エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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 『追悼 志水紀代子さん』

 「女性・戦争・人権」学会の創始者(1997年5月)で呼びかけ人代表の志水紀代子さんが、2024年2月14日にご逝去された。享年83歳。

 9月28日に、「志水紀代子さんを偲ぶ集い」が大阪府高槻市で開催された。居住地の高槻・島本を中心に26名の呼びかけ人によって、「志水さんへの感謝の気持を紡ぎ、その遺志を継いでいこう」と準備され、100名余の方々が集い、志水紀代子さんの歩まれた道を語り合った。

 偲ぶ集いに向けて編集された『追悼 志水紀代子さん』をもとに、歩まれた道を辿りたい。

 1940年11月に生誕。大阪大学文学研究科哲学哲学史を卒業後、2011年まで、追手門学院大学文学部(後に人間学部)教員を務めた。

 ハンナ・アーレントの研究者として有名だが、「偲ぶ集い」では、「行動する研究者」として、志水さんが創設したり、中心的役割を担われた市民団体・グループの人々が、感謝の言葉とご功績を次々に語った。

 冒頭に述べた学会の創設だけでなく、1995年の国連北京女性会議に参加したメンバーと共に「高槻ジェンダー研究ネットワーク」を発足させ、高槻市の男女共同参画施策に提言を発し続けた。2006年には、「九条の会 高槻・阿武野」を発足させて代表に就き、2011年には「やっぱりここで暮らそう会」発足、代表を務め、地域の居場所コミュニティー・カフェ「えにし庵」をスタートさせた。2015年に「子どもたちと考える『戦争と平和』展in高槻」の呼びかけ人となって10年継続している。また、「辻元清美とともに!市民ネットワーク」代表も長年(2013~23年)担った。

 さらに、大学が所在する茨木市でも、茨木市生涯学習講座『人権講座・出会いの人間学』に30年余関わって講演を続け、卒業生以外にも深い影響を受けた人々が茨木市にも多いと言われている。

 偲ぶ集いや追悼集では研究活動の分野が深められなかったが、志水さんが創設に尽力された「女性・戦争・人権」学会の発足趣旨に注目しよう。

私たちは学会設立の目的として、これまでの男性中心の歴史が封じ込めてきた「女性に対する暴力」の究明を通して、支配・従属の権力構造を明らかにしていきたいと思います。身近な問題から地球規模の問題まで、個々に問題を提議し合い、討論する場をめざしています。個々人が自由に、主体的に活動していくことを原則に、既成の学会にはない開かれた論争の場にしていきたいと考えます

 発足から四半世紀近くたった2024年次総会においては、「『慰安婦』問題からパレスチナヘー「連帯」を構築する女性たち」のテーマで自由討論、シンポ「何が戦争を駆動するのかー加害の論理と抵抗の現場」が開催されている。

 まさに、発足時に意図された、「研究者と市民がともに運営し、活動する稀有な学会」として、日本のフェミニズム研究において注目すべき役割を果たしていると言える。

 志水さんの主要な著書・共著を記述して、本欄を閉じる。

★著書『家族の倫理学』(現代社規の倫理を考える第14巻)(丸善出版/2007年10月)

★共著『ジェンダー化する哲学 フェミニズムからの認識』(昭和堂/1999年11月)

 共著『ハンナ・アーレントとフェミニズム』(未来社/1001年6月6月)

 共著『ジェンダーの視点見る日韓近現代史』(梨の木舎/2005年5月)

 共著『「慰安婦」問題の解決に向けて 開かれた議論のために』(白澤社/2012年9月)

★講演録「今、なぜアーレントなのか?―映画『ハンナ・アーレント』と蔓延する『悪の凡庸さ』」(フォーラム労働・社会政策・ジェンダー例会報告集)(2014年2月講演)

伍賀 偕子(ごかともこ)

<書誌情報>
追悼 志水紀代子さん / 志水紀代子さんを偲ぶ会、2024年9月. 26㎝ 63p