学習院大学でアーカイブズ学について安藤正人教授に聞く


 学習院大学訪問記第2弾は、安藤正人教授へのインタビューです。第1回目は「学習院大学史料館訪問記」としてこちらに書きました。http://d.hatena.ne.jp/l-library/20100303
 さて、去年の夏にアーカイブズ学専攻の学習院大学院生平野泉さんをエル・ライブラリーに実習生としてお引き受けしたことはこのブログにも掲載しました。
写真つき! http://d.hatena.ne.jp/l-library/20090730
 今年度は全国11のアーカイブズ(公文書館や資料館)が学習院大学の実習を受け入れたのですが、その検討会・反省会が開かれたのでありました。
 2月24日、検討会に先立ち、学習院大学人文科学研究科大学院の安藤正人先生に突撃インタビューを申し込みました。
 「突撃されるのは苦手」とおっしゃりながら快く受けてくださったインタビューです。 
 アーカイブズ学専攻研究室に案内されて真っ先に目に入ったのが、壁に並ぶ書棚の本。現在日本で手に入るアーカイブズ学の参考書はここでそろいます。わたし自身の勉強のために背表紙の写真をたくさん撮ってきました。

 安藤先生への質問は大きく二つ。全国の大学で初めて開講されたアーカイブズ学専攻大学院について。もう一つは、日本アーカイブズ学会について。まず、アーカイブズ学専攻大学院について質問しました。
Q:学習院大学の大学院アーカイブズ学専攻教室は2年前に開講され、この春、初めて修了生を送り出されることになります。この2年間の手ごたえはいかがですか?
A:とにかくみんな熱いです。私自身が30年間、国文学研究資料館史料館(誤記ではありません。為念)でひたすら研究を続けてきまして、大学教員になったのが初めてのことなので、他大学との比較ができません。自分にとっても初めての経験、学生にとってもそうですから、大変でした。みんなとっても熱い! 熱心な分、それだけこちらもいい意味で大変です。
Q:安藤先生はアーカイブズ学講座の開講時にこのようにご挨拶なさっていますね。「学問は楽しくなければなりません。さいわい、アーカイブズ学ほど楽しい学問はありません。楽しくなくなったら私はやめるつもりです」と。やめておられないので、きっと楽しかったのだろうと拝察します(笑)。さて、学科は学部ではなく大学院で開設されました。これはなぜでしょう。
A:欧米のレベルに合わせました。欧米では司書もアーキビストも修士以上の資格職です。やはりそのぐらいのレベルはほしい、と。学部でアーカイブズ学を学ぶと、学問が狭くなりますね。院だと幅が広がってきます。
Q:院生さんたちの出身学部は?
A:理系も文系も幅広くいます。意外なことに、歴史学出身者が少ないのです。農学部出身者もいますよ。
Q:院生数は?
A:まだ定員に達していません。定員は修士2学年で30人ほどですが、実際には20人しかいません。
Q:まだまだ知られていないということでしょうね。アーキビストは資格制度が整っていませんし、就職率はいかがですか?
A:まだわかりません。就職についてはこれから、というところで、誰も決まっていません。そもそも社会人も多いし、定年退職者もいますので、これから就職する院生が少ないです。
Q:アーキビストを国家資格にしようという動きはあるのでしょうか?
A:国家資格という考え方は現在では一般的ではありません。民間の認定機関を作る傾向にあります。
Q:次に日本アーカイブズ学会についてお尋ねします。アーカイブズ学会は2004年に設立されました。アーカイブズ学という新しい学問についての学会、と認識しています。わたしが社会人の司書講習を受けた20年前には、アーカイブズ学なんてなかったので、新鮮な感動があります。
A:アーカイブズ学はそれほど新しい学問ではないのですよ。30年前からありますしね。学会は新しいのですが。
Q:「記録管理学会」という類縁の学会がありますが、簡単に言えば、二つの学問はどこが違うのでしょう。
A:記録管理学が対象とするのは「現用記録」で、アーカイブズ学は「非現用記録」です。記録管理学会の発起人の中心は企業人でした。アーカイブズ学会は学者中心です。
Q:なぜアーカイブズ学会設立の必要があったのでしょう。
A:アーキビストの資格を作る必要とアーキビスト養成の必要があるからです。
Q:なるほど。ということは、資格を作るためにいろいろ動いておられるわけですね。ロビー活動もされているのでしょうか。
A:昨年、公文書管理法ができましたが、施行は来年4月です。そこに向けて関係省庁がいろんな細則や施行規則を作っているところで、学会もさまざまに提言しています。
Q:ところで、学会の英語略称のJSASは「ジェイサス」と読んでいいのでしょうか。
A:はい、それで結構です。
Q:わたしもこれからアーカイブズ学について学ぼうと思っています。エル・ライブラリーの英語名は”Osaka Labor Archive”ですが、Archive は複数形にすべきなんでしょうか。
A:それは諸説ありまして、常に複数形でなければならないと言う人もいます。一番最近の説では、Archiveを機関や組織を表す語、Archives を抽象度の高い、漠然とした社会的遺産を指す語、とする解釈があります。とはいえ、Archivesと名乗っている公文書館もありますし、これはまあ、どちらでもいい、ということですね。わたしはいつもArchivesを使いますが。日本語にしてしまうと、「アーカイブズ」なのか「アーカイブス」なのかと発音を迷う人もいて、ややこしいです。
Q:じゃあ、エル・ライブラリーはとりあえず”Osaka Labor Archive”でかまわない、と。
A:そうですね。
Q:わたしもこの4月から学会に入会申込みする予定です。4月の大会はぜひ参加させていただきます。
A:そうですか、楽しみですね。平野泉さんが修士論文の報告をしますよ。


 安藤先生とツーショット!
  
 ところで、アーカイブズ学ってなに?とおっしゃる御仁はこちらのサイトをお読みください。


 実習検討会の後、学習院アーカイブ準備室の見学会も催されました。ここは法人としての学習院全体のアーカイブ(文書館)です。まだ「準備室」なので、本格デビューは来年度以降ということです。