳細に記録されており、企業内部から経営改革の実態を明らかにする上で非常に重要な資料です。

 ただし、いくつかの年度の『経過報告』は収集されておらず、大阪社会運動協会のスタッフの方に依頼して、松下電器産業労働組合から借用していただきました。継続して収集を行って、すべての年度について揃えると、資料価値はもっと高まると考えます。

 また、わたし以外にも、わたしの指導する大学院生が修士論文や博士論文を執筆する際に、大阪社会運動協会の所蔵する資料を使用しています。たとえば派遣労働法改正に関する労働組合の対応を研究する大学院生や、大阪繊維産業の衰退過程を研究する大学院生が、関連資料を利用させていただいています。両名とも、大阪社会運動協会の資料はたいへん役立ったと言っております。

 このような貴重な資料を収集・保存・整理・公開する能力をもった資料室の存在価値は高く、集められた資料は府民の貴重な財産です。今後も大阪府が適正な補助を行われることを望みます。

    京都大学大学院経済学研究科 教授 宇仁宏幸

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 大阪はかつて世界に冠たる経済都市であり、文化都市であった。戦前、大阪が経済・社会の発展においてナンバー1であったことを知り、これからまたオンリー・ワンになるための方策を考えるためには、大阪社会運動協会の資料が絶対に必要である。日本にとって大阪が大事だということを知るには社運協の資料室がなくてはならず、決して潰してはならない図書館である。大阪のことを調べるならば中之島図書館があるではないかという意見もあるだろうが、中之島に資料がないからこそ社運協へ行くのである。もしも社運協の資料室がなくなれば、法政大学大原社会問題研究所など、東京の図書館へ行って調べなければならなくなる。そうなれば大阪の人ですら大阪のことを研究しなくなるだろう。大阪をナンバー1にしたければ、社運協の資料室を存続発展させねばならない。長年にわたって蓄積された専門性は他の図書館では代用できない。(談)

   早稲田大学社会科学総合学術院教授 篠田 徹