恵贈図書『出口王仁三郎』


 今回も、「自著寄贈のお願い」に応えてご恵贈くださった図書を紹介します。

 『出口王仁三郎』(でぐち・おにさぶろう)を翻訳された岩坂彰さんが、「宗教家の伝記だが、社会運動に関係のある記述があるので」との解説つきで寄贈してくださいました。

 出口王仁三郎大本教の教祖(開祖は出口なお)として知られています。戦前、二度にわたる宗教弾圧を受けました。彼はカリスマ的起業家の才能を持ち、大本教を大躍進させました。

 大本教といえば高橋和巳の小説『邪宗門』のモデルになったことを思い出します。『邪宗門』は実におもしろい小説でした。

 さて、本書では、出口王仁三郎を「カリスマ宗教起業家」と位置づけ、そのユニークな布教活動を分析していきます。なんだかマーケットリサーチや広告の参考になりそうな本ですね。王仁三郎は国際布教のためにエスペラント語を普及させたり、新しいメディアにいち早く飛びついたりと、進取の気性に富んでいました。

 本書については日経、読売の2紙に書評が載りました。「日経」の評者・松本健一氏(評論家)が「本書の特出すべきところは、明治以後の日本人が国家によって定められた「天皇中心の国家主義に画一的に支配されていた」という欧米的な見方(丸山真男をふくむ)に疑問を投げかけ、その疑問によって、大本教およびそのカリスマ的指導者であった出口王仁三郎に光をあてた点であろう」と評価していますが、その一方で、「著者は若干アカデミズムの研究文献に依拠しすぎている」との批判も書かれています(日経新聞、2009年8月9日)。

 また、「読売新聞」掲載の黒岩比佐子氏(ノンフィクション作家)による書評はこちらで読めます。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20090727bk04.htm
 「本書には、“歴史書に書かれない歴史”を象徴するような出口王仁三郎のスケールの大きな人物像が提示され、読後感は清々(すがすが)しい」との賛辞が。


 訳者岩坂さんによるコラムにはこの本の翻訳の裏話が書かれています。英訳された日本語文献を再度日本語に翻訳し直すときの苦労が具体的に書かれていて、興味深いです。
http://shuppan.sunflare.com/iwasaka/dai_15.htm


出口王仁三郎 : 帝国の時代のカリスマ / ナンシー・K・ストーカー著 ; 岩坂彰訳. 原書房, 2009

<出版社の紹介文から>
明治後期から昭和前期、京都の小さな新宗教団体を国際的宗教複合体=大本(おおもと)に成長させた「カリスマ的宗教起業家」出口王仁三郎
ナショナリストであると同時にインターナショナリストであり、伝統主義者でありながら当時の新しいメディア(レコード、映画など)を使いこなす近代性を持ち、右翼も左翼も受け入れたユニークな人物だった王仁三郎ひきいる大本は、当時爆発的に信者数を伸ばし、急激な近代化のひずみに直面していた人々の心をわしづかみにした。
本書は、気鋭の外国人女性歴史学者が「帝国」の時代に突入する当時の社会と、宗教者、芸術家、社会運動家ほか多くの面をあわせ持つ異才の軌跡を丹念に調べ、新宗教のカリスマの実像と、彼に「夢」を託した近代日本人のアイデンティティを重ね描いた野心作である。

 そしてもう一冊。同じく岩坂彰さんが翻訳された『ロボトミスト』も頂戴しました。こちらは当館の収集範囲から若干外れてしまうのですが、「一人の人間の中で、善と悪がどのように重なり合い、良い結果と悪い結果をもたらすのか」を追究する著者の態度には惹かれるものがあります。ロボトミーを広めた精神科医として悪名を馳せているウォルター・フリーマンですが、善悪はそれほど単純に分けられるものではない、という主張が著者ジャック・エル=ハイの基本姿勢です。
 「著者はロボトミーを擁護しているわけではありません。…著者はひたすら、フリーマンという人物が『どのように』精神外科的手法を追求したかを描いています。…現実は常に、『なぜ』に対して簡単な答えが見つかるほど単純ではないのです」(訳者あとがき)。

 450ページを超える大部な本で、読み応えはたっぷりです。本書もまた日経、読売の2紙に書評で取り上げられました。精神科医春日武彦氏による「読売新聞」の書評はこちらで読めます。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20091026bk0a.htm

ロボトミスト : 3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜 / ジャック・エル=ハイ著 ; 岩坂彰訳. ランダムハウス講談社, 2009