エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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『情報貧国ニッポン〜課題と提言』

図書館サポートフォーラムシリーズ)
山崎久道著 2015年5月 日外アソシエーツ発行 四六判 223頁

 『情報貧国ニッポン』という刺激的な書名は、どういう問題意識や視点から出てきたのであろうか。「はじめにー何が問題かー」では次のように述べている。
 本書での情報を「経済や企業経営、そして特に、さまざまな研究開発を支える高度な学術情報、医学情報、科学情報」としたうえで、日本は必要な情報の多くを輸入に頼っている。日本にも情報を生産する人は多数いるのに、現状は、それを蓄積して流通させる仕組みが弱体なので、当初の情報を、利用しやすい形に整理した情報を輸入して、それを毎日の研究や業務にあてている。
 さらに研究者の執筆論文を収録したジャーナル(有名学術雑誌)やデータベースの整備状況も、米欧に比べて極めて貧弱で、日本人にとって、科学技術分野の先端的な情報は、海外のデータベースや電子ジャーナルといった情報資源を通じて購入するところの「輸入品」だといい、日本が情報の輸入大国で、食糧やエネルギーと同じく自給率が低いと著者は指摘する。本書で紹介されるさまざまな情報源からの客観的な数値がそれを裏付ける。
 そして、それらの背景・理由として、「情報を整理してあとで使う」というような行為や仕事が冷遇されてきたことや、「情報を整理することに価値を見いだす」という根本のところでのコンセンサスがとれていないことなどを挙げている。

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