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『たくさんの ありがとう 志方順子さん追悼集』

次代を紡ぐ伝記資料紹介

(発行;自治労大阪府本部/編集;志方順子さん追悼集編集委員会/私家版/2002年)
 自治労大阪市職婦人部長を経て、自治労大阪府本部初代女性副執行委員長を務め、在任中に逝去した志方順子の追悼集(A判80頁)。(追悼集会の栞もエル・ライブラリーに保存)
 1944年4月大阪府布施市(現東大阪市)に出生、2001年9月57歳で逝去。
1960年安保闘争の真っ只中に大阪市都島区役所)に就職し、夜間高校(府立大手前高校)卒業後、1970年から清掃局支部婦人部長をスタートに、1974年大阪市職婦人部長に対決選挙で選ばれて以来18年間、大阪市関連職場も含めて、女性が働き続けられる条件づくりと、差別撤廃に邁進した。のちに自治労大阪府本部婦人部長となり、自治労本部の女性部常任委員も歴任して、全国の自治労運動への女性参画を切り拓く役割を担った。グラビア冒頭写真(1991年自治労第59回定期大会で女性初の議長団)は、それを象徴。
 18年間の大阪市職時代は、女性の採用拡大、昇任・昇格の差別撤廃、育児時間と期間の延長、育児休業、男女適用の看護欠勤、扶養認定基準の性差別撤廃など、全国のトップ水準の条件づくりに取り組み、その活動ぶりの一端を、ずっと大阪市職婦人部書記長としてコンビを組んできた永田和子が記述している。
 中でも興味深いのは「A・B項採用要綱」撤廃運動。高卒女子採用において、「A項=行政指導、管理監督、渉外、徴収等の事務や宿直を行うこともある勤務など主として男子をあてるにふさわしい事務、B項=主として女子をあてるにふさわしい事務」という採用規程が1970年代半ばまでまかり通っていて、高卒女性の採用は毎年5%で20名程度という事態だった。彼女はその撤廃を“初仕事”として取組んだ。婦人部に交渉権がないので、当局に要請する前に、男性執行部を含めて職場を説得する理論武装と意識付けが必要だった。2年間かけて各支部段階で所属長交渉を重ねて、現場で受け入れる土壌づくりをした。その過程は、女性たち自身の仕事に対する意識改革であり、「25年前にジェンダー・チェックに挑んだ」という彼女の原稿が後半に収録されていて、当時の意識状況がリアルに伝わる。75年6月に撤廃を実現。国際婦人年の鐘がはるか遠くで聞こえている時期であった。
 彼女の本領は、自治労という産別内だけでなく、大阪総評婦人協が核となった広範な女性運動・市民運動との共闘の中でフルに発揮された。労働戦線再編による総評解散を前にした最後の2年間、「誰もせんのやったら、ウチが幕引きしよう、大阪の共闘の灯を消されへん、連合に引き継ぐのがウチの役や」と、大阪総評婦人協議長に就任し、継承するべき運動方向を明確にした。大阪総評オルグとしていつも横に居た筆者が「いっつも、大阪の女性運動の要にいた志方さん」と題して、その過程を書いている。80年代の労基法改悪反対・男女雇用平等法制定運動の全国的高揚を、大阪総評女性運動も牽引役を果たしという“自負”は、このような現場からの支えと多くの活動家集団が形成されていたゆえである。
 広範な団体との共同行動にいつも志方を先頭とする大阪市職婦人部の旗があった。中でも、「部落解放共闘婦人連絡会議」は、紀伊国屋書店の“チビ・ブス・カッペ”採用差別文書糾弾行動からスタートしたが、その先頭でたたかった志方は、初代事務局長を務めた。    
 また、塩沢美代子が1983年創設した「アジア女子労働者交流センター」には、結成時から大阪市職婦人部が単独加盟し、アジアの連帯をいち早く行動化した。追悼集に寄せられた塩沢の追悼文「強烈な存在感を残して」には、「唯一の団体加盟として長年活動資金を提供して下さった。アジアの女性活動家にも志方さんの情熱が伝わり、生き続けることと思います」と。
 「市職の枠内だけの運動では人は育たない、共闘の中でこそ大きくなるんや」といつも話していた志方とその運動の中から、多くのリーダーが生まれたことは、追悼集編集の陣頭指揮をとった蜂谷紀代美・自治労府本部副委員長(後に委員長)も、冒頭の弔辞起草者の大倉英子・大阪市職書記長も、志方と共に旗を振った仲間であることに示されている。
 後半43頁分の「クリッピングジャーナル通信」は、彼女が毎月親しい人たち150人に送り続けていた随筆の抜粋。子育てや庭に咲く花便り、全国を動き回る先々の印象記、ニュースに対する鋭い切り込み等、彼女の息づかいが伝わり、“順ちゃんフアン”に愛読された。
 2人の愛娘が社会人として巣立つのを見る直前に、57歳で駆け抜けた人生だったが、娘たちにも、多くの仲間にもその志は受け継がれていると言えよう。(伍賀偕子)

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