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『遙かな友にー馬谷憲親とその時代』

 本書は、自治労府職総務支部の役員であり、NGOの国際交流運動のリーダーであった馬谷憲親(1947〜2011)の急逝にともない、「偲ぶ会」を呼びかけた自治労府職総務支部の仲間たちを中心に編集された。この書と共に、『大阪社会労働運動史』(財団法人大阪社会運動協会)第7・8・9巻からの馬谷論文抜刷集として『馬谷憲親著述集』も合わせて発行されている。
 馬谷は、1947年7月7日広島に生まれ、広島大学付属高校を経て、1973年京都大学法学部を卒業し、その年に大阪府庁に就職。消防防災課や大気課、保安対策課の業務に就きながら、79年から労働組合活動に府職総務支部役員として取組み、89年の連合結成後の自治労府職総務支部副支部長や92年には同支部書記長等に就いて、労働組合活動を推進。2006年定年前2年を残して、定年後の再任用後は労働相談に従事したいと希望して、大阪府総合労働事務所に異動し、2011年再任用も終了して、自由な身になった直後の急逝となった。
 平和・人権・国際連帯を労働運動として推進する姿勢は、自治体政策として実現させていく実績や研究を重ね、全国の「自治研」活動においても注目すべき役割を果たした。
 さらに、その姿勢は、自国の加害責任を問いながら、アジア労働者・民衆との連帯共同行動 ― NAW(アジア労働者情報交流センター)、APWSL(アジア太平洋労働者連帯会議日本委員会)、RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)、ODA改革ネットワーク等 ― に発展し、貫かれた。
 本書は、それらの運動課題毎に、彼が提起・報告・寄稿した文章を採録し、共に関った人々の背景説明やエピソード・思い出が綴られ、貴重な歴史を紡いでいる。彼の卓越した識見による問題提起や視点は鋭く、共にたたかった人々と培った豊かな繋がりは、大いに学ばされる。いくつか挙げてみると、―「なぜ若者は労組ではなくNGOにいくのか」「自治体職員と自衛隊員は『現場』でどう出会うことになるか」「ODA50周年に何を伝えるか」「スリーマイル島原発事故は人類への警鐘」「公務員採用の国籍条項撤廃を」「北朝鮮人道支援を巡って」「ODAと情報公開の多言語化」「志は高く、行動は早く、けど言葉が固くて」「外登法の抜本改正を求める運動」― 等々である。
 また、別刷りの『馬谷憲親著述集』所収の、情報公開条例制定運動はじめ、1970年代後半から1990年代の在日・滞日外国人をめぐる人権運動、NGOの国際交流・連帯活動の記述は、地道に共同行動を重ねてきた実践から生まれた、どこにも見られない関西が誇る運動史である。
 表紙のさわやかなカバー絵は、馬谷本人の作であり、局面ごとの興味深い写真の挿入や年表など、編集委員の、馬谷への深い敬愛の想いが伝わる書である。(伍賀偕子)

<書誌情報>詳細はタイトルをクリックしてください。
遙かな友に : 馬谷憲親とその時代  馬谷憲親さん追悼・遺稿集編集委員会編集発行(私家版)