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小栗啓豊オーラル・ヒストリー

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『小栗啓豊オーラル・ヒストリー<元日本鉄鋼産業労働組合連合会中央執行副委員長>』青木浩之・高知短期大学准教授
平成25年度日本学術振興会科学研究日補助金研究成果報告書


本報告書は、日本鉄鋼産業労働組合連合会(=鉄鋼労連 現在は基幹労連の一部門)で、中央執行副委員長として活躍された小栗啓豊(おぐり・ひろとよ)氏のオーラル・ヒストリーを、青木浩之・高知短期大学准教授がまとめたものである。
 小栗啓豊氏は、1949(昭24)年愛知県岡崎市に生まれ、1968年川崎製鉄に高卒事務職として入社し、本社システム部に配属される。72年川崎製鉄本社労組執行委員をスタートに、76年からは専従執行委員となり、1982年から2000年まで鉄鋼労連の中央執行委員、書記次長を経て中央執行副委員長を務めている。3産別(鉄鋼労連・造船重機労連・非鉄連合)の統一によって2003年に結成された日本基幹産業労働組合連合会基幹労連)でも、2003年から2005年まで、中央副執行委員長を務め、20数年間産業別労組の鉄鋼労連の第一線で活動し続けた。(83年に1年間全日本民間労働組合協議会=全民労協調査局長としての派遣期間があるが)

 本報告の特徴は、企業別組合ではなく、産業別組合としての鉄鋼労連が果たした役割にポイントを絞ってのオーラルにある。インタビューは、2013年4月・5月の2回だが、小栗氏自身の長年の整理されたメモに基づき、「理路整然とよどみなく」話されていて、非常に整理された密度の濃いものとなっている。また、インタビューに同席した、岩崎馨・元鉄鋼労連調査部長と、稲葉潔・JFEスチール労働組合連合会書記長が、「鉄鋼労働運動家の視点から」質問を投げかけ、オーラルの内容をより深めている。

 鉄鋼労連が、春闘におけるパターンセッターだった時代、その「一発回答」が日本の産業界全体に与えた影響ははかりしれないが、鉄の労使5社がそろって「一発回答」を決める、その鉄鋼労使関係がどのように形成されていったのかが、一般には知りえない事実がリアルに語られている。
 鉄鋼界にも、ダントツに抜き出ている新日鉄のような大手と、系列も含めた中小とがあり、その中で鉄鋼労連の産別組織がどのようにコーディネーター役を果たしてきたか、小栗氏の語りは、この部分になると熱っぽさを感じる。特に、経営危機に陥った中小企業労組に対して、「合理化問題」担当者として経営分析をし、経営者と直接対峙して労働債権を確保し雇用を守り、「頼りになる鉄鋼労連」としての面目を果たしてきたという自負が伝わる。

 冒頭の「解題」では、産別労組の労使関係に関わる様々な証言を得て、次の4点にわたる論点整理がなされていて、小栗氏のオーラルを読み取るための導きとなる。

1)1980年前後の定年延長問題で、ギブ・アンド・テイクとして、早い年齢から賃金カーブを寝かせる設計の合意を形成していく過程。
2)中小企業問題への産別の取組みとして、中小企業経営者に対する鉄鋼労連3役による「経営申し入れ行動」や、関連企業対策方針の策定など。
3)鉄鋼労連の政策制度問題と政治との関わりがどのように進展していったか。 
4)鉄鋼労連が、企業を超えた鉄鋼労使のコミュニケーションの場をコーディネートし、鉄鋼産業を取り巻く環境条件についての共通認識を形成。     (伍賀偕子)
 
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