『政治と労働の接点Ⅱ』

『政治と労働の接点Ⅱ』一の橋政策研究会(非売品/2019年/B5版224頁)

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 本書の発行元である「一の橋政策研究会」は、加藤敏幸元参議院議員民主党参議院国会対策委員長/現電機連合政治アドバイザー)の議員退任後の政治活動を支える政治団体として2016年に設立された(代表=加藤敏幸 事務局長=中堤康方)。

 連合結成時から労働政策局長、組織局長(電機連合)などを歴任した加藤代表の体験と、12年間の議員活動の実績を有効活用して政治と労働の両分野に存する諸課題の解明と提言をめざして活動を重ね、『政治と労働の接点―経験から課題提起―』が刊行され、本書はその続編である。

 構成は、ウェブ鼎談シリーズ「労働運動の昨日・今日・明日」鼎談集(10本)と、加藤代表の執筆コラム「遅牛草牛」(32本)の二本立てとなっている。

 鼎談の各テーマは以下の通りで、そのテーマに精通するキャリアの方々(14名)と加藤代表・中堤事務局長が歴史を振り返りながら現状を解明し、将来への提言を行っている。

 第1回「産別運動の現場から」 第2回「官民合流、ILO」 第3回「ILO100周年に向けて」 第4回「政策制度課題の取組み」 第5回「賃金をめぐる諸課題」 第6回「最低賃金について」 第7回「障害者雇用・就労支援について」 第8・9回「官公労働運動について①②」 第10回「労働運動と生産性」

 連合結成から30年を経て、労働者になった時から「連合」はすでにあったという人が今や大多数の時代において、「連合」結成=官民統一をめぐる論議がどのように展開され進行したのかの歴史を知る上で、結成時に携わった人たちの証言は貴重である。

 登壇者の多くの問題意識として、連合が「大企業の正社員」の利益を代弁するにすぎないという世間一般で形成されているイメージをどう払拭するのか ― が共通している。

 そんな中で第三者の意見を求めた「連合評価委員会」報告書(2003年9月/中坊公平座長)への高い評価が、第2回「官民合流、ILO」の章で語られており、他の登壇者たちの問題意識にのぼっていることが伺える展開である。

 「政治と労働の接点」という書名に関わるなら、労働組合の政策制度課題を直接語っているのは第4回で、連合で政策制度課題を担当してきた小島茂・花井圭子両氏(花井は、登壇者で唯一の女性)である。労働者の運動現場からのニーズを政策化し、その実現のために女性運動が推進された経緯を、ここでは「育児休業法」を例に証言していて、ニーズ・要求の収集と政策化、実現のための運動推進の生き生きとした結びつきが浮かび上がる。

 そして、政権への働きかけで、各種審議会での連合委員発言が重要視されるが、5,000万雇用労働者の共感を呼ぶような「説明責任」と運動提起が重要であると強調されている。

 第10回「労働運動と生産性」も非常に興味深い。「生産性」については、労働戦線統一以前から、対立的な論議があり、今日的にも、「働き方改革」提案によって「雇用対策法」が改定されたが(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業政策の充実等に関する法律」)、その目的に「労働生産性の向上」が、初めて法文に明記された。そして、口にするのも憚れるが、LGBTsは生産性がないというような保守政治家の妄言も登場するなど、議論が大いにある。

 ここでは、山﨑弦一・連合大阪会長が登壇。学術博士、コースドクターという労働界では珍しい存在で、実際に松下電器産業㈱(現パナソニック)の研究部門で働き、原体験は父親の鉄工所でのものづくり体験だと述べている人の、「生産性」についての語りである。

 1959年のヨーロッパ生産性本部の「ローマ宣言」やゴーリキの『どん底』の中のセリフ=「仕事が楽しみならば人生は極楽、仕事が義務ならば人生は地獄」=などを引用しつつ、「生産性」が係数的に分母や分子をいじって生産性をあげよと掛け声をかけることではなく、「働く」ことの意識をどうあげていくのか、働くことの質が本来的に問われているのだ― と。

 「働く」ことは(雇用労働に関わらず)、人間の本来的な活動であって、内在的に意識をあげていくことの重要性が語られていて、何度も読み返す示唆に富んだ鼎談である。

 なお、本書は非売品ではあるが、発行元の研究会のHPからアクセスすることができる。(伍賀偕子〈ごか・ともこ〉、元「関西女の労働問題研究会」代表)