「炭鉱の記憶と関西」展から新たなスピンオフ作品が

 2017年5月から6月にかけて当館が関西大学と共催した巡回展「炭鉱の記憶と関西 三池炭鉱閉山20年展」の主催者のひとつである「関西・炭鉱と記憶の会」のメンバーが次々と新たな作品を生み出しています。

 ”人間ミュージアム”こと前川俊行さんはずっと三池炭鉱にこだわり続ける個人誌『異風者からの通信』を上梓し、ついに今年1月に78号まで到達しました。

 鵜飼雅則、東川絹子両名の作品についてはすでにこのブログでも取り上げました。

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 そして今般新たに、西牟田真希さんによるエッセイが収録された『ラウンドアバウト フィールドワークという交差点』が集広舎から刊行されました。これは、展示会に実行委員としてかかわった西牟田さんが、展示を作っていく過程を通して触れた、三池炭鉱出身者の熱意について述べたものです。2017年の展示は当法人開設以来の準備期間をかけた大規模なものでした。その過程では、市民参画による実行委員会形式で「関西・炭鉱と記憶の会」を立ち上げ、3年にわたって企画運営を続けてきました。

 その会に途中から参画した若手研究者・西牟田さんによる戸惑い、驚き、感動、分析が綴られています。

 簡単に目次を紹介しましょう(版元のサイトより転載)。

shukousha.com

第Ⅰ部 本を片手に海を越えよう
 見たいと思うものの先にフィールドはある[ジャマイカ]神本秀爾
 「わかる」への凸凹な道のり[ケニア]萩原卓也
 痛みが開く、わたしが開く[日本]萩原卓也
 フィールドの常識は非常識?[イギリス]河西瑛里子
 フィールドでの関わり、立体化する政治[インド]山本達也
第Ⅱ部 よそものになりに行く 
 自惚れと自信喪失と失敗を重ねて[ソロモン諸島]藤井真一
 マサラ映画で歌ってみれば[インド]飯塚真弓
 何かが少しだけわかる、その瞬間を待って[ベトナム]康 陽球
 失った故郷を探求する熱意[日本]西牟田真希
 地 格[ブルキナファソ]中尾世治
第Ⅲ部 変わること、関わり続けること
 称号とともに生きる[ミクロネシア連邦]河野正治
 芸術を知るために舟を漕ぐ[フィジー]渡辺 文
 お年寄りと出会う、老いと出会う[沖縄]菅沼文乃
 つながるとはどういうことか?[インド]中屋敷千尋
 女性の笑顔が弾ける子宝祈願儀礼タンザニア]髙村美也子
 食にまつわる調査の記録と個人的な回想[ジャマイカ]神本秀爾
第Ⅳ部 もう一つの世界
 悪魔崇拝者の噂と妖術の夢[ケニア]岡本圭史
 悪魔崇拝者、憑依霊、外国人[ケニア]岡本圭史
 向かい合う「生」と「死」[カンボジア]大坪加奈子
 女性の身体の再聖化[イギリス]河西瑛里子

 

 このように、人類学、社会学のフィールドワークから生まれた本です。とても読みやすく、タイトルの「ラウンドアバウト=環状交差点」を実感できるように編んであります。ぜひ手に取ってご覧ください。(谷合佳代子)