著者の皆様から頂戴した本を紹介します。著者寄贈本は何冊もあるのですが、なかなかここで取り上げてご紹介することができないので申し訳ありません。せめてタイトルや短い紹介ぐらいは、と思い、ぼちぼちアップしていきます。
この本はエル・ライブラリー開館直前にいただいたのですが、引っ越しのドタバタによって滞貨となっていたものです。ご紹介が遅くなって申し訳ありません。とってもわかりやすく消費者問題や企業経営について書かれた本です。
- 生き延びる消費者・生き延びる経営 柴山宮惠子, 加藤里美, 渡辺伊津子著. 成文堂, 2008
第1部 経済発展のもたらした消費者問題と地球環境問題
第2部 企業の社会的責任とジェンダー・ダイバーシティ―女性活用・登用促進は重要な経営課題
第3部 アグリビジネス企業の成長と変革―企業の不祥事はなぜ生じるのか
そして、倫理学の本を3冊、著者のお一人である品川哲彦氏よりいただきました。新刊書ではありませんが、大学の教科書に使えるようなわかりやすい内容で、脳死問題など、現下の生命倫理について考える基本視座を与えてくれます。特に、『生命倫理学を学ぶ人のために』と『倫理学を学ぶ人のために』は初学者にぴったりの入門書です。格差や貧困が大きな社会問題となる今、格差がなぜいけないのか、を考えるためのヒントが『倫理学を学ぶ人のために』に書かれています。
これらの本を読むと、倫理とは、<他者>の問題である、ということがよくわかります。人は一人で生きていれば倫理など必要ありません。自分一人の時にいくら水を飲んでもかまわないけれど、砂漠で複数人が死にかけているときの1杯の水を自分が独り占めして飲んでしまうと、非難されるでしょう。これは、同じ「1杯の水」をめぐって、他者との関係がそこに立ち現れてくるか否かの違いなのです。倫理が問われる場面には、必ず<他者>が存在します。言い換えれば、倫理学とは、他者をどのようにとらえるのか、他者との関係を見つめる学問とも言えます。
そしてまた、生命倫理学では、臓器移植や脳死問題の正否をめぐっての論議をつきつめれば、「人間とは何か」という根源的な問いに行き着きます。
生命倫理といえば、この鋭い問いかけに一石を投じる映画が去年、上映されました。「私の中のあなた」です。映画、原作ともお奨めの素晴らしい作品です。
閑話休題。エル・ライブラリーは社会・労働・経営関係の専門図書館ですから、倫理学は収集範囲外かと思われがちです。しかし、社会倫理学はあらゆる社会事象を考える基礎となる学問ですから、当館でもありがたく頂戴いたしました。ぜひご利用ください。
- 生命倫理学を学ぶ人のために 加藤尚武, 加茂直樹編 世界思想社 1998.1
- 倫理学を学ぶ人のために 宇都宮芳明, 熊野純彦編 世界思想社 1994.9
- 生命倫理の現在 塚崎智, 加茂直樹編 世界思想社 1989.6
次に、労働経済学の大家・熊沢誠氏の最新刊ですが、こちらは400ページ近い大部なものです。若者の過労死・過労自殺が大きな問題として紙面を賑わす「事件」となっている昨今、「カローシ」という世界語まで生んでいる日本の働きすぎの実態に迫る著書です。徹底した事例報告のうえに、著者は労働者の受難の歴史をあぶり出そうとしています。わたしもまだ半分しか読んでいないので、詳しい紹介はまた後日に稿を改めて。
- 働きすぎに斃れて : 過労死・過労自殺の語る労働史 熊沢誠著. 岩波書店, 2010
死にいたるまで働く人びと,それはまるであなた自身の姿ではないか──.ふつうの労働者が「しがらみ」に絡めとられながら限界まで働くことによって支えられてきた日本社会.そのいびつな構造が生み出した50件以上もの過労死・過労自殺の事例を凝視し,日本の労働史を描き出す.変革のための鎮魂の物語.(岩波書店のWebサイトより)
最後にもう1冊。これは出版されて間もない、最新刊です。これまた478ページという大著で、読み応えたっぷり。
当館所蔵資料の写真を何点か掲載していただきました。表紙のカバー写真(裏側)もエル・ライブラリー所蔵写真です。
- 戦間期日本の社会思想 福家崇洋著.人文書院
大正デモクラシーから総力戦体制へ
日本版反ファッショ統一戦線の可能性をさぐる大正デモクラシー下の普通選挙運動がファシズム的要素と結びつく可能性を明らかにするとともに、これまでファシズムと同一視されてきた日本の国家社会主義運動の軌跡の中に、個人が国家に埋没しない、近代国家をこえる新たな共同性への契機を掘り起こす。(人文書院のWebサイトより)