組合史・その残照と黎明

『組合史・その残照と黎明 -或る地方都市の自治体職員労働組合の分裂と組織統一までの道程 そして その中にいた わたしたちの時代』
   星 光二 著(緑鯨社/2016年1月31日/A5版 P.387)

 本書は、北海道釧路市における市職員労働組合の歴史のうち、著者が第一組合(自治労釧路市職員労働組合。以下、「市職労」)の書記長に就任したころから(1990年)執行委員長への転任を経て第二組合(自治労連釧路市役所職員労働組合。以下、「市役所労組」)との統合(2002年)の時期を中心に、組合が分裂した時期(1965年~74年)などを追加したものである。

 <本書の特徴>
 本書の特徴は、第一に、客観的歴史というよりも「それに関わった人たちの痕跡を記録した」ものであることである。第二に、著者自身の見聞きしたり関わったことを中心にならざるえないが、可能な限りそれぞれの視点を入れて経過を辿ったことである。また第三に、紹介者の感想になるが、さまざまな出来事に対し極めて率直なスタンスを貫いていること、著者自身だけではなく、様々な人々の思いを率直に表現する姿勢が見て取れることである。第四にその時期ごとのできごと(と言っても、「それに関わった人たちの痕跡」が中心であるが)を叙述した本文と、著者の意見・感想などを中心とした「雑感」「余談」「私論」「考察」「追補」などに分かれており読者の問題意識に沿った順序で読むこともできることである。
 たとえば、第一章(1990年)本文では、組合役員の経験のないまま書記長(専従)になってしまったこととその経過、時代背景、それまでの職場(広報係)経験わずか半年で休職願いを出さざるをえなかったことなどが書かれている。
 他方、「余談」では軍国主義を批判しながらかつての日の丸鉢巻から赤い鉢巻へと中の文字や色が違うだけでスタイルは同じと批判し、万歳もかつて「天皇陛下万歳」と両手を挙げていた思考停止・強制されたスタイルと同じであり、万歳の前の言葉さえ(スターリン毛沢東に)変えればいいというものではないと主張する。また、「私は、組合員を決して英雄にしてはいけない、英雄を作ってはいけないという考えかたを持っていた」と述べ、一人ひとりの組合員が己の矜持、生き方を試される時が来るかもしれないが、「組合はそれを一人ひとりの組合員に決してさせない、そこまで追い詰めないように組織としての組合が盾にならなければならないと。」「勿論、組合員を信頼していないのか、お前が思う以上に組合員は立派だぞという声も承知しているし、そうだろうと思う。最後はそこを信頼するしかないとも。その上で執行部、役員としての決意として。」と語っている。

 <釧路市労働組合の特殊性>
 釧路市の労組は、1969年から2002年まで、市職労と市役所労組との分裂状態にあった。組合が一組と二組に割れている職場自体は珍しくないが、多いのは資本が一組に対し分裂工作を行い、これと結びついて二組ができるケースでとりわけ「民間」資本に多い。それに対し釧路では、政治路線よりも市長選挙を軸に対立していたこと、革新市長のもとでそれに反発する人々が市役所労組を作ったこと、市役所労組結成後なお二期に渡って支持した市長候補が敗北したこと、その間市役所労組が思想集団の色合いを強めたこと、その後の保守市長のもとでも組合員減少にもかかわらず市職労が多数派を維持し続けたこと、など特殊性が多い。
 本書では、これらの特殊性の背景にあった様々な人々の思いがストレートに書きこまれている。おそらく、この率直さは著者の個性であり、この個性があったからこそ、組合統一も成し遂げられたのではなかろうか。(ボランティアN)