学習院大学史料館訪問記

 先週、初めて学習院大学に行ってきました。大学院「アーカイブズ機関実習検討会」が開かれたので、エル・ライブラリーも受入機関の一つとして学習院大学にお招きにあずかったのです。
 アーカイブズ学専攻主任の安藤正人先生にお話を伺いましたが、その報告は次回に書きます。

 学習院大学初体験の谷合はわくわくしながらキャンパスに足を踏み入れ……目白の駅から徒歩10秒! 学内ではあちこちで新築・改築工事が行われていて工事車両が行き交い、あまり広くないキャンパスがいっそう狭くなっていたのが残念ですが、キャンパス内に多くの緑が残っているのが気に入りました。
 血洗の池*1など、学内に池や林があり、静かな小道を歩くと都会の喧噪を忘れてしまいます。文化財に指定された古い建物がいくつもあって、散策を楽しめました。

 今回、急遽見学を申し込んだのは「学習院大学史料館」(上の写真)です。ここは、大学の博物館であり、年に1回の特別展を開催されていますが、残念なことにわたしが訪問したときは展示替えの最中で、展示物を見ることができませんでした。そのかわり、生田享子学芸員に1時間にわたって史料館の建物を案内していただき、いろんなお話を伺うことができました。

 史料館の建物自体が1909(明治42)年に竣工した文化財です(2009年5月、登録有形文化財に指定)。展示会は別棟で行われ、この史料館には閲覧室と事務所があります。もともと図書館として建てられたという史料館は天井が高く、閲覧室にふんだんに光が入るように天窓が作られています。先日、その天窓に小動物の足跡と大量の糞が見つかり、ハクビシンが住み着いていることが判明。大騒ぎの駆除作業があったようです。無事、ハクビシンはお引っ越しあそばして、今では血洗の池あたりに棲息しているとか。

 建物内のあちこちに学習院のマークである桜がかたどられ、人目に付かないようなところにも凝った意匠が随所にあります。「あ! こんなところにも」といちいち驚いて感動していた谷合です。

 写真は、ドアの蝶番(ちょうつがい)と換気口。こんなところにもデザインに凝っています。

 さて、史料館のサイトによると、所蔵品は「中世以来続く公家・地下官人、近世から近代にかけての大名・華族や大名家家臣や幕臣、また村の名主家史料、および近代から現代にいたる学習院関係者史料などで、総件数はおよそ13万件を数えます」。

 今回は所蔵品を見ることができなかったのですが、その代わりに史料館のパンフレットに掲載された美しいお宝の数々を拝見して「いつか展示会で」と楽しみに胸をふくらませたのでした。

 生田学芸員からは様々なご苦労話をお聞きして、共鳴共感することしきり。いまや、学芸員も司書も不利な労働条件で働く人が増えました。嘱託・契約社員、派遣、アルバイト、といった非正規雇用が増え、賃金は安く、サービス残業もしばしば。それでも、専門職というのは働きがいがあるため、みんな「好きな仕事だから」と頑張ってしまいます。どんなにしんどい目にあっても明るく頑張るために、「なんだ、楽しそうじゃないか」と苦労を斟酌してもらえないという皮肉な結果も生まれます。

 それでも、「仕事や史料がかわいくて仕方がない」とおっしゃる生田さんの目が清々しく輝いていたことが印象的でした。

 史料館を退出したあとは、文化財に指定されている学内の建物をあれこれと見て回りました。今でも現役の教室として使われていたり、学生のサークル室であったりします。古い建物の中を歩くだけで、古(いにしえ)の若者たちの息づかいに触れるようで、思索にふける静謐なひとときを過ごすことができました。


 生田さんからお聞きした、いまは無き学習院大学の名物建築物が「ピラミッド型教室」(設計:前川國男)です。「けんちく激写資料室」による写真はここ。迫力満点。http://mirutake.fc2web.com/08/164pirakou/pirakou.htm
 このピラミッド教室はTV「ウルトラセブン」第29話でウルトラセブンが尻餅をついて壊してしまったというエピソードで有名になりました。「さようなら、ピラミッド校舎」(学習院のサイトより)http://www.gakushuin.info/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%99%A2%E5%BA%83%E5%A0%B1_%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E6%A0%A1%E8%88%8E.pdf
 この名物教室が見られなかったのは残念でした。

 お忙しい折にもかかわらず、丁寧にご案内くださった生田さんに感謝申し上げます。次回は展示会を楽しみにしています。
 学習院史料館のサイトはこちら。http://www.gakushuin.ac.jp/univ/ua/
 

 さて余談ですが、学習院には史料館(Museum)、図書館(library)、アーカイブズ準備室(Archive)、の3館が独立してあります。いま流行のMLA連携の伝で言うと、この3館がOPACの横断検索やモノの貸借など行ってもいいのでは、と思いますが、現在のところそれは実現していません。図書館にも貴重資料があるということで、本来ならば史料館にあるべき資料が図書館にあったり、アーカイブズにあるほうがいいと思われるものが史料館所蔵であったりするようです。しかしいずれにしても3館にそれぞれ専門職が配されているということは特筆すべきでしょう。今後の連携が期待されます。(谷合)

第2回は「学習院大学アーカイブズ学について安藤正人教授に聞く」http://d.hatena.ne.jp/l-library/20100308

*1:赤穂浪士の一人、堀部安兵衛高田馬場での決闘のあと、刀の血を洗ったという伝説から「血洗の池」と名がついたそうですが、これは旧制高校時代の学生たちがまことしやかに伝えた「都市伝説」とか。今は学生たちの憩いの場です。