『打倒安倍政権 9条改憲阻止のために』

 五十嵐仁(いがらし じん) 著(学習の友社/2018年4月/161頁)

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 著者が学習の友社から上梓した政治学習のためのテキスト第3弾に当たる。つまり、同じテーマで三度目の出版になるということなのだから、事態は改善していないと見るべきなのだろうか。著者自身も「本書をもって最後の作品にしたいものです。もう良いでしょう」と「はしがき」で述べている。

 さて、これまでの「シリーズ」のタイトルは以下の通りだ。

「対決安倍政権」2015年3月

「活路は共闘にあり」2017年2月

 本書の内容はこれまでの著作と一部重複しつつも、2017年からの1年余りの間に起きた政治状況の大きな動きをとらえて、安倍政権が目指している「憲法9条の改憲」を阻止するためにはどう考え何をすべきかを訴えている。

 そのための現状分析が述べられており、とりわけ第1章に置かれた、2017年10月の総選挙結果の分析が興味深い。今回も与党は小選挙区制度に守られて、得票率ではさしたる変化もなく過半数も獲得していないのにも関わらず「圧勝」と言われた、と指摘する。同様の指摘は前書でもなされていた。有権者総数に占める自民党の得票率は25パーセントに過ぎないと。

 この1章にはこの間の合従連衡というか四分五裂と言うべきか新党乱立の動きが激しくわかりにくい読者にとって、「日本の主な政党の変遷(1990年代以降)」という系統図がついているのがありがたい。たった20年ほどの間に生まれた政党について、記憶にないものも多いことに驚く。

 第3章「安倍9条改憲をめぐる新たな攻防」は前書と重複する部分だが、よりいっそう叙述が豊かになった。改憲派というのは、必ずしも9条改憲論者だけではないという点が強調されており、「改憲」と「壊憲」は違うということが繰り返し述べられている。そして、2017年10月の総選挙によって改憲の動きは新たな段階に入ったという。すなわち、自民党はこの選挙で「憲法改正」を重点項目として挙げてきたのである。いよいよ9条改正に向けて 自民党政権がスピードアップを図っているので、改憲阻止のためには、改憲に伴う膨大なエネルギーや公金が無駄であり、それよりも「経済の立て直しと景気回復こそ最優先で取り組むべき課題」だと声を大にして訴えなければならない。大企業は利益を拡大しているが、一方で実質賃金の低下は4年間続いており、格差が広がっている。 と、具体的な数字を挙げて著者は生活最優先の課題に取り組むべきだと主張している。また、憲法9条を変えることによって自衛隊が戦争できる軍隊になれば、戦死者が出るのは必至であり、それについては過去のベトナム戦争イラク戦争での戦死者数の統計を引用して、日本が犠牲者を出さずに済んだのは9条があるからだと説明している。

 第4章では2017年7月の都議選の結果を分析し、安倍政権への批判が自民党敗北の大きな要因の一つであるとしている。森友加計問題にも言及しているがそこはさらっと経過をさらえる程度とし、あとは豊田真由子議員や稲田朋美防衛相などのスキャンダルについて言及して、安倍政権の体質が自分に近いものを優遇する「えこひいき」であることを糾弾している。

 第5章は安倍政権の軌跡を外交・基地問題から振り返っているが、なにぶんにも紙幅が限られているので概観にとどまる。

 本書は161頁というコンパクトなものであり、学習テキストとしてわかりやすさと読みやすさを旨として編集されており、さらに各章をそれぞれ独立して読んでも困らないようになっているので、学習会に使うのに適している。 

 巻末に細川孝・龍谷大学教授による著者へのインタビューあり。(谷合佳代子)