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医療問題研究会による放射線被曝問題の図書2冊

  • 『福島で進行する低線量・内部被ばく:甲状腺がんの異常多発とこれからの広範な障害の増加を考える』医療問題研究会編著(耕文社/2015年8月)A5判140頁
  • 『低線量・内部被曝の危険性―その医学的根拠』医療問題研究会編著(耕文社/2011年11月)A5判120頁

 編著者の医療問題研究会は、医療関係者を中心とする任意の研究会で、医療ボランティアも含めて71年から活動している歴史ある研究会。2011年の東日本大震災に対して、その秋11月に、チェルノブイリ事故の研究成果をまとめ福島の健康被害が想定される根拠を示す著書を発行し、各地で避難被災者の健康相談や「どこでも誰でも健診」署名運動に携わってきた。(HPが充実していてわかりやすい http://ebm-jp.com

 このような研究活動が認められ、「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)ドイツ支部から招請を受け、本年2015年3月フランクフルトで開催された国際会議「原発事故がもたらす自然界と人体への影響について」で発表し、ベラルーシの視察・交流も行った。
 今回の著書は、その発表内容とベラルーシ視察および各国研究者との交流を発展させ、福島の健康障害を分析し今後の脱被ばくの運動に役立てようと刊行された。
 長い書名だが、専門書として敬遠されないよう、出版の目的をそのまま表している。

 目次構成からもわかるように、チェルノブイリ事故から学び、福島事故後の健康障害を詳細に分析し、日本政府の放射線防護の基本を無視した対応を厳しく糾弾している。

 チェルノブイリでは、年間5ミリシーベルト超は「強制退去」の措置がとられ、1ミリシーベルト超で「移住の権利」を認めている。たが、日本政府は本年15年6月の閣議決定で、年間50ミリシーベルトまでの地域に帰還強要という非人道的暴挙を打ち出した。

 本書は、福島原発事故をめぐる一つの焦点である低線量被ばく障害を科学的に考えるための材料が丁寧に解説されている。甲状腺がん異常多発、低線量被ばくの危険性について、環境省福島県の障害かくしの「論拠」の間違いも一般市民にわかりやすく説かれている。
 また、甲状腺がん以外の健康障害についても分析がなされている。例えば、原発事故後の周産期死亡率について、福島近隣7県と遠隔10県を比較して、遠隔県では変わらないが、近隣県は事故9か月後から急増している。2013年2月発表のWHO(世界保健機関)報告書でも、甲状腺がんの増加を認めているだけでなく、固形がん全体とその一つの乳がん、固形ガンでない白血病についても増加すると予測していると。
 資料編では、放射線障害によって生じる可能性がある訴えや、集団検診に必要な検査項目なども示され、「脱被ばく要求」に確信がもてるように編まれている。

 本書が福島をはじめ日本全国にばらまかれている放射能汚染から身を守るために、健康診断を求める運動や健康手帳を広げ求める運動などにも役立てば幸いであると、編著者は結んでいる。(伍賀偕子 ごか・ともこ)