宮城・福島の旅(1)


 遅い夏休みをいただいた谷合が、5月に続いて2回目の東北旅行に出かけてきました。前回とは逆に仙台→福島という順に回りました。正確には、東北大学東北学院大学中央図書館→東北大学電気通信研究所図書室→長町病院(以上、仙台)→南相馬市立中央図書館(福島県南相馬市)→福島県図書館(福島市)の順に訪問しました。第1回ではどこまで書けるでしょうか。
 さて、9月11日(日)の19:30に大阪は難波を発車した夜行バスが仙台に到着したのは月曜の8:30頃。14時間近くもバスに乗っているとさすがに疲れましたが、そのまま東北大学川内南キャンパスへ。バス停を間違えて終点まで行ってしまったり、キャンパス内で迷子になったりと相変わらずの方向音痴ぶりを発揮しながらも無事、宮城資料ネット(NP0法人宮城歴史資料保全ネットワーク)事務局のある、東北大学平川研究室に到着。既に研究室内ではスタッフ(ボランティア?)の方達が作業中でした(写真上)。


 エレベーターホールにも机と椅子を持ち出して作業場と化しておりました。そこでは東北大学の学生や、全国から集まった大学関係者他のボランティアさんたちが熱心に水損資料の修復作業を行っていました。室内はともかく、エレベーターホールは冷房が効いていないため、大変な暑さの中、特に午後からは頭がぼーっとなるくらいに暑くなってきます(写真上から2番目)。


 3.11の津波によって泥まみれになった古文書や近現代文書を水洗いして乾かしていく作業は、気の遠くなるような地味な仕事です。津波の被害に遭った旧家の蔵から救出された資料の数々を一点ずつ丁寧に洗っていきます。網戸の網を切り取ったものに資料を挟み、発泡スチロールの板の上に載せて水道水に浸し、刷毛で塩水と泥を払い取ります。わたしが洗った史料は、幕末から明治時代初期にかけての算数の教科書のようでした。利息計算の式がびっしり書き込まれていました。他には、昭和初期から戦後にかけての青年団の資料があり、土地の売買の記録や会費納入の領収書の束が出てくると、当時の物価がわかるのでとても興味深かったです。
 
 いったいなんの書物なのかわからないけれど、馬が大の字になって腑分けされているような絵が描かれたものがあり、住居の間取りのような線が描かれていて、これは何だろう、風水? と首を捻ったのもあります。


泥水を洗った後は吸水性のよいタオルで水分を拭き取り、薄様と不織布に挟んでさらに段ボール箱に挟んで暫く置いた後、扇風機で乾かします。

乾いたあとは、パリパリになって重なり合った紙を剥がしていく作業。ヘラを使って丁寧に剥がしていきます。

 水濡れによってインクなどが染み出すような資料や厚いノートは上記の方法で水洗いできませんので、エタノールで消毒します。スプレーを紙面全体にかけることができるなら手っ取り早くそうしますが、やはりエタノール液でにじみが出るようなら、紙に消毒液を含ませて丁寧に叩いていきます。これがものすごい手間。バス旅行の疲れと暑さにばてて、午後からの作業はあまりの単調さに何度も意識不明になりそうでしたが、この地道な作業を半年も続けてこられた宮城資料ネットの皆様のボランティア精神に恥じないよう、わたしもガンバらねば! との思いでなんとか午後4時すぎまでは作業を続けました。水損資料の修復は、エル・ライブラリーのスタッフにとっても資料修復の実習としての意味を持ちます。あってはならないことですが、当館の資料が水損する可能性が無いわけではありません。そのとき資料を救出修復する方法を知っていれば慌てず騒がず次の行動に移れます。


 震災にあってまず救助せねばならないのは人命です。そして、生活の復旧が何よりも大事なことは言を俟ちません。しかし忘れてならないのは、その他の多くの記録資料や想い出の品を救出することではないでしょうか。わたしたちの生活は寝て食べてだけで済むのではなく、文化に接したり想い出を紡ぎ出すことによって豊かになります。宮城資料ネットの作業は、団体の記録、個人の記録を区別なく救出し、地域の歴史と記憶を保存することを目的としています。詳しくはこちら→ttp://www.miyagi-shiryounet.org/

 宮城資料ネットの作業を少し早めに切り上げて次に向かった先は東北大学の近くにある(といってもタクシーで1000円強)東北学院大学中央図書館です。5月のボランティア作業の折には東北学院大学泉キャンパスの庄子さんにお世話になりました。そのときの様子は既にブログに書きましたが、庄子さんがちょうどこの9月12日に中央キャンパスに異動になったので、ご挨拶を兼ねて見学に。異動一日目の忙しい庄子さんに案内していただいて、中央図書館を見せていただきました。ここも震災でほとんどの蔵書が落下してしまい、saveMLAK に正式なボランティア要請が届いたところです。

 図書館の入り口にショーケースがあり、その中に展示してある本をみてびっくり。『大正デモクラシー東北学院 ―杉山元治郎と鈴木義男』。農民運動家・衆議院副議長だった杉山元治郎(1885-1964)は大阪出身であり、わたしは大阪での活動しか知らなかったのですが、東北学院大学の関係者でもあったのでした。早速同書を寄贈していただけないかとおねだりして、1冊いただいてきました。ありがとうございました! 重い本でしたが、重さに相応しい内容の濃いものです。貴重な資料をいただけて、本当にありがたいです。
 そして次に向かったのは、庄子さんの案内で東北大学電気通信研究所図書室。http://www.riec.tohoku.ac.jp/
 ここには、やはり5月の仙台行でお世話になった吉植さんがおられます。スタッフの案内で図書室を見学させてもらいましたが、さすがに理系の図書室なので洋書・洋雑誌が目立ちます。ここも震災でかなりの数の本が落下したり書架が動いてずれてしまったとのこと。書架のずれというのはすさまじい力が加わったのですが、それを後から人力で直すことはできません。こぢんまりとした図書室なのでエル・ライブラリーの書庫を思い出させる部分もあってなぜか懐かしかったです。エル・ライブラリーと違うところはここが24時間開館していること。理系の学生さんたちは夜中も実験したり研究しているので、24時間開館していなければなりません。

 1日に3箇所を回って少し疲れましたが、そこは疲れを知らぬ仙台のライブラリアンたち。夜の部は繁華街に会場を移して果てしなく続くのでありました。偶然仙台に出張中だったARG社(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)の岡本真さんたちご一行と合流して懇親したのも楽しい思い出です。被災地の図書館員達は疲れておられるので、息抜きが必要と痛感した一夜でありました。

 ※今回のボランティア旅行に対しても、友人達が旅費をカンパしてくれました。MYKさん、IZKさん、Otさん、ITさんありがとうございました!! (以下、第2回に続く)

ちなみに5月の旅日記はこちら。

  1. http://d.hatena.ne.jp/l-library/20110524/
  2. http://d.hatena.ne.jp/l-library/20110601/
  3. http://d.hatena.ne.jp/l-library/20110604/
  4. http://d.hatena.ne.jp/l-library/20110610