エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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「70年万博とエキスポ争議」関連資料

「70年万博とエキスポ争議」関連資料目録を作成
 ~「2025大阪・関西万博」への対処に活かすために

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする「2025大阪・関西万博」開幕まで、3年を切った。テーマも含めて、開設にいたる膨大な税投資など、開催意義について論議があるが、その吟味はここでは控えるとして、52年前に大阪で開催された「70年万博」についての検証は、必要なことで、特にそこで働いた労働者のこと、「エキスポ争議」についての関連資料目録を作成したので、紹介したい。

<70年万博への大阪総評の基本的態度>

 「人類の進歩と調和」を謳う70年万博について、当時の労働組合のローカルセンター「大阪総評」の基本的態度は、「万国博こそ、予想される安保闘争のホコ先をそらし、国民をバラ色の幻想のなかに眠り込ませる巨大なカムフラージュである。府民の福祉は犠牲にされ、自治体の財政は危機にひんし、行政水準は低下し、いわゆる都市問題はますます深刻化するであろう」との平垣事務局長文章(資料4)に示されている。この年の大阪メーデーのスローガンも、「大国主義の万博反対」であった。

 だが、遠くから批判していたのではなく、実践的には、建設時から全国から募集される建設労働者の組織化に取り組むとともに、開催直前2/27には、日本万博協会に対して、7項目の要求=安全輸送と事故対策からはじまり、検疫・医療対策、地域の公害・物価対策、軍艦の寄港問題、万博関係の労働諸権利の確保等=を提起して、交渉の窓口を固定して、責任ある措置がとられない時には、労働組合として、デモ・ストライキを行使しても、要求し続けると宣言した。

 万博協会は、3/9に、「おこりうる一切のことについて万博協会はにげかくれしない」と文書で回答した。

 

<エキスポ綜合労働組合の結成~万博会場からの人権宣言>

 そして、万博会場中で働く労働者の組織化のために、大阪総評は3名のオルグを派遣した。熟練オルグの尾上(故人)・宮崎オルグ(故人)と、入職して3年余の新米オルグの筆者であった。途中から、青年オルグの桜井オルグも派遣された。そして、結成されたのが70年4月12日、「エキスポ綜合労働組合」(委員長=高田節子)で、結成時は113人だったが、不当な使い捨てのやり口に対して労働者の不満が続出して、すぐさま1000人を突破し、最高時は76組合(支部)2148人が加盟するに至った。

 「サギにかかった」「こんな屈辱的な扱いを受けたのは初めて」「人間に対してすべて疑いをいだくようになり、精神的にまいってしまう」~これは、エキスポの情報通信に携わるプログラマー、オペレーターへのアンケートの解答文である。募集要項のペテンや、簡単に使い捨ての不当解雇、続出するセク・ハラ(当時はこの言葉はなかったが)、ハラスメントに対して、「不当なことに黙っていない」と、抗議のピケやストライキが連日行われた。この闘いと組合員の意識の変化が、当事者図からが語る『千里の丘より エキスポ労働者の闘い』(資料1)『乙女は立ちて輪を結び 赤旗なびかせストライキ』(資料2)にリアルに記されている。6カ月間に結ばれた絆だが、よくぞ記録に残してくれたと思う、歴史的な史料である。

 団体交渉や地労委の提訴には、ベテランのオルグが同席し、リードした。

地労委への提訴ついては、短期間の労使関係だからこそ、迅速な対応が求められ、いずれも合理的な斡旋や命令を得て、当然の勝利を次々に獲得している(資料10)。

 外国人経営者に対しても、労基法や労組法に結実した一切の権利や、日本の労働法無視を公然と宣言する事態に、万博協会には毅然と臨む姿勢が全く見られず、エキスポ綜合労働組合の突き上げよって、ようやく5月半ばに「労働相談室」が設けられるというありさまだった。

 平垣事務局長(当時)は先の文章(資料4)で、大阪総評に組織されているかどうかに拘わらず、その人たちがアキラメから闘いに立ち上がってくれるために、全面的に支援することこそ、ローカル・センターの役割であると、締めくくっている。新米オルグだった筆者も、エキスポ争議の一翼に参加して多くを学び、彼女たち、彼らが「闘えば勝てる」、「共に要求し闘う仲間の絆の豊かさ」を実感したであろうと記している(資料3)。

 以上、この資料目録を作成したかった目的意識を簡単に述べたが、さらに補強していきたいと思っている。取り急ぎ列挙した1~16の資料はすべて、エルライブラリーで閲覧できる。「2025大阪・関西万博」への対処を考えるにあたって、ぜひ参考にして頂きたいし、資料補強にもお力添えいただきたいと願うところである。(伍賀偕子〈ごか ともこ〉)

70年万博とエキスポ争議関連資料(作成=伍賀偕子 2022.8.17)  

1.『千里の丘より エキスポ労働者の闘い』 1970.9.13 エキスポ綜合労組委員長 高田節子
2.『乙女は立ちて輪を結び 赤旗なびかせストライキ エキスポ綜合労組の闘い』 1970.8.20 発行=労働運動研究会 編集=AA人民連帯大阪・新左翼・列島新報
3.「万博会場からの『人権宣言』」伍賀偕子 『エコノミスト』70年7/28
4.「エキスポ綜合労組と万博問題」平垣美代司(大阪総評事務局長)『労働経済旬報』1970、五月下旬  №788
5.『地域から闘争の火柱を~大阪総評日記』平垣美代司(啓有社) 注および補注
6.『30年の歩み 大阪総評』総評・大阪地方評議会 座談会「歴代事務局長が語る地評30年」P.78 平垣発言
7.『大阪社会労働運動史』(大阪社会運動協会)第5巻 P.303~327  70年万国博開催とその影響
8.『大阪社会労働運動史』(大阪社会運動協会)第5巻 P.589~591 万博会場での争議  
9.総評大阪地評大会『1969年度一般経過報告』(69年8月~70年7月)組P.25~27 エキスポ綜合労働組合
10.総評大阪地評大会『1970年度一般経過報告』 組織争対局法規対策部 地労委関係 組・法P.5~12
11.『ボチボチでもたゆみなく』全港湾西成分会日刊紙(大衆ビラ)「大坂城」10,000号記念資料集 P.8 「大坂城」№106(1970.6.29) 
12.『オルグは野武士のごとく 尾上文男・激動の時代を駆け抜けた男の記録』 発行=尾上文男写真集を発行する会  2013.6.15  P.7 「未組織の組織化単産を父に 地域を母として」 エキスポ綜合労組の写真と結成年表
13.『女・オルグ記 女性の自律と労働組合運動のすそ野を広げて』2016.6.25 伍賀偕子(ドメス出版) P.90  未組織労働者との連帯と万博での取り組み
14.「『足が太いからクビ』大阪万博の光と影」 47NEWS 2018.6.11 共同通信編集委員 佐々木 央
15.『労働運動を切り拓く 女性たちのよる闘いの軌跡』2018.10.30  朝倉むつ子・萩原久美子・神尾真知子・井上久美枝・連合総合生活開発研究所編著  第4章 伍賀偕子・聞き書き P.226 [エキスポ綜合労働組合結成―大阪総評は国民運動のセンターである」   
16.『労働の科学』77巻4号2022年 巻頭言 (大原記念労働科学研究所)「『1970年大阪万博』の教訓を生かせ」 本田一成

以上