エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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全林野文化資料室の資料移管・搬出作業

 1月30日(木)、館長・谷合が東京都町田市まで出向いて、「全林野文化資料室」の所蔵資料を当館に移管するための搬出作業を行いました。

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 作業に当たっては「市民アーカイブ多摩」(東京都立川市)を拠点に活動されている「ネットワーク・市民アーカイブ」にお願いして、ボランティアを募っていただきました。その結果、同会事務局の江頭晃子さん、運営委員の杉山弘さん(町田市立自由民権資料館学芸担当)に手伝ってもらえることになりました。他にも希望してくださる方も居ましたが狭い場所なため2人にとどめてもらいました。資料の扱いについてはプロのお二人、さすがに手際がよく、作業はすいすいと進んで、予定通りの時間内に終えることができました。

 ↓は段ボール箱を組み立てる杉山さん。次々と組み立てては、江頭さんが番号を記入していきます。庭にどんどん箱が積み上がっていきます。

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 「全林野」とは、全林野労働組合の略称です。国有林林業労働者と林野庁の職員を中心に1953年に組織された組合で、公務員労組として長い歴史を持っていました。1989年、全林野労働組合と民間組合である全国山林労働組合(略称「全山労」)が、産業別組織として全日本森林林業木材関連産業労働組合(略称「森林労連」)を結成しましたた。森林労連は、両組織の上部組織であり全林野と全山労の二つの組織が加盟していました。

 その後、2006年には長年にわたり分立状態にあった全林野と、日本林業労働組合(略称「日林労」)が共に組織を解散し、新たに全国林野関連労働組合(略称「林野労組」)を結成し組織を統一しました。今では、公務員組合の林野労組と民間の全山労がその上部組織として森林労連を構成しています。

 全林野は白ろう病などの職業病問題に取り組んだ組合としても有名です。

 その全林野の文化部長・国際部長を歴任されていた木村和(きむら・かず)さんが、全林野解散後に東京都町田市の自宅庭にログハウスを建てて資料室を設けました。しかし高齢となり、病を得て維持することが困難になりました。そこで資料移管先を求めておられたのですが、なかなか引き取り手が現れず、結局、エル・ライブラリーが引き取ることとなりました。

 しかし、大阪から町田市は遠く、搬出作業も大変です。2回にわたって谷合が資料調査をしたうえで、作業については多摩地方のアーカイブズ機関の方々にボランティアをお願いすることとしました。快く応じてくださったのが、江頭さんと杉山さんです。

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 2時間半の集中作業の末に、庭に積み上げた段ボール箱38箱と紙袋25個。残念ながらすべての資料を移管することはできず、一般市販図書などは置いていかざるをえませんでした。また、大きな作品も引き取れません。

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 こうして町田市から大阪市内のエル・ライブラリーに運ばれた資料は今、書庫内でこういう状態(↓)で置いてあります。これを全部開封して整理できるまでに何年かかるのか?! それでなくても未整理資料は段ボール箱に数百箱分は滞貨しているというのに。と、絶望的な気分にも襲われます。

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 移管した資料の中には以下のようなものがあります。全部を確認できているわけではないのですが、概要を記します。

 ・全林野文化部会議資料

 ・「働く仲間の写真展」入選作品などのアルバム

 ・木村さんたちが全国をまわって集めた「木こり歌」などの音源カセットテープ100巻程度。

 ・全林野国際交流関連の会議資料

 ・幻灯フィルム10巻程度

 ・白ろう病関係文書

 ・機関誌「ぜんりんや」

 ・全林野関係の労働者詩集

 ・労働者文化運動関係のミニコミ

 

 たくさんの写真を引き取ってきた中には、昭和20年代林業労働の現場を写した貴重な写真が何枚もありました。意外なことに女性労働者も何人も写っていました。

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 貴重な資料を私財を投じて守ってこられた木村和さんには深く敬意を表します。病床の和さんを支えておられる妻・裕子さんには、作業にあたってさまざまなお心遣いをいただきました。記して謝意を表します。

 そして、谷合の計画ミスにより作業日程が大幅に変更になるというご迷惑をおかけしたにもかかわらず、気持ちよく作業を担ってくださった江頭さんと杉山さんのボランティア精神にはただ頭が下がります。

 そして、今はアメリカで在外研究中の鈴木貴宇さん(東邦大学准教授)には、1回目の資料調査の折に同行していただきました。鈴木さんのご協力にも心からの感謝を。

 みなさまのおかげで、資料を次世代に伝える光が見えてきました。本当にありがとうございました! そしてこれらの資料をこれから一緒に整理していく当館スタッフのみなさん、館長の無茶振りを許してくださいませ~(谷合佳代子)

 作業後の記念撮影(↓)

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