貧困の基本形態 社会的紐帯の社会学

『貧困の基本形態  社会的紐帯の社会学』 セルジュ・ポーガム 著 川野英二/中條健志 訳 2016年3月31日発行 新泉社 四六判 416p

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 貧困は、全体的に豊かになった社会では受け入れがたい不平等であるがゆえに、困惑させられるものである。貧困層は、近代社会がまぬがれることができると信じていた運命をあらわしているのではないだろうか。本書において、著者セルジュ・ポーガムは、この社会問題のあらゆる要因を包括的に考察している。彼は、社会の下層に置かれた人びとの生きられた経験としての貧困と、社会それ自体が生み出し立ち向かおうとしている意識の要因としての貧困を同時に探求している。ポーガムは、貧困にたいする社会のかかわりについて考察しながらトクヴィルマルクスジンメルといった三人の主要な論者を振り返り、自身のオリジナルな研究を展開している。彼の研究は、貧困をそれ自体としてでなく、扶助の関係、つまり貧困層が属している社会全体の組織と関係づけている。ヨーロッパの多くで実施された数多くの比較調査にもとづいて、ポーガムは、これまでになかったやり方で、この相互依存の関係がとるさまざまな基本形態、つまり〈統合された貧困〉、〈マージナルな貧困〉、〈降格する貧困〉を定義している。
 〈統合された貧困〉において、「貧者」と呼ばれる人びとは非常に数が多く他の層の人びととそれほど区別されるわけではない。彼らの状況は非常に一般的であるため、特定の社会集団というよりも、常に貧しかった一定の地域や地域性の問題として語られる。これと反対に、〈マージナルな貧困〉においては、「貧者」あるいは「排除された者」と呼ばれる人びとは、ごくわずかな周縁的な人びとである。それはいわば、集合意識においては、近代文明への不適応者、産業の発展によって課される規範に適応できなかった人びととみなされた。〈降格する貧困〉は、いわゆる貧困というよりもむしろ排除という社会問題を反映している。そこでは、「貧困者」あるいは「排除された者」と呼ばれる人びとの数はますます増加する。かれらは生産領域から追い出され、しだいに増えていく困難を経験しながら、社会福祉制度に依存することになる。ますます多くの人びとが、いくつものハンディキャップ――低所得、劣悪な居住条件や健康状態、家族やプライベートな助け合いの社会結合が弱い、制度化した社会生活のあらゆることに参加しにくい――を蓄積する可能性が高い雇用の不安定さに直面する。
 このように、ポーガムが提案する貧困の社会学とは、まずは、社会的紐帯の社会学なのである。
 本書は、政治的な行動の前提として、いつか貧困へと陥るかもしれない運命にある人々の苦難を取り除く、あるいは少なくとも和らげるための考察を促そうとするものである。(ボランティアN)