竹中恵美子著作集(全7巻)

 2012年秋に竹中恵美子著作集(全7巻)が刊行された(明石書店)。
これを契機に、「竹中理論」の研究討議が、各方面で始まった。まず、2012年2月2日大阪において、「竹中恵美子著作集刊行記念シンポジウム〜竹中理論の意義をつなぐ〜」が開催され、全国から約100名が集い、竹中理論の意義の学習・継承が熱っぽく討議された。 そして、5月25・26日には、社会政策学会第126回大会におけるテーマ別分科会に、「竹中理論の諸相(第1回):労働フェミニズムの構想」が設定されている。その案内文の冒頭には、「戦後日本における女性労働研究は竹中恵美子のしごととともに始まり発展をとげてきた」と書かれてあり、竹中理論の労働力商品化体制論、生産と社会的再生産論に焦点をあてている。
全7巻の構成は以下の通りである。

第1巻 現代労働市場の理論
第2巻 戦後女子労働史論
第3巻 戦間・戦後期の労働市場と女性労働
第4巻 女性の賃金問題とジェンダー
第5巻 社会政策ジェンダー
第6巻 家事労働論(アンペイド・ワーク論)
第7巻 現代フェミニズと労働論

 このように題名を並べると、とっつきにくそうだが、学術論文だけでなく、労働運動
市民運動の直面する課題と方向について、「現場が何を求めているか、何が必要か」の問題意識にもとづいて提起された論文や講演録が多数あり、竹中恵美子の研究と女性労働運動の結びつきがどのように紡がれてきたかが跡付けられる。
 竹中理論は、女性の経験を欠落させた労働経済学や社会政策論に対して、労働・家族・市場において、女性の経験を理論化し、資本主義の基本的構造の矛盾を説き、富を独占している1%の者に対して、99%の民衆の理論として普遍化し展望を示してきた。女性運動や労働運動にフェミニズムを求める人々が、「導きの赤い糸」と評し、変革の道筋だけでなく、各自の生きかたに関ってエンパワーされたと言われる所以である。そして、それは、女性解放の理論としてだけでなく、社会的影響力に陰りが否めない労働運動の変革にとって極めて重要な方向を示唆している。
 たとえば、同一価値労働同一賃金は、今最も問題となっている非正規労働・ワーキングプワーの均等待遇を求める主張であり、21世紀のテーマであるデーィセント・ワークとケアする・される権利の保障や、世帯単位の社会保障システムの変革・・・等々、男性も含めた重要なテーマである。
 この著作集刊行は、50年以上に及ぶ竹中恵美子の研究の集大成であり、いくつかの歴史的著書は、一般の書店では入手できなくなっているものもあり、その意味で共有財産を得た感が強い。著者の勧めは、第7巻から読むのがわかりやすいとのことである。(伍賀 偕子)

 なお、冒頭に紹介した「竹中理論の意義をつなぐ」シンポジウムの報告集は、5月下旬に発行され、エル・ライブラリーで入手することもできます。