エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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第3回「玉本英子さんのウクライナ映像報告会」開催しました

 11月2日(土)に開催したジャーナリスト玉本英子さんのウクライナ現地取材報告会、とうとう3回目を迎えてしまいました。2022年にこの報告会を始めたときにはよもや3回目があるとは思っていませんでした――。

館長・谷合(左端)がエル・ライブラリーの窮状を訴えるとなぜか会場から笑いが。
全然深刻そうに聞こえないのかもしれないと毎度反省(苦笑)。
右端が玉本英子さん、真ん中が社納葉子さん

 さて、当日は報告会開始の直前から猛烈な雨が降り始めて、会場に到着された方々はずぶぬれになって本当に気の毒でした。電動車椅子で来場されたかたは、「あまりの雨なのでたどり着くのか心配になった。めげたけれど、ウクライナの人々のことを思えばこれくらいのことは!と思って参加しました」とおっしゃっていました。

 玉本さんの今回の報告は市民の日常生活が活写されていました。玉本さん自身が取材した映像に加えて、現地の報道から入手した映像や現地からのSNS投稿の映像もあります。その中には、道端で無理やり引きずられて車に乗せられ強制徴兵される若い父親の姿もあり、彼の妻が幼児を抱きかかえながら「連れていかないで!」と泣き叫ぶ様子が映されていて、心が張り裂けそうになりました。このような強制連行は市民たちがこっそり撮影してネットに流したため大きな批判を浴びて、今では行われなくなったそうです。

 また、教室を追われて避難した生徒たちが学ぶ「駅のなかの教室」を玉本さんが取材した映像では、教師の「寛容が大事だと生徒に教えている」という言葉が戦時下では複雑な意味を呈している、とても重いものだと感じました。

説明がありません

 第2部では部屋の机をラウンド式に組み替え、ウクライナのお茶とお菓子をいただきながら交流会を開きました。多くの質問の手があがり、「どうしたらこの戦争を止められるのか。日本にいる私たちに何ができるのか、歯がゆい」という質問に同感します。答えはない、答えは簡単ではない、という玉本さんの解説を聞きながら平和への道のりの厳しさを痛感しました。

 報告会の最後に主催者を代表して社納葉子さんが、「4回目の会は戦争が終わったと報告してもらえることを願っている。今日みなさんが寄せてくれたカンパは玉本さんの取材費に使われる」と締めくくりました。

 豪雨を衝いて参加してくださった21名のみなさま、ありがとうございました。なによりも、戦地から貴重な映像を届けてくださっているフリージャーナリスト玉本さん、これからも幾重にも気を付けて取材を続けてください。(谷合佳代子)

 ※オプションとして、報告会後にエル・ライブラリーのお宝書庫の見学会を開催しました。資料解説をしながらたっぷり1時間以上、7名の方が堪能してくださいました。

<開催趣旨>

情報はタダじゃない。 フリージャーナリストと市民が直接つながって 市民自らジャーナリズムを支えよう」という主旨のもと、 有志で玉本英子さんの取材活動を応援してきました。
自腹と自己責任で紛争地を取材するフリージャーナリスト。 取材報告を聞き、次の取材のための費用をカンパし、 また報告してもらうという循環で取材活動を支えています。
ウクライナ取材は今年で3年目。 それはロシアの侵攻が泥沼化すなわち攻撃と殺戮が終わらないことを 意味しています。今回の取材は今年3月から5月までの3ヶ月に及びました。 ウクライナの人々の声を聴き続けた玉本さん。 その声を、現地の空気を、伝えてもらい、 ともに考え、語り合いましょう。
定員30名の小さな会です。
社納宛にメールにてお申込みの上、ご参加ください。
前半は映像を交えた取材報告、 後半はウクライナのお茶を飲みながら 玉本さんとの交流の時間をたっぷり取ります(終了予定時間17時) 。
ご参加、お待ちしています。
(主催者代表・社納葉子)

【玉本英子さんのプロフィール】

デザイン事務所勤務をへてアジアプレス所属。25年以上にわたり中東地域を中心に取材。04年ドキュメンタリー映画「ザルミーナ・公開処刑されたアフガニスタン女性」監督。イラク・シリア取材では、報道ステーション(テレビ朝日)、報道特集(TBS)などで放送。「戦火に苦しむ女性や子どもの視点に立った一貫した姿勢」が評価され、第54回ギャラクシー賞報道活動部門優秀賞。第26回坂田記念ジャーナリズム賞特別賞。