エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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「どっこいショ」と時代を映る

 1984年に神戸で生まれた「映画製作委員会」の歩みをまとめたドキュメンタリーを、本作の脚本・構成を担当された三木啓子さん(アトリエエム株式会社代表)から頂戴しました。

 映画ファンを自認する谷合なのに、映画製作委員会のメンバーである鵜久森典妙、保木政男、高橋一郎という3人の名前を恥ずかしながら知りませんでした。しかし、本作で次々と紹介されていく作品を見て、「あ、知ってる、知ってる」というものがいくつか。特に「24000年の方舟」、「奇妙な出来事アトピー」は見覚えがありました。

 1948年から53年にかけて生まれ、神戸の映画業界にゆかりのあった3人が出会い、製作したドキュメンタリーの数々はいずれも「作品の根底には常に「命・人権・環境」という大事なテーマがあり」ました(DVDジャケットより)。

 この「どっこいショ」では、3人が作った作品を紹介しつつ、周囲の人々のインタビューを交えて、3人が何を求めて活動してきたのかを振り返ります。最初の作品の「24000年の~」はプルトニウム半減期を示します。この作品は核廃棄物問題を追及したものでした。

 往時の3人の肉声が流れるシーンもあり、晩年の白髪になってからの3人の写真と比べ、歳月の流れに感興をそそられます。2011年に保木が、2021年に高橋と鵜久森が相次いで亡くなり、「彼らの遺志を受け継ぎ、どのように後世に伝え続けていくのかが私たちに問われています」という思いから本作は製作されました(DVDジャケットより)。

 映画の中で、「とにかく書けば記録は残る」という言葉が登場します。同じように、「とにかく撮れば記録は残る」ともいえるでしょう。文字でも映像でも記録を残し続けていけば、後世の人々がそれを過去の教訓として、また未来への希望として受け止めてくれるのでは、としみじみ感じました。わたし自身がアーカイブズ機関の人間として、記録を残し次世代へと伝える続けることを使命とする思いを新たにした一作でした。

 本作はサポート会員には貸出可能です。郵送貸出もできます(送料は利用者負担)。(谷合佳代子)

「どっこいショ」と時代を映(み)る

語り 小倉啓子
撮影・編集 鵣飼道行
脚本・構成 三木啓子
製作 映画製作委員会

2022年 40分 非売品

◆映画製作委員会の主な作品リスト◆
1984年 おおきなおいも(提供:灘神戸生協)
1986年 24000年の方舟 
1991年 奇妙な出来事アトピー ◆日本記録映画作家協会賞
1995年 子ども達やお年寄りに映画を贈ろう(提供:兵庫県映画センター)
1995年 ぷくぷく夢がわいてくる(提供:ぷくぷくの会)
1995年 風ものがたり 食と農と環境 ◆地球環境映像祭環境教育映像賞、日本映画復興奨励賞、
1999年 手術を受けるみなさんへ(提供:神戸市立中央市民病院)
2000年 秘密基地・榎忠の仕事場
2000年 アウンセシア(提供:東仲一矩カンパニー)
2000年 李庚、マーラーを描く(提供:実行委員会)
2000年 李庚・馬羅 大地之歌(提供:実行委員会)
2001年 こどもビデオコンテスト(提供:NPO神戸100年映画祭)
2001年 ひまわりコンサート(提供:茅野幸子音楽教室
2002年 きみがたいせつ 子どもオンブズパーソンからのメッセージ(提供:川西市
2003年   CONNECTION
2003年 LOVE
2003年 子どもの権利条約フォーラム(提供:川西市
2004年 紙しばいがはじまるよ!
2005年 榎忠L.S.D.F
2005年 あなたの入れ歯はしっかり噛めますか(提供:入れ歯講演会事務局)
2005年 大阪農塾 農・その本質を見つめる
2005年 高校生に語る有機農業
2006年 神戸マネースクール(提供:プラウドカンパニー)
2006年 かちくぼくさつどういちょういんほう
2006年 フランドン農学校の尾崎さん ※
2006年 千里金蘭大学児童学科(提供:千里金蘭大学児童学科)
2008年 パワーハラスメント そのときあなたは…(提供:アトリエエム)
2009~2012年 三木啓子のハラスメント相談員セミナー VOL.1-VOL.5
2012年 もういいかい ハンセン病と三つの法律 ※
2015年 セクハラ・パワハラ その現状と防止対策(提供:アトリエエム)
2016年 最後の活動弁士 井上陽一の世界 ※
2016年 ハンセン病後遺症とは ~適切な医療・介護を提供するために~(提供:ふれあい福祉協会)
2017年 家族・親族への思い ~ハンセン病回復者からのメッセージ~(提供:ハンセン病回復者支援センター)
2018年 国及び地方公共団体の責務とは ~らい予防法と無らい県運動~(提供:ふれあい福祉協会)
2019年 ハンセン病療養所で受けた私の被害 断種・堕胎(提供:ハンセン病回復者支援センター)
2020年 大きな一歩へ!!ハンセン病家族の今(提供:ハンセン病回復者支援センター)
2020年 考えよう!ハラスメント VOL.1~VOL.5(提供:アトリエエム) 
2021年 私の体験 ~ハンセン病療養所退所者の証言~ N0.1~9
2021年 一人になる 医師小笠原登とハンセン病強制隔離政策 ※(提供:「一人になる」制作実行委員会)

 ※印は劇場公開作