七転八倒・七転八起―なかまユニオン20年史―

 なかまユニオン(2018年12月/ 私家版/A判80頁) 

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 本書は、昨年9月に結成20周年を迎えた「なかまユニオン」の軌跡をつづり、これからの希望を語る、手作り感あふれる記念誌である。

 1人でも誰でも入れるコミュニティユニオンは、企業の壁を越えたその運動に、企業内労組運動の影響力が落ち込んでいる今、注目が集まっている。

 結成20周年を越える労働組合はそれほど珍しくはないが、コミュニティユニオンの場合は、事務所・専従・財政・継承者問題等、いくつもの困難を抱え、その持続性が問われている中、傍観者的には語れないが、その20年の軌跡に学びたいと思うところである。

 委員長挨拶や顧問の回想から、その成り立ちを推察すると、当ユニオンの源流は、ナショナルセンターの総評がまだ健在であった頃、所属する労働組合の強化をめざして、「職場に労働組合を」という合言葉を掲げて、毎月例会を重ね、夏には「働く青年の全国交歓会」(全交)を開催していた活動家集団で、1996年頃、「誰でも一人でも入れる労働組合」の結成検討が始まり、労働相談から取組み、「ユニオン活動基金」の出資を募って、98年にユニオン発足に至った―と述べられている。

 「労働相談活動」を通じて組合員を増やしてきたが、「労働相談で労働者の個別の問題を解決するのが、私たちのゴールではなく、非正規労働者や中小企業の未組織労働者の集団的組織化が目標です。これは道半ばであり、模索を続けています」と述べられている。

 結成時から年次毎の記録には、相談件数、組合員数(脱退も含めて)が記されていて、20年目には、相談件数791件、組合員数274名(加入44人、脱退23人、除籍9人)と明記、苦悩の歩みがうかがい知れる。21年目では「来年度までに300人、5年以内に500人の組合建設」の目標が語られている。また、その歩みを追っていくと、「ネットワーク会員」というのもあり、直接加入ではないが、ユニオンに心を寄せて拠金で連帯するという工夫もされているようである。

 20年間に取り組んだ主な労働争議を記録から抜き出すと、パナソニックPDP偽装請負事件、長浜キャノン日系ブラジル人解雇事件、日本基礎技術試用期間解雇事件、パチンコ店パワハラ解雇事件、ひめじや解雇事件、A社セクハラ事件等、一つ一つ追う字数はないが、幹部請負の団交に終始せず、ありとあらゆる大衆運動で争議支援の輪を広げる努力が重ねられている。大阪市政に対するたたかいでは、2005年の「カラ残業」不当処分撤回闘争、保育所民間委託反対闘争、橋下市政の職員統制(憲法違反の職員アンケート、入れ墨アンケート拒否処分)との対決等、粘り強い持続的な運動を重ねている。そして今、派遣法の「労働契約申込みみなし制度」にもとづく偽装請負告発=全国初の裁判闘争を闘っている東リ偽装請負争議を全国発信している。

 当ユニオンの特徴は、一人ひとりの組合員が主人公の組合を作ることともに、「平和運動や国際連帯をめざす活動」に力を傾けて、組合員の共通体験とすることで、組合員の連帯意識を高めてきたことにある。とりわけ、韓国の労働者の闘いに励まされて、恒常的な交流を深めている。脇田滋・元龍谷大学教授が寄せられた「連帯メッセージ」には「なかまユニオンは、韓国の先進的な運動と最も活発に交流している労働組合である。不安定労働撤廃連帯、青年ユニオン、希望連帯労組、なめくじユニオンなど、韓国で先頭に立って闘っている労働団体や市民団体などと幅広く生き生きとした交流をかさねている」と評価されている。そのことを立証するように、本書に寄せられた数多くの「連帯メッセージ」の中で、韓国労働運動・市民運動リーダーや有識者からのが際立っている(8本)。

 「連帯メッセージ」でもうひとつ印象深いのが、ユニオンと共に闘ってきた弁護士6名から寄せられた言葉である。法廷闘争の強い味方である優れた弁護士たちが、ユニオンの大衆運動から得たことを語っている部分に、共感を覚えた。

 コミュニティユニオンの抱える課題は、日本の労働運動の将来に直結するものであり、本書から学ぶことは多く、労働運動史上、貴重な記録だと思う。(伍賀偕子:「関西女の労働問題研究会」元代表