エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

新生・大阪府国際児童文学館に行ってきました

2009年12月28日の記事に書いたように(http://d.hatena.ne.jp/l-library/20091228/1261966987)、 大阪府立国際児童文学館は2009年度で廃止され、今年度より、大阪府立中央図書館に統合されました。

 文学館の運営は従来、財団法人大阪府国際児童文学館が指定管理者として担ってきましたが、吹田市万博公園内にあった「館」は廃止され、資料は大阪府立中央図書館に移管されました。
 2010年5月に大阪府立中央図書館の一室としてオープンした国際児童文学館大阪府の直営となっています。財団法人大阪府国際児童文学館の元専門員が府立図書館の職員として採用され、府立図書館の職員とともに運営に当たっていますが、財団からの職員は3年の期限付きです。
 府立中央図書館は東大阪市にあります。大阪市内からは電車賃が高くつくため、ちょっと行きづらいところにあるのですが、東大阪市役所と公園に隣接する広い敷地と建物は壮観です。
 その1階エントランスの右手に児童文学館への入り口があります。図書館へのゲートと違う場所にあるため、少しわかりにくいのが難点です。外から直接入ることができる専用入り口もあります。図書館の一階フロアには「こども資料室」があって、従来通り、子ども向けのスペースとして確保されています。ここがあるのになぜ児童文学館スペースが別にあるのか? ちょっと不思議な気がするかもしれません。府立図書館の子ども資料室は子どもたちだけで利用することもできますし、貸出をしている普通の児童書コーナーと考えてください。一方、国際児童文学館は調査・研究を主たる目的とするスペースですから、子どもだけでは入室できません。児童書だけではなく、児童文学研究書などの専門書や、同人誌などのミニコミ等も閲覧に供しています。博物的価値の高い古い資料の展示も行っています。写真は開催中の「遙かなる宇宙‐子どもの本が描く夢と冒険」展です。竹宮恵子『地球(テラ)へ…』を懐かしく眺めてきました。

 展示コーナーが奥まったところにしかとれなくて、あまり目立たないのが残念です。吹田市に館があったときに比べて相当狭いスペースに押し込められてしまったな、という感は免れませんが、それでもその狭い場所を工夫して展示に使用されていました。

 児童文学館の資料は大部分が地下の書庫に保管されています。以前と違って閲覧室と書庫の距離が遠いため、出納に時間がかかって大変だそうです。その書庫も見せていただき、吹田にあったときと同じような配列で資料が並んでいるのを見てほっとする一方、今までは貴重書庫に入っていた資料が一般図書と同じ書庫スペースに収まっているのが気になりますが、職員の方達の努力で資料はきちんと保存・利用されていました。
 なお、国際児童文学館の蔵書と大阪府図書館の蔵書検索とはシステムが違うため、両館を同時に検索しようとすれば、「大阪府Web-OPAC横断検索」http://copac.library.pref.osaka.jp/cgi-bin/book.cgiを使うのが便利です。
 ところで、そもそもなぜ国際児童文学館は廃止され、大阪府立中央図書館に統合されたのでしょうか。橋下知事は「来館者が少ない」「子ども達に利用してほしい」という理由を挙げていましたが、児童文学館がもつ研究機関としての機能にはいっさい触れることなく、文化行政への展望もなく「初めに廃止ありき」でことが進んだとしか思えません。何度も言いますが、国際児童文学館は普通の図書館ではなく、世界に誇るべき大阪の児童文学専門機関なのです。ここでの研究や経験が大阪府内をはじめとする全国の図書館に波及して、その結果、多くの子どもたちが優れた児童書を手にとって読書にいそしむことができるようになるわけです。ですから、府立図書館に統合させたところで、「子どもたちが文学館の本を手にとって読む」ということにはなりません。
 ましてや、解体には数億円かかるといわれる吹田市の文学館跡地の利用も決まっておらず(大阪府公文書館の書庫を移転させる案もあり)、知事の行き当たりばったりの政策がここでも露呈しています。
 「館」を失った財団法人大阪府国際児童文学館への大阪府からの委託金はなくなり、研究員を始めとする職員の大部分が失業・転職を余儀なくされ、いまだに新しい職が見つからない人もおられるそうです。研究員として残った職員のかたは不安定な雇用ではあれ、全力を尽くして児童文学の振興のために財団独自の事業を続けています(詳しくは財団法人のwebサイトを。http://www.iiclo.or.jp/)。
 地方自治体は財政難ですから、冗漫経営は廃さなければなりませんし、経費の削減は当然のことですが、蓄積されてきた研究成果や経験、資料収集のルートといった専門性・人財はお金のないときほど守るべきではないでしょうか。官の力だけで無理ならば、民間の寄付も募って文化は守っていくべきものと考えます。財団法人大阪府国際児童文学館の懸命の努力は今度も官民の力によって支えていかねば、と思います。

 さて、最後に。月に一度配信される財団法人大阪府国際児童文学館メールマガジンはお薦めです(http://www.iiclo.or.jp/m1_magazine/index.html)。わたしも愛読者です。愛読者プレゼントに当選して『マルカの長い旅』を頂戴しました。もらったら安心してまだ読んでいません(汗)。あ、プレゼントをもらったから児童文学館を応援しているわけではありませんよ〜。(谷合)