エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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シンポジウム「社会労働資料活用の可能性と未来」開催しました

 労働資料協(社会・労働関係資料センター連絡協議会)と法政大学大原社会問題研究所が共催した標記シンポジウムが11月25日に盛会裡に開催されました。会場となった法政大学の多摩キャンパスは東京都町田市の辺鄙なところにあり、かつ平日昼間の開催にもかかわらず、シンポジウムには約80名の方に参加いただきました。
 労働資料協は、全国の社会・労働関係の資料を保存公開する23機関と12個人会員から成る小さな団体です。毎年1回秋に総会を開き、会員間の親睦を図り、情報を交換し、見学会と研修会を開催して日々の業務に役立てています。
 今年で30回を迎えた記念に、代表幹事を務める法政大学大原社会問題研究所との共催でシンポジウムを開きました。

【基調講演】私の労働研究とアーカイブ
熊沢誠甲南大学名誉教授)
【パネル・ディスカッション】社会労働資料活用の可能性と未来
熊沢誠甲南大学名誉教授)
梅崎修 (法政大学キャリアデザイン学部教授)
平野泉 (立教大学共生社会研究センター勤務、アーキビスト
榎一江 (法政大学大原社会問題研究所准教授)
篠田徹 (早稲田大学社会科学総合学術院教授)(予定)
コーディネーター: 鈴木玲 (法政大学大原社会問題研究所副所長・労働資料協代表幹事)


 熊沢誠先生は「図書館をあまり活用してこなかった」とおっしゃるけれど、個人アーカイブされた聞き取りテープ等は貴重な資料群。まさに「熊沢個人アーカイブ」と言えるのではないでしょうか。
 50分間ほどの基調講演に続いてはパネリストを交えた討論で様々な意見が出ましたが、最後は「資料保存の前提として、労働者文化や生活者の文化が存在するという認識が必要なこと」という大方の意見がまとまりました。「しかし、この20〜30年で「文化」は弱まっているのではないか」という指摘が。熊沢先生や篠田先生、梅崎先生といった映画ファンが何人も登壇されたので、労働映画や文化の話題もいろいろ出たことが、同じく映画ファンの谷合としては興味深かったです。みなさまからは何度も「エル・ライブラリーが」「社運協が行ってきた『大阪社会労働運動史』が」と言及していただき、最前列で拝聴していた谷合は感謝感激していました。

 今回のパネリストのみなさんは海外生活が長い方や、国際情報を豊富に持っておられる方ばかりなので、世界のアーカイブズの情報も興味深く聞くことができました。欧米では日本よりずっとアーカイブズが身近なものであるというエピソードも語られました。平野泉さんからは「日本でデジタルアーカイブが難しければ、オランダの国際社会史研究所のポータルサイトに上げちゃえばいい、ヨーロピアーナにつなごう」という壮大な話も出ました。

 なお、講演に先立ちわたしが報告した「労働資料協30年を振り返る」というパワーポイントの内容は、急きょ『大原社会問題研究所雑誌』に掲載されることになりました。詳細は追って。

 会場の外では大原社研のお宝ポスター展も開催されていました。個人的にはロシア・アバンギャルドのものに心惹かれました。とてもスタイリッシュです! ポスターは大原社研のサイト上でもデジタル公開されているのですが、やはり本物の魅力にはかないません。

 シンポジウム後の懇親会も約40人が参加し、その後さらに3次会と流れて夜遅くまで語り合いました。熊沢誠先生にはお酒を召し上がらないにもかかわらず3次会までお付き合いいただきました。「労働者文化の衰退をいかに押しとどめるか」という提起には大いに首肯しました。

 事務方を一気に引き受けていただいた法政大学大原社会問題研究所の皆様、ほんとうにありがとうございました。翌日の見学会も含めてお世話になりました。
 パネリストの先生方、お忙しい中をご登壇いただき、ありがとうございました。労働資料協事務局長としてお礼申し上げます。(谷合)

※労働資料協Webサイト:https://sites.google.com/site/rodoshiryokyo/sokai/zong-hui-yan-xiu-hui2015