『日本で初めて労働組合をつくった男 評伝・城常太郎』

 牧 民雄 (同時代社/2015年6月/A判322頁)

 「日本で初めて労働組合をつくった男は?」と問われて、この人の名が浮かぶ人は極めて稀で、日本史の教科書では、高野房太郎と習った人が多いかも知れない。
 本書の帯の紹介では、― アメリカ帰りの靴職人・城常太郎は盟友高野房太郎、沢田半之介らとともに「働く者の楽園」のために労働組合運動に情熱を燃やし尽した。日本近代労働運動黎明期を走り抜けた城常太郎の鮮烈な生涯 ― とある。

 著者は、城常太郎のひ孫にあたる在野の研究者である。偶然、ひ祖父の名を大学の講義で聞き、ひ祖母から「ひい爺さんはこの国の労働運動の『元祖』だったのよ」と何度か聞かされていたのを思い出し、「自分の人生の約半分を費やして」、全国の図書館や地方新聞など、膨大な資料を収集・分析して得た結論が、「城常太郎こそが、東京・横浜・神戸・大阪の四大都市に、誰よりも先に駆けつけて、近代労働運動の聖火を灯して廻った人物であった」ということである。その結論を綿密な実証研究によって導いていく論証は説得的だが、何よりも、黎明期の労働運動に賭けられた彼および仲間らの情熱と迫力が、読者を惹きつけ300頁を越える分量を一気に読ませる。

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