エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

12月9日~26日までバザーを一時中止します(1月30日まで延長)

 大阪府における新型コロナ感染者が急増し、医療非常事態宣言が出される状況となっています。

 当館では、春の緊急事態宣言時のような休館はしませんが、ご利用者とスタッフの安全のために、下記の通り運営体制を変更します。なにとぞご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

(1)金曜日の夜間開館を休止します。

(2)バザー・古本市を休止します。

(3)ご来館前にできるだけご予約ください。

(4)上記措置は2020年12月26日までとしますが、延長する可能性があります。

⇒1月末まで延長します。

※なお、上記とは関係なく臨時休館日とする場合がありますので、エル・ライブラリー

トップページ下部に掲載している開館カレンダーをご確認ください。

 また、当館ご利用の皆様にできるかぎり外出を控えていただけるよう、コロナ禍対策として以下のサービスを期間限定で行います。

【2月末までの期間限定サービス】郵送貸出は送料無料、複写物も送料無料

1.図書・雑誌・DVDの郵送貸し出しの送料を先着5名様まで無料とします。⇒8名まで追加
 ※資料を借りられるのはサポート会員様のみです。
 ※貸出できない資料もあります。詳細はお問合せ - エル・ライブラリーのページからお尋ねください。 
2.雑誌記事のコピーなど複写物の送料を無料とします。非会員にも適用します。
 郵送複写料金は平常通り、1枚20円(非会員50円)です。 

 

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第6回『ラクガキ運動のために』 (ラクガキ班編集 彦根支部教文部1956年) 

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 らくがき運動を通じ、各職場で大量に出てきた表現物で本に掲載し切れなかったものを職場文集などの発行により、自分たちで発表していこうという試みが出てきた。その中で、らくがき運動を労働運動の戦略として明確に位置づけ、そのツールとして準備・発行されたのが職場新聞であり、その仕掛け人が当時、彦根支部教文部長であった辻󠄀氏であった。

 当時、辻󠄀氏が中心となって、彦根支部教文部はらくがき運動の発展の理論的支柱となる「ラクガキ運動のために」という冊子を発行している。下図は、この冊子からの抜粋であり、当時、辻󠄀氏が進めようとした運動の方向が示されている。

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 「らくがき運動」で掘り起こした労働者の不満を職場新聞の編集・発行によって共同化し、職場単位の要求闘争に発展させる。同時に合唱、文芸、演芸等のサークル活動・表現活動もこの一環として位置づけられていることがわかる。

 近江絹糸彦根工場で最も早く発行された職場新聞は、『蛹粉の中で』(絹紡製綿、1956年2月)、『ほのお』(絹紡ガス焼き、同)である。その後、1956年中に、『ぼこぼこ』(綿・スフ紡精紡、7月)、『晒練耺場新聞』(絹紡晒練、8月)、『じんし』(綿・スフ紡仕上、12月)が続いた。劣悪な労働条件により、他の職場の労働者から忌避される職場であり、特殊勤務手当として「絹紡手当」を強く要求していた絹紡3職場で、職場新聞が早期に発行されたことが注目される。

(エル・ライブラリー特別研究員 下久保 恵子) 

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新着雑誌です(2020.12.24)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

 

労務事情 No1417 2020.12.15 (201386737)

月刊人事マネジメント 360号 2020.12.5 (201386620)

ビジネスガイド No896 2020.1.10 (201386653)

労働法学研究会報 No2731 2020.12.15 (201386760)

季刊労働法 271号 2020.12.15 (201386794)

労働判例 No1230 2020.12.15 (201386596)

労働情報 No1000 2020.12.1 (201386687)

賃金と社会保障 1766号 2020.11.25 (201386711)

労働基準広報 No2048 2020.12.1 (201386778)

労働基準広報 No2049 2020.12.11 (201386802)

労働基準広報 No2050 2020.12.21 (201386745)

 

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所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第5回『第一回編集委員会のまとめ』 (近江絹糸紡績労働組合[1955年]) 

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 近江絹糸労働組合は人権争議終了の翌年、1955年6月、組合結成1周年記念文集の出版を計画し、作品を募集したが、応募者は限られ原稿が集まらなかった。その後、各支部の教文部の代表者による話し合いで、整った作文ではなく、日記や「なんでも思っていることをかく落書、よせがき」を含む原稿を広く募ること、共同編集のための編集委員会を作ることが決定された。その後の編集委員会で、記念出版の目的は「文集を作る」ことから、「みんなで書く運動―らくがき運動」の推進へと大きく転換する。

 『第一回編集委員会のまとめ』 における次のような結論は、そのことを如実に示している。

「文集を出版することが目的ではない」「みんながどんな方法でもそれぞれとりつきやすい方法で自分の思っていることをそのままのことばで書こう、みんなに表現の場と機会を与えよう」「組合員や幹部の胸にある苦しみや悩み、要求をはだかになって話し合い書いてもちより、これを組織して大衆にかえすのが文集である。」

 原稿を集める方法は各支部に任された。壁新聞、職場・寮・トイレに落書帳ノートを置くなど様々な取組が行われ、結果、多くの落書が書かれた。無記名が原則のため、会社に対するものだけでなく、労働組合や労働者相互の不満・意見や恋愛の悩みまで、内容は多岐にわたった。当時の労働者によれば、これらのラクガキに類することは、争議前には便所のラクガキとして書かれていたことであるという(註1)。実際、カメラサークルに便所や柱の特徴的な落書を撮影を依頼するという形でも「らくがき」を収集した(註2)。

こうして各職場から出されたらくがきが編集され、1956年5月、「らくがき」として、近江絹糸紡績労働組合から出版された。その後、三一書房からも一般出版物として出版され、様々な労働組合から注目を浴びた。

(エル・ライブラリー特別研究員 下久保 恵子) 

(註1)「これはね、この本としての「らくがき」そのものは人権争議の引き金になった、人権争議22項目の要求を掲げて闘いましたけども、その基になっているのがこのらくがきなんです。それはトイレとかそういう所に主に書かれてあったらくがきです。それをまとめて争議解決後に本にしたんですよね。」『近江絹糸人権争議オーラルヒストリー(1)』p88

(註2)「第二回編集委員会のまとめ」[1955]

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新着雑誌です(2020.12.16)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4005号 2020.12.11 (201386539)

労務事情 No1416 2020.12.1 (201386414)

賃金事情 No2811 2020.9.20 (201386471)

企業と人材 No1094 2020.12.5 (201386448)

労働判例 No1229 2020.12.1 (201386380)

労働経済判例速報 2429号 2020.12.10 (201386505)

労働法学研究会報 No2730 2020.12.1 (201386562)

 

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所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第4回 詩集『暗いなかに笑顔が』(彦根の詩サークル『熔岩詩人集団』)

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 写真は、『暗いなかに笑顔が』(熔岩詩人集団,1955.12.20)の表紙

表紙:中川壽一

 『熔岩詩人集団』の発行資料として、辻資料の中には、同人誌『熔岩』以外の作品集も収められている。「暗いなかに笑顔が」「なかの・ふみこ詩集」(いずれも「熔岩詩人集団編集委員会」編集、「熔岩詩人集団」発行、1955年)がそれである。

 『暗いなかに笑顔が」は『熔岩』同人による共同詩集である。「はじめに」によると、創刊以来3年半を期して、それまでに刊行した『熔岩』からまとめた詩集で、発行部数は千部となっている。

 巻末索引には、詩掲載者全77名の職業が記載されており、そのうち、主なものは下記のとおりである。紡績工11名、療養者10名、教員・学生・商店員が各5名、農業4名、電工・鉄道員・会社員・旋盤工各3名となっているが、他にも多様な職業の投稿者が見られる。 

 また、同資料の目次の詩タイトルのうち,8名15篇 のものに鉛筆による○印が入っており,このうち6人が『熔岩』19号と23号で近江絹糸内の詩人ないしは近江絹糸紡績内の詩サークルである噴煙グループの所属詩人として掲載されている氏名と一致すること,巻末索引の職業が紡績工とあることから,これらは近江絹糸労働者の詩であると推測できる。

(エル・ライブラリー特別研究員 下久保 恵子)

 

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『ワークルール教育のすすめ』『新型コロナウイルス対策!職場の労働問題Q&A』

Ⓐ『ワークルール教育のすすめ』道幸哲也旬報社/2020/A5判138頁)
Ⓑ『新型コロナウイルス対策!職場の労働問題Q&A 働くものと企業を守る』浅野高宏、倉茂尚寛、庄子浩平著/道幸哲也監修/一般社団法人日本ワークルール検定協会協力(旬報社/2020/A5判64頁)

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 Ⓐの著者でⒷの監修者である道幸哲也(どうこう・てつなり)は、北海道大学名誉教授で、一般社団法人日本ワークルール検定協会の会長、NPO法人職場の権利教育ネットワーク代表を務め、北海道労働委員会元会長、日本労働法学会元代表理事など、学問的にも、実践的にも、ワークルール教育の第一線の専門家である。

 「ワークルール教育」とは何か、「労働法」教育とどこが違うのか、社会的に今何故強調しなければならないか、ワークルール教育を構築し、拡げるために何が必要とされているのか ― をⒶは、明快に解説している。

 そして、Ⓑは、ワークルール教育の、新型コロナウイルス対策に絞りこんだ実践版で、YouTubeと連動して、「働くものと企業を守る」テキストというふれこみである。

 Ⓐのワークルール教育は、職場において働く主体が自らの権利を実現するという実践的目的をもつ教育である。その前提として法的なルールの特徴や労働法の全体像の知識が必要であり、それをふまえて「具体的紛争の解決」に着目する。①問題の発見・認識、②関連する法的ルールの把握、③権利実現の手立ての検討が必要であり、これらは、主に対立構造での議論を通じて行う。重要なのは、労使紛争の解決とは何か、解決の意味、さらに法的なレベルの限界についてまで配慮することである― と規定し、実際に働く主体としての市民的感覚が重要視されると。

 第Ⅱ部では、権利主張に対する職場の抑圧システムが、いくつもの裁判例の検討を通して、説得的に分析されていて、特に労働契約法の理解に役立つ展開がなされている。

 第Ⅲ部は、ワークルール教育をどう構築するか、「権利を実現する資質」と「教育の担い手」について述べ、ワークルール教育が何故身近なものにならないかを、現実の教育の構造や職場の抑圧構造を分析して、克服の方向性を導いている。

 興味深い主張 ― 労働者の自立の観点からは、労働契約をめぐるワークルールを意味のある形でどう教育するかが最大の課題になると思われる。契約法を前提にしなければ、労基法等の強行法規の意味を的確に理解し得ないからである。しかし、これはきわめて困難な課題である。とりわけ、対立関係を前提とした「合意」の形成は学校的な世界に最も遠い事象に他ならないからでもある ― は、高校教育におけるワークルール教育はどうあるべきかの基本的視座を提起している。どのような「労働者像」を想定するかの問題であると。交渉能力・情報収集能力が劣る従属的な姿が一般的としても、市民的自由の担い手であり、自尊感情をもつ自立と自己責任の主体でもあると。そして、連帯をどう教えるのかも重要であると。

  Ⓑは、「通勤電車で新型コロナにかかった!これって労災?」と、表紙で大きく問いかけているように、職場での「コロナウイルス対策」をワークルール教育として具体化した、わかりやすい実践書である。労働条件決定システム― 労働契約、就業規則労働協約の原則的な意義が、各論の展開の前提として、「はじめに」で解説されている。

 第1章「賃金」 第2章「解雇・契約解除」 第3章「安全衛生」の構成で、きわめて具体的な15の実例に沿った質問に対して、労働者の権利を守り抜くための確信を得る回答が展開されている。

 例えば、― コロナ禍でも当然に「雇止め」が認められるわけではありません― 「整理解雇の4要素(=①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③解雇対象者の人選の合理性、④手続きの相当性)に準じた検討が重要で、この要件が満たされなければ解雇は無効である―と。

 「それってどうなの?というモヤモヤが、この1冊でスッキリ」という表紙のうたい文句の通りに、資料編も含めてコンパクトで説得的な実践の手引きである。(伍賀偕子<ごか・ともこ> 元「関西女の労働問題研究会」代表)