エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

感謝!500回(その3)

当法人の来年度の予算理事会が昨日終了しました。財政規模の小さい当法人でも予算の作成はなかなか手間がかかって―特に公益法人会計の独特さが難しく―解釈について喧々諤々したり、数字のバランスに四苦八苦したりとしておりました。

このような図書館運営以外の業務もいろいろある中で、雑誌の目次を取りながら中身をパラパラと読む時間を作れているのはひとえにボランティアスタッフのおかげです。

エル・ライブラリーには常時参加してくださっているボランティアが10名ほどおられ、そのうち5名ほどは毎週きてくださっています。

毎週きてくださるうちのおふたりは公共図書館を退職された方々で、データ入力・ラベルなどの装備・配架・出納・書架整理・重複チェック・除籍と図書館的な業務をほとんどこなしていただいています。

エル・ライブラリーが図書館としてなんとか機能しているのはこのおふたりのお仕事があればこそです。また、おふたりとも淡々と作業されているのですが、その正確さ・緻密さは驚くばかりです。

他のボランティアスタッフにも種々のこと、困難なことをお願いしては快く引き受けていただいています。

エル・ライブラリーがなんとか機能し、当法人が運営しつづけていけるのは、ボランティアスタッフの皆さんのおかげなのでした。

雑誌記事目次ブログ記事を支えているのはボランティアスタッフの存在です。 ただただ感謝ばかりです。(了)千本沢子

 

※エル・ライブラリーのボランティアスタッフについては『図書館界』(2018年70巻2号 p.385-390)で報告させていただきました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/toshokankai/70/2/70_385/_article/-char/ja/

新着雑誌です(2021.3.23)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1422 2021.3.15 (201169000)

労働経済判例速報 2437号 2021.3.10 (201168945)

労働判例 No1235 2021.3.15 (201112620)

季刊労働法 272号 2021.3.15 (201112562)

賃金と社会保障 1773号 2021.3.10 (201112596)

労働基準広報 No2058 2021.3.21 (201112711)

 

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所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第9回 職場新聞(2)『蛹(さなぎ)粉(こ)の中で』その1

『蛹粉の中で』創刊号1面 

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 『蛹粉の中で』は最も早い時期に創刊された製綿(せいめん)職場の職場新聞のひとつである。1956年2月に創刊され、その後、ほぼ1ヶ月に1号発行され、当資料中には15号まで存在する。

 絹糸紡績では、原料である製糸屑や養蚕屑をアルカリ溶液で煮沸、腐敗させて、絹の主成分であるフィブロインを取り出して絹を綿状にし(晒練(せいれん)工程)、紡績し、絹糸を製造する。製綿は、晒練工程を経た綿(わた)を拡げてピン付ドラムで梳(くしけず)り、混入物を除き、繊維を一定の方向に揃え、揚綿(あげわた)と呼ばれる綿(わた)のシートを作る工程である。工程はさらに幾つかの担当に細分化されていた(以下、本稿では「綿(わた)」の材料は絹成分である)。

 まず、「綿掛(わたかけ)」担当が切綿機に綿を掛け、ドラムで伸ばされた綿を反対側に立つ「切綿(せつめん)」担当が鋏で一定の長さに切り、棒状のスティックに巻き付ける。

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(写真)切綿機。手前がスティックに綿を巻く「切綿」担当者。

(入江スナヱ氏提供、近江絹糸紡績彦根工場1955-1958年頃)

 「円型(えんけい)」担当がスティックを機械の羽目板に挟み、綿の部分をピン付ドラムで梳(くしけず)ることにより、不純物や短繊維を取り除いて、綿のシート(揚綿(あげわた))を完成させた。一方、ドラムについたゴミや短繊維を取り除くのが「粕取(かすとり)」担当で、取り除いた短繊維は、後部に設置された別の切綿機に再度綿掛けし、円型梳綿機を経て揚綿となった[i]。(最初にできた綿が一等綿、短繊維を再利用した綿は、二等綿以下四等綿まで取ったが、質は落ちるものとされた。 

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 (写真)円型梳綿機。「円型」担当が上部の棚のスティックに巻かれた綿を羽目板の間に挟む。写っていないが手前には「粕(かす)取(とり)」担当がいる。

(朝倉克己氏提供、近江絹糸紡績彦根工場1955-1958年頃)

 

『蛹粉の中で』には、会社への要求以外にそれぞれの担当同士の意見や不満の記事が多く見られる[ii]。 

切綿の方々へ

切綿を余り高くつまないで下さい。綿取りに行くのがいやになります。又つむ時も あわてずにおちついてきれいにつみ重ねて下さい。円型から切綿が落ちても知りませんよ。低気圧にならないでね。」 

 筆者は「円型」担当だと思われる。「切綿」担当は指定場所に綿を巻いたスティックを置き、円型担当はこれを取って、円型梳綿機の上棚に置いてから作業をする。大量のスティックがあるとバランスを崩して棚から落とすという具体的な苦情、要望である。

 「「何」でもできる様になったらなあー

 このことをみんなで話し合いましょう。

製綿の仕事は、開蚕が出来ないだけ、マア何でも出来る方ですが、やはり自分の本職、円型が一番良いです。

体の具合が悪く歩きたくない時なんか今日は円型だったら良いがなあと思って、急いで職場に行ってみる、ああやっぱり粕取りだわ、誰か粕取りのできる人はいないかなあと思ってベルが鳴るまで首を長くして段取りを見ている。

やっぱりいない、そんな時、やっぱり私がつかねばならん。

製綿で働く人達がみんなどの仕事もできる様になってくれたら私だけでなく、みんなが楽しく働けるのではないでしょうか。」 

 この記事から、担当業務がある程度固定化されていたことがうかがわれる。一方で、担当の流動化は生産性を落とすという意見も見られ、職場新聞が、仕事の方法についての議論の場ともなっていたことがわかる。 

[i] その他に機械の保全を行う男子労働者がいた。また、これら担当は午前5時~午後10時30分の間で二交替勤務であったが、他に部品の保全や原料綿の準備をする日勤者がいた。

[ii] 以下の二つの記事は、『蛹粉の中で』の2号(1956.3.20発行)1面に掲載されていたものである。

(下久保 恵子 エル・ライブラリー特別研究員) 

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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新着雑誌です(2021.3.12)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1421 2021.3.1 (201112612)

企業と人材 No1097 2021.3.5 (201113230)

人事実務 No1218 2021.3.1 (201112521)

労政時報 4010号 2021.3.12 (201113222)

ビジネスガイド No899 2021.3.10 (201168978)

ビジネスガイド No900 2021.4.10 (201113255)

月刊人事マネジメント 363号 2021.3.5 (201112679)

労働法学研究会報 No2736 2021.3.1 (201112554)

労働経済判例速報 2436号 2021.2.28 (201112588)

労働経済判例速報 2428号 2020.11.30 (201112646)

労働判例 No1234 2021.3.1 (201112497)

労働基準広報 No2056 2021.3.1(201113263)

労働基準広報 No2057 2021.3.11 (201113297)

地域と労働運動 243 2020.11.25 (201112505)

地域と労働運動 246 2021.2.25 (201112539)

 

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感謝!500回(その2)

エル・ライブラリー(大阪労働産業資料館)の所蔵資料は①労務実務系と②アーカイブズ系の大きくふたつに分けることができ、それぞれ利用者も異なります。

労務実務系(賃金,労働条件,人事管理,労務管理、労働法,労働安全衛生,社会保障職業訓練)の資料を利用されるのは、社会保険労務士,企業人事担当者,調査会社,弁護士事務所,使用者団体関係者,労働組合関係者,労働委員会関係者,労使紛争当事者,大阪府職員などの方々です。

私はアーカイブズ系の担当だったので、労務実務系の資料およびその内容に関する知識が非常に乏しい状態でした。それが、エル・ライブラリーでは労務実務系の定期刊行物も担当することになり当初は困惑しました。

エル・ライブラリーは開館(2008.10.21)前からメールマガジンの発行を始め(第1号2008.10.16)、現在も続けております。当館ブログに掲載している雑誌記事目次をこのメルマガにもURLを掲載し、特に注目の記事の紹介もしています。

雑誌記事の内容を紹介するためには、ブログにあげている雑誌は一通り目を通さなければなりません。理解できるかどうかはさておき(今でもわからないことが多いです)、とにかく文字を追うことを何年も続けていると、労働法の変化、それに伴う実務への影響、それを踏まえての解説記事、などの流れが見えてくるようになりました。また、判例の積み重ねが労働法では大きく、個別の判例のみならず変化とトレンドも意識するようになりました。

この数年は労働関連の法律が目まぐるしく変化しています。それに対応するために、社会保険労務士や企業の人事担当者、労働組合の方たちが当館に情報を求めてこられます。研究熱心かつ実務に即した具体的な目的を持ったこれらの方々のレファレンスにお答えするという行為が私にとっては非常に大切な訓練となっています。また、利用者の方々は労働の現場や会社組織をよくご存じですので、実際の状況や現状を教えていただくのもとても勉強になります。

また、メルマガにあげた注目記事を毎回複写依頼してくださる読者もおられ、励みとさせていただいています。

というわけで、情報を発信することによってこちらもまた情報を蓄積していくことができています。遅々とした歩みですが、これからも皆さまのお力を得ながら励みたいと思います。 千本沢子(ちもとさわこ)

『奈良刑務所物語 治安維持法で囚われた人々』

治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟奈良県本部・編(京阪奈情報教育出版/2020年12月/B5判194頁)

 奈良刑務所物語~治安維持法で囚われた人々 | 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟奈良県本部 |本 | 通販 | Amazon

 編者の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟奈良県本部は、1968年3月結成の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の奈良県支部として、1976年5月30日に結成された。現在会員450名。月刊紙「不屈 奈良県版」の発行や、2016年には「奈良県治安維持法犠牲者名簿」を刊行し、調査・研究・顕彰活動を重ねている。

 本書の初版は2014年に会員向けに刊行され、2016年の改訂版を経て今回、大量の増補を行って、初めて一般書として刊行された。

 奈良刑務所と言えば、明治の名煉瓦建築で、国の重要文化財として有名だが、明治の時代になぜあのような建築がなされたかについても、興味深い記述がなされている。

~ 司法省の若き建築技官・山下啓次郎が、視察のために欧米に派遣され、「刑務所が罰を与えるだけの暗く劣悪な環境の牢獄であってはならない。いつか社会に戻る受刑者たちが、心を育て更生の道を歩めるようなものでなくてはならない」という、既に「受刑者の人権」が認められていた西洋思想に学び、美しく立派で、しかも威圧感のない建物を設計した~

 ~この建物は町の人々にも愛され、多くの交流を生み、全国でも稀な「愛される刑務所」となった~と、作家・寮美千子が語っている。建物への愛着だけではなく、治安維持法で多くの政治犯が収容・虐待され、転向を迫られた暗黒の時代、それは侵略戦争へとなだれ込んだ道であり、そんな「歴史の証人=奈良監獄・奈良刑務所・奈良少年刑務所」の存続運動が、市民運動として起きた(「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」2014年発足)。市民が声をあげることで、「改築」の決定が覆され、2017年国の重要文化財「旧奈良監獄」に指定された。だが、アベノミクスの「文化財を活用して経済活性化に寄与させる」の標的となって、廃庁にされ、建物は民間委託されて史料館とホテルになった。

 本書は、この奈良刑務所の暗黒時代に悲惨な犠牲となった先人たちの苦悩と不屈の魂の記録を掘り起こした、歴史的な記録である。

 編者の地道な調査によれば、2016年までに判明しただけで、治安維持法下、引致、検挙、投獄されるなど弾圧された人は134名にのぼる。それらの人々の事跡が克明に刻まれている。主として、共産党員、水平社運動、農民運動、そして、権力におもねらなかった天理教関係者など、いずれの事跡もその生きざまが伝わる圧巻である。本書の冒頭の戎谷春松の、「般若寺坂―奈良刑務所回想」(「不屈奈良県版」に26回にわたって連載)について、その動機に身震いする想いである。~ 奈良刑務所は静かな丘の上の牢獄である。しかし僕らの以前に大逆事件の坂本清馬がたたかったし、<3・15><4.16><10・30>の先輩たちの平和と国民主権のためのたたかいがあった。その道を継いで歩いたひとりとして革命運動の聖痕の跡を書いておくのである。とくに今年は山宣の暗殺65年にあたり、その棺を担いで本郷通を葬送行進し、その肩の上に血の色と匂いを体験した生き残りとして―

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、「治安維持法犠牲者国家賠償法(仮称)」の制定を求めて、国会請願を重ねている。その請願内容は ~ 1)国は治安維持法が人道に反する悪法であったことを認めること 2)国は治安維持法犠牲者に謝罪し、賠償すること 3)国は治安維持法による犠牲者の実態を調査し、その内容を公表すること~である。

 二度と同じ過ちを繰り返させてはならない、次世代に継承せねばならないという編者の強い意志がひしひしと伝わる書である。(伍賀 偕子 ごか・ともこ)

 

新着雑誌です(2021.2.26)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4009号2021.2.26 (201388691)

労働経済判例速報 2435号 2021.2.20 (201388725)

 

詳細な目次はこちら

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