『労働運動を切り拓く 女性たちによる闘いの軌跡』

編著 朝倉むつ子・萩原久美子・神尾真知子・井上久美枝・連合総合生活開発研究所 発行 旬報社/2018年10月/ 四六判426頁

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――バトンを未来へつなぐために~均等法制定をめぐる攻防とは何だったのか、差別のない働き方と「生活」を取り戻すその純粋な熱意に貫かれた道のりを12人が語る―― と、本の帯にはアピールされている。

 均等法施行から30年余を経て、均等法制定をめぐる闘いの攻防と施行後の何度かの改定、そして施行後の闘いも追った軌跡を、「未来にバトンをつなぐために」まとめられたものである。女性たちの闘いの軌跡であるが、書名に表されているように、組織率と影響力の低下にあえぐ労働運動を「切り拓く礎」となるであろうという確信が、巻頭に述べられている。

 本書の中心となる「聞き書き」に登場する12名は、以下の人びとである(筆者も含まれているので、少々おもはゆい感があるが)。(肩書は本書の見出し通りで、敬称略)★第2章 高度成長期からオイルショックへ ・多田とよ子(元ゼンセン同盟婦人局長)・松本椎子(元連合副事務局長)・高島順子(元連合総合女性局長―本書の上梓を見ずして2017年12月逝去)・山野和子(フォーラム「女性と労働21」代表、すでに故人となられているので、講演録)

★第4章 経済大国ニッポンと労働運動再編の時代 ・坂本チエ子(元全電通中央執行委員)・伍賀偕子(元総評オルグ)・長谷川裕子(元全逓中央執行委員)・熊崎清子(元連合副事務局長)

★第6章 ポスト均等法の労働世界と運動の広がり・城間佐智子(沖縄バス35歳定年制訴訟原告)・高木澄子(行動する女たちの会)・柚木康子(全石油昭和シェル労組)・鴨 桃代(全国ユニオン元会長)

 ―― 本書に登場する女性たちの闘いの軌跡は、成功物語ではなく、けっして「輝かしい」ものとはいえない、しかし、真摯な姿勢に満ち満ちている。彼女たち一人ひとりが、困難な課題に直面し、人生に向き合い、その中で悩み、とまどい、決断し、果敢に考え抜き、実践してきたからである。私たちはこの闘いの経験を風化させてはならない、だから聞き書きとして記録に残したい、と考えた。(中略)労働組合の学習会や、労働運動について学ぶ学生たちのテキストとしても、本書を役立てていただければ幸いである ――と。

 第2章・第4章は、ナショナルセンターや大単産中央の幹部の人たちで、若い世代にとっては遠い存在かもしれないが、均等法制定前後の攻防を知る上で貴重な記録である。中央だけでなく、運動は地方の闘いの積み上げという意味で幹部ではない筆者の大阪での取組みも登場している。さらに本書の面白さは、第6章に登場する4名の人々の闘いであり、本書に厚みと広がりをもたらしていると思う。各章の扉に、特徴的な注目点と歴史的な意義が、適切に解説されているのも、興味深い。

 そのうえ、聞き書きにとどまらず、本書編纂の主張と解説が以下に編まれている。

 第1章 労働組合運動と女性の要求―「敵対」から「共存」へ
 第3章 男女雇用平等に立ちはだかった「保護と平等論」
 第5章 過去の運動を次の世代へ― 歴史がつなぐ未来へのバトン

 労働時間短縮における「生活時間」アプローチの課題を中心に、安倍政権が進めている「働きかた改革」への批判も含めて、労働運動の課題をわかりやすく提起している。

 ―― 非正規労働者の圧倒的多数は女性である。女性労働者はこれまで、企業内だけの存在であったわけではなく、企業という組織やユニットから排除されつつも、共有する社会的課題の解決を掲げて、企業単位とは別の場でも運動を続け、つながりを拡げようとしてきた。(中略)女性労働者と労働組合の「貧困なる関係」を解消する転換の軸は、企業外のグループと接点を結びながら、これまで労働者を隔ててきた壁を壊し、変革のための扉を開けることであろう。そのための苦闘の数々を、本書で聞き取りした女性たちの実践に見出すことができる ――と。

 また、9つのコラムのわかりやすさ、巻末の資料集も、学習資料として共有できるものである。(伍賀偕子〈ごか・ともこ〉 元・関西女の労働問題研究会代表)