活路は共闘にあり : 社会運動の力と「勝利の方程式」

 五十嵐仁(いがらし じん) 著(学習の友社/20172月/141頁)

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著者は、2008年〜2012年に法政大学 大原社会問題研究所長の任にあった政治学者。2016年1月には八王子市長選挙に「無党派共同」の候補者として出馬した。
 本書は、2015年の『対決 安倍政権―暴走阻止のために』の続編である。前著に続き、「大左翼」の統一戦線を呼びかける本書の内容は、2015年から2016年にかけての日本の政治状況を分析し、社会運動の課題について提示して戦争法を廃止させることを目的として掲げるものである。

 雑誌『学習の友』での連載を主な初出とする本書は、全労連および日本共産党の活動家や支持者を主な読者として想定している。したがって、いかにして共産党支持者が、他の社会民主主義政党やその他の野党との共闘を実現するかに主眼を置いて書かれている。前著でもその実現を訴えていた野党共闘が大きな前進を見せたことが、本書で詳細に語られている。それは戦争法の廃止と参院選での選挙共闘についての野党5党による合意を指す。2016年2月のこの合意により、7月の参院選では32の一人区で共闘が成立し、11人の統一候補が当選した。この選挙が与党圧勝のように喧伝されているのが大きな間違いであることを、得票数などの数字を挙げて論証した本書には、蒙を啓かれる。

 その後、民進党が支持母体の連合からのつきあげによって共産党との共闘を避けるという揺れ戻しがあったが、社会運動の力によって、野党連合政権樹立と統一戦線結成への新たな扉を開く可能性が高まっているという。

 本書が1年前に刊行されたものであることを考えると、その後の民進党の紆余曲折がまさに野党共闘への再編に向けた生みの苦しみのようにも見えてくる。野党共闘の中で試金石となるのが「護憲」「改憲」というキーワードであるが、それについてどのように考えるべきなのか。著者は「改憲」と「壊憲」を区別しなければならないとして、憲法の理念を変えてしまう「壊憲」(これが安倍政権のやりたいこと)を許してはならないと述べる。また、自衛隊をどう位置付け、どのようなものにしていくのか、という問題にも言及し、災害救助隊としての役割を大きく評価しつつ、自衛隊を段階的に縮小再編することを主張している。

 そして、社会変革の主体は多数派市民であること、労働組合運動の重要性とその課題についてもそれぞれ1章を割いている。終章ではトランプ現象を始めとする世界情勢について言及し、その動きには極右勢力の台頭とそれに対抗する社会運動という「正・反・合」の弁証法的な発展がみられるという。

 本書を受贈してから既に1年近くが経ってしまい、当ブログでの紹介が遅れているうちに、なんと次の新刊書が間もなく上梓されるという状況になってしまった。実は本書刊行後の1年間の政治情勢変化のほうが興味深いと思われるのである。であるからには、本書を読み終わったあとに、続編である最新刊をぜひ合わせて読みたい。(谷合佳代子)