ともに考えてください「映像フィルム保存」


先月参加した「第5回映画の復元と保存に関するワークショップ」についての記事が9月17日の朝日新聞夕刊に掲載されました。同じくワークショップに参加されていた朝日新聞の長谷川千尋記者によるレポートです。私の発言についても取り上げていただきました。


このワークショップはフィルムで撮影した映像の保存について学び考えるためのもので、京都文化博物館で二日間の講義、大阪のフィルム専門の会社IMAGICAウェストでフィルム修復の実技というカリキュラム。

第5回映画の復元と保存に関するワークショップ

なぜ私がこのワークショップに参加したかと申しますと、当館もそれほど大量ではありませんが16ミリフィルムなどを所蔵しており、その保存について頭を悩ませているからなのでした。

なんといってもまず中身の確認が難しい。なにぶんにも映写機がありませんし、映写機があったとしても劣化が進んでいるフィルムを映写機にかけると破損の危険があります。しかし、内容がわからなければ保存に値するフィルムかどうかわからない。修復・保存の前の「確認」作業がまず困難なのです。

当館が所蔵しているフィルムは労働者教育、技術講習用のもので芸術性という観点からは評価されないかもしれませんが、労働者教育の変遷、産業技術の変化などをそこに読み取るための資料としては十分に貴重なものかと思います。そして、映像媒体が変化する過程で大量に生産されたフィルムも廃棄されてしまっていますから、当館の所蔵するフィルムが現存する唯一のものである可能性もあります。

劇映画については東京フィルムセンターをはじめ、京都文化博物館などいくつかの拠点で収集・保存がなされていますが、それでもまだまだ十分でない状況を京都文化博物館主任学芸員の森脇清隆さんがワークショップで紹介されていました。ましてや、当館が所蔵しているような教育映画・産業映画のような劇映画以外のフィルムの保存活動は遅れているといってよいのではないかと思います。

フィルムは扱いが難しいですし、専門知識も機器もない当館では正直手に余るのですが、フィルムの劣化は時間との戦い(注:保存条件さえ整えば他の媒体よりフィルムは安定性が高い)ですので、なんとかしなければという気持ちは強くあります。しかし、当館だけで解決できるものでもないとも思っています。映像分野の方をはじめ、様々な分野の方々・団体との連携の必要を痛切に感じています。

情報の共有・機器の共有をしていくことができれば、おそらく多くの施設(図書館・資料館・文書館・文学館・美術館等や企業など)に眠っているであろうフィルムのアーカイブにむけて現実的な一歩を踏み出せるのではないかと思っています。

というような私の発言にワークショップに参加された方々からいろいろとアドバイスをいただきました。なかでもワークショップを企画されている大阪芸術大学の太田米男教授からは後日、フィルムを映写機にかけなくても確認できる機器について具体的なご連絡をいただきました。残念ながら、大型のテーブルほどの大きさがあるというその機器を収容できるスペースが当館にないのですが、当館だけでなく、他の施設の方々ともそれを共有することができないかと太田先生とお話をしました。

映像フィルムの保存・アーカイブについてみなさまからご提案や情報などいただき、ともに考えていくことができればと思っています。

【参考サイト】
★こんな記事を見つけました!
京阪電車開業100周年記念オフィシャルブログ。(ちなみに当館の最寄り駅も天満橋です)。

★フィルムの収集・保存

★市民によるフィルム保存運動

  • 「映画保存協会」

日本で具体的な草の根的な映画保存活動をしている団体です。家庭に眠るフィルムの発掘・保存にむけてさまざまな取り組みをされており、フィルム調査や機器の貸し出しなど非常に具体的な活動もされています。

★産業・技術系の映像アーカイブ

★地域映像アーカイブ(まだまだあると思います。でも動画はまだ少ない?)


ワークショップでは講義ばかりではなく映画の上映もありまして、映画フィルムとして初の重要文化財に指定された1899年撮影の記録映画「紅葉狩」のほか、映画保存活動にとりくんでおられる中島貞夫監督の「893愚連隊」など数本を上映。京都中でオールロケして制作されたこの作品は、中島監督自ら、当時は全くその意識はなかったが期せずして昔の京都の町の情景の保存映像になったとおっしゃるとおり、鴨川沿いを走る京阪電車など京都生まれの私にはなんとも懐かしい光景がたくさんありました。

中島貞夫監督が総合プロデューサーとして係わってこられたのが「京都映画祭」。映画保存との関わりが深い映画祭です。今年で7回目。

京都映画祭共催「松竹下加茂撮影所火災より60年 今、蘇る映画」

活弁、楽隊付きもあり。

(千本)