エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

28.職場新聞(21)替歌

 「うたごえ運動」は、戦後、日本共産党の文化工作の一環として始められたが、その後、1950年代に民主主義を守る運動、平和を求める運動として党派を超えて広がり、大きく発展していった。一方、労働現場でも、サークルや職場で集い、歌うことが広がった(注1)。

 1957(昭和32)年6月16日付「第三回支部大会報告書及議案書」(近江絹糸労働組合彦根支部)の教文部の活動報告にも「うたごえの仕事ぶり」として項目が立てられ、組合運動の一環としてとらえられていたことがわかる。また、辻󠄀保治資料には、歌詞集や替歌集なども残されている。

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『晒練替歌集』晒練職場会

 職場新聞にも「うたごえ」として休み時間などに共に歌う呼びかけが多数見られるとともに、多くの替歌が掲載されている。替歌の歌詞からは労働者の日常がうかがわれ、興味深い。

労働運動歌っぽいもの。

 替え歌 ‖娘船頭さん‖

  • 娘十八口紅させど

わたしや淋しい 紡績娘

春がくるのに花さへ 咲かず

みるは排綿のヨー 綿ばかり

  • 思い出します 人権争議

お前も私もハチマキしめて 百六日の

苦闘我等のヨー 大勝利(注2)

  • 歌が聞える平和の■唄が

職場の汗から 明るい声が

自由と権利を守るために

やるぞみんなのヨー

たくましい力

(排綿有志合作)

(絹紡製綿『蛹粉の中で』3号4面)

 

かえうた

  • 人繊仕上は

われらの職場

おれらがやらなきゃ

守れないからに

  • 同志よ頑張ろ 

職場を守ろ

  おれたちゃ家には

    帰れないからに

  • 機械がとまれば

  われらが困る

おれらのいるとこ

  こゝしかないさ

 (雪山賛歌のふしでうたう)

 (この続きを皆で作りましょう。)

(綿・スフ紡仕上『じんし』5号4面)

 

職場の様子がわかる歌。

替歌

  • 俺らはナー

入社以来のラップ上げ

しんしょは、カバーとロット(注3)だよ

大小さま〲なラップを

上げて上げて又上げて

何時になったら幸せを

エーつかめるね

ドッコイシヨー

ドッコイショー

二、工場はナー

  むされるような暑さだよ、

  これでは体がもつものか

  だからたまには休みたい

  早く早くそれ冷房をつけておくれよ課長どの

  エーたのみますヨー

  ナンマイダー

  ナンマイダー

  (節は俺等は炭坑夫)

(綿・スフ紡混打綿『ラップ』6号2面)

 

我等の賛歌

一、運の向きよで入った職場

あせとほこりのたいぬとこ

これがおいらのガス焼き

よせよセンチな泣きごとなどは

みんな仲よくなアおい

やろうじゃないか。

二、灰にまみれた手のひら見れば

あかくにじんだ糸切の(注4)

これがおいらのガス焼さ

よせよセンチな泣きごとなどは

我らガス焼さなアおい

守ろうじゃないか

(風の吹きよで)

(絹紡ガス焼『ほのお』12号2面)

 

ブルージーな毎日

替歌

一、赤い夕日が琵わこにしずむ

工場にや■■ランプの灯る頃

オイラまづしい深夜番(注5)

いつになったらやめられる

あヽー夜になってもねむれない

オイ!社長金おくれ オイラ

借金だらけだ えヽ?あなた

ウン ふられたんだ

二、油によごれたポケットをのぞきゃ

今日も小さなタバコだけ

安給料と借金にゃ なれているけど

くるしいよ

あヽ―金のない身がつらいのさ

三、まぶたにうかぶあの人恋し

今頃ネ床でたかまくら

オイラ糸つぎ汗くさい

楽しかるべき青春を

あヽ―夢のない身がつらいのよ一、                                                                                                                  赤

(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』3号4面)

 

そして恋の歌も

ケセラセラ

滋賀ひとえ

  • 僕の好きな彼女がいます。

毎日楽しくすごせます。

ケセラセラなる様になるは

先のことなど判らない。

二 絹糸で結婚してくれますか。

  毎日がとっても苦しいです。

  ケセラセラなる様になるわ

  心中しても知りませんよ。

       ケセラセラ

(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』6号4面)

 

(注1)河西秀哉「1950年代うたごえ運動論」(大原社会問題研究所雑誌No707・708,2017)参照。

(注2)近江絹糸人権争議のこと。

(注3)混打綿工程の最終製品は綿またはスフ綿のシートを巻き上げたラップである。カバーはラップにかけるカバー。ロットはラップに通す芯棒で、ラップを運ぶために使う。

(注4)ガス焼は絹糸紡績の仕上の一工程で、絹糸をガスバーナーが設置されたガス焼台の突起(ランナー)に巻き付けて糸の毛羽立っている部分を焼き、艶を出す。職場は暑く、台は灰だらけであった。

(注5)深夜番は深夜業専門の労働者。人権争議終結後は、週単位で日勤との交替制となった。

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

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