韓国図書館見学ツアー

 今頃ですが…。9月5日〜8日に出かけたツアーの報告を。
 この研修旅行は田窪直規団長(近畿大学)、稲葉洋子副団長(帝塚山大学)のお世話により、INFOSTA(情報科学技術協会)有志の企画として実施されたものです。なかなか個人では外国の図書館を見学することは不可能なのですが、今回は韓国の崔錫斗(チェ・ソクトゥ)先生の通訳・ご案内により、昼間の見学も夜の食事も有意義で中身の濃いものとなりました。
 今回の見学先は、以下の通り。


 まずは延世(ヨンセ)大学中央校図書館へ。ここはソウル大学に次ぐ超難関校(私学)です。大企業の三星サムスン)との提携・寄付によって最先端の図書サムスンライブラリーが2008年に建てられました。上の写真は広々としたエントランス。この図書館は電子化が進んでおり、ハード・ソフト面で最新の電子図書館と呼べるでしょう。

 日本の新聞も電子版で読めます。館内のあちこちに巨大モニターが設置されていて、利用者は立ったままその画面に触れて電子媒体で新聞・雑誌・図書を読むことができます。もちろんPC席がたくさん用意してあるので、座って落ち着いて読むこともできます。上は「毎日新聞」の画面で、一部を拡大して読むこともできます。

 広々とした館内には学生の自習用ブースがたくさん用意してあります。学生たちが少人数でディスカッションできるような個室が大小いくつもあり、プレゼンの練習もできるように大きなモニターが用意されていました。また、館内には緑のコーナーがあり、写真のように小さな花壇もしつらえてあります。(延世大学中央校図書館)

 閲覧席の様子。(延世大学中央校図書館)

 2日目に訪れた三星経済研究所図書館です。韓国の企業内図書館を見学できるチャンスはほぼありませんから、これは貴重な経験となりました。三星経済研究所はサムスン財閥系列のシンクタンクです。大きなビルの入り口はセキュリティが厳しく、廊下のあちこちのゲートでセキュリティカードを通さねば中に入ることができません。その研究所の図書館は、本を読む場所としてだけではなく、ゆったりとくつろげる場所としても提供されています。

 これが図書館内に設置されているバーカウンターです。セルフでソフトドリンクやお菓子を飲食するようになっています。(三星経済研究所図書館)

 二日目の午後に訪問したのが国立中央図書館デジタル図書館です。小高い丘の上にある通用口(?)から入りました。小さな入り口を通り抜けると、図書館本体は地下にあります。外に見えている建物は小さいのに、地下には膨大な閲覧スペースと書庫があるのです。

 ここは電子図書館なので、紙の本を置いていません。閲覧席では映画ソフトを鑑賞している人が多くいました。(国立中央図書館デジタル図書館)

 この写真を見ると、1席に3つのモニターが用意されていることがおわかりでしょうか。一人で三つのモニターを一度に利用するなんて、贅沢ですね。(国立中央図書館デジタル図書館)

 国立中央図書館デジタル図書館のエントランス。地下に閲覧室があると思い込んでいましたが、実はエントランスはちゃんと1階の地面に面していたのでした。そう、ここは丘陵地帯に建っており斜面を利用した構造なので、地下かと思ったら1階だったりするという、よくある「何階かわからない」作りの建物であります。エントランスのオブジェが楽しいです。携帯電話を大量に並べたようなモニターに次々に映像が映し出されていきます。携帯電話っぽいモニターは小さすぎてこの写真ではちょっと見えづらいです。

 国立中央図書館デジタル図書館の集密書庫。ここには映像ソフトが収蔵されています。

 見学会3日目は公共図書館に行くはずだったのですが、なんと、公益財団法人への移行申請の最終チェックの仕事が韓国まで追いかけてきて、見学会への参加は断念し、ホテルで仕事をすることに。今時は官庁への申請もネットで行うので、どこにいても仕事ができる便利な時代となりました。あるいは、どこにいても仕事が追いかけてくるとんでもない時代になったとも言えるわけで。それにしてもホテルのPCはバージョンが古い上にハングル表記なので操作に苦労しました。
 この写真は、見学会とは直接関係ありません。ホテルのすぐ近くに現代建設の本社があり、その前に連日座り込んでいる人たちがいたので、てっきり労働争議だと思っていました。見学会をキャンセルしたこの日はお昼過ぎにホテルでの仕事も終わったので、街をぶらつくことに。ついでに現代建設前の人々にインタビューしたところ、これは労働組合のストや座り込みではなく、消費者運動であることが判明しました。そういえば、座り込んで気勢を上げている人たちはよく見れば中年女性ばかり。平日の昼間に座り込めるのは主婦、ということでしょうか。しかし、拡声器を持って抗議声明らしきものを読み上げていたのは男性でした。わたしが話を聞いたのもその男性。現代建設が建てたマンションに欠陥があったとか約束されていた設備が出来ていないとか、いろいろと不備があるので、マンションを購入した人たちが抗議行動をしていたのでした。テレビカメラの取材陣も来ていました。
 今回の見学先はいずれも大規模・先端技術の素晴らしい図書館ばかりで、エル・ライブラリーのようなところが学ぶべき点などなさそうですが、そうではありません。延世大学図書館の設計思想は随所に「ラーニング・コモンズ」の考えが溢れていました。ラーニング・コモンズとは「学習するために皆が集う共有スペース」のことです。日本でもいくつかの大学図書館で導入されていますが、当館でもこれを導入してはどうかとひらめきました。「大人のためのラーニング・コモンズ」。来年度、エル・ライブラリーをラーニング・コモンズとして提供するヒントがいくつもありました。

 ところで、 最終日のパジュ出版都市は建築物が素晴らしいので、今回は見逃しましたが、いつか機会があればぜひ訪れたいものです。
 末尾になりましたが、田窪先生、稲葉先生、そして韓国のチェ先生には大変お世話になりました。また、参加者ご一行の皆様にも楽しい一時をありがとうございました。記して謝意を表します。(谷合)