北原 晴男 監修 2012年11月 弘前大学出版会 A5版 159頁
藍は、天然染料の一つで日本の伝統的な色として、その美しさはジャパンブルーと讃えられる。藍(植物)から採れた染料を使って染めた藍染は、着物として江戸時代から人気があり、さまざまな文様や色合いは、その作られた地域の特色を映し出している。藍染は、津軽地方だけでなく、国内各地で古くから行われたが、徳島が藍染料の本場として全国に知られている。
本書は、その徳島ではなく、津軽地方の藍について書かれたものである。まえがき(「はじめに」)によれば、弘前大学教育学部有機化学研究室では、地域に根ざした研究を目指し、「地域資源の活用とゼロエミッション」を主要テーマとして、津軽藍研究もその一つという。研究は、藍にまつわる民間伝承を科学的に検証することで付加価値を生み出し、地域活性化に貢献したいとの意図で平成12年(2000年)から始まった。
平成24年(2012年)には、その研究成果が複数の企業から注目され、津軽産の藍を用いた実用化が進み、それにあわせて本書は刊行された。大学と共同研究を行った複数の企業が、それぞれ海外にも拠点あるいは提携先を持つことから、本文が日英対訳で構成されたという。
また、編訳者の一人でもある北原かな子氏は、「この研究は、もともと地域を学ぶための教材開発を意図しており、さらにこぎんざしや藍の植物など、幅広い内容が加わった本書を学校教育の場で活用していただければ、と願っている。」とあとがきで述べている。その言葉どおり、見開きページの左側が日本語、右が英語で書かれており、英語の教科書としても使える実用的なつくりである。
本書の内容は、大きく2部に分かれ、それぞれ3項目からなる。
第1部「藍と藍染」では、津軽地方の農家の女性の手で育まれたこぎんざしや藍染の仕組みと工程、藍(藍染)の抗菌性の効用、藍の植物(さまざまな藍)をとりあげている。
第2部「津軽藍の歴史」では、近世弘前藩時代から近代、現代にかけての津軽地方の藍の変遷と歴史的背景、新たな藍の復興に向けた大学と地元企業との共同研究や成果について述べられている。
藍を通して地域の活性化に力を注いだ津軽の人たちを描いた本書は、地域の産業史や文化史にも触れた貴重な作品であり、本文中に掲載されたコラムと多くの写真によって読み易くなっている。(谷垣笑子)
<書誌詳細>
- 津軽の藍 / 北原晴男監修 ; 北原かな子, ハンナ・ジョイ・サワダ編訳