大阪空襲体験の記憶を引き継ぐために8月に「報告書」発行

 エル・ライブラリーに寄託していただいている大阪大空襲被災者運動資料の「報告書」が発行されました。発行団体代表の横山氏にこの「報告書」の意義について書いていただきましたので、ご紹介します。

 「毎日新聞」などでも大きく報道されて反響を呼んでいる、この報告書(総目次・索引)については、エル・ライブラリーでも10冊預かっています。1冊500円で販売中です。

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 以下、寄稿文です。

 

大阪空襲戦災被災者運動資料研究会(空資研)・横山 篤夫

 アジア太平洋戦争末期の大阪に対する無差別爆撃体験の記憶は、体験者の減少・高齢化の中で次第に失われようとしている。1970年代から始められた空襲の被災体験を語り継ぐ運動も、現在でも少数の関係者によって懸命に続けられている。しかし、戦争を全く知らない世代が多数を占め、平和教育を担う学校の教師もほとんどその実態を知らないというのが現状である。

 20余年にわたり、大阪で歴史の研究者と市民が共同して戦争と平和に関する研究活動を続けてきた15年戦争研究会には、大阪空襲の被災者運動を牽引してきた久保三也子さん(大阪大空襲の体験を語る会・以下「語る会」と略記)や伊賀孝子さん(大阪戦災傷害者・遺族の会)たちも参加しておられた。80歳代後半を迎えられたお二人ともに、次第に例会参加も困難になられ、運動の資料保管について不安を感じ始められた。相談を受け、15年戦争研究会のメンバーは、大阪の平和運動市民運動の歴史を語る貴重な資料を、保管・整理して調査し、公表することが必要と考え、実現のため有志で特別チームを作ろうということになった。こうして、2016年6月に大阪空襲被災者運動資料研究会(以下「空資研」)が立ち上げられた。

 先ずは資料を安全に保管できるスペースと、研究活動の会場が必要になる。この切実な課題に、趣旨を理解し会場の提供と大阪の社会運動の資料としての保管とをエル・ライブラリーが認めて下さり、空資研が活動できるようになった。

 はじめに久保さんと伊賀さんの聞き取りをして資料の寄託をお願いし、2016年冬までに主な資料をエル・ライブラリーに収納することが出来た。さらに関連資料も追加され、先ず「語る会」の資料調査・目録作りに取り掛かった。このリストを作る過程で、「語る会」が1971年から1997年にかけて編集・発行した『大阪大空襲体験記』(全9集)は、大阪市民が空襲の実態を報告した第一級の史料であり、今再び利用できるようにする取り組みの必要性が話し合われた。しかし、9冊の大部分は、1000部で自費出版されたものだったため、その時は大きく報道されてもその後所在が分からくなったものも多く現在の所在の確認も必要だった。

 昨年秋に全9集の総目次・索引を作ること、「語る会」が呼び掛けて集めピースおおさかに寄贈した空襲体験画のリストも掲載する事などを骨子に、空資研の「報告書」を作成することを決めた。全員が担当の体験記を決め、9冊の目次をまとめて一覧表にし、いつ、どこの、どんな体験が書いてあるかなどを書き出し、様式の統一をはかった。同時に「語る会」の歩みも要約してつける事、行政区別の体験記の索引を付ける事を決めた。また、体験画の作者別索引を作り、ピースおおさかの展示に使われているか、三省堂版の体験画集のどこに載っているか、その作者が体験記を書いている場合どの本に収録されているかなどの検索もできる表を付けた。さらに当時の交通機関・駅の図や、空襲被災地図、大空襲一覧表等を付けた。

 当時を知らない若い先生や、若い世代の人々が、この「報告書」を使って大阪を壊滅させた大阪空襲の実態を知る手掛かりにして欲しいという強い期待が密度の濃い作業を支えた。6月、7月には何度も臨時の研究会を開催し、8月1日に空資研報告書「大阪大空襲の体験を語る会編『大阪大空襲体験記』総目次・索引――付・大阪大空襲体験画一覧――」の刊行を実現することが出来た。この間、多くの空襲関係資料を持っているピースおおさか事務局に申し入れ、「語る会」編集の『大阪大空襲体験記』(全9集)を、ピースおおさか図書室に全巻揃えて常置することを要請し、その措置をするとの回答を得た。このことも『報告書』に紹介した。

 8月3日に府庁記者クラブで「報告書」の刊行を発表したが、その前日夕刊に「毎日新聞」が一面トップ記事で空資研の取組と「報告書」について大きく紹介した。連絡先として自宅の電話を紹介していたため、以後一週間に百件近い電話の申し込みがあった。その多くは80代、90代の空襲体験者からであった。「忘れられている大阪大空襲の体験記をよく復活させてくれた」という理解で激励し、この取り組みを称賛するものが多かった。そこでこれは検索のための手引きであり、体験記ではないと説明すると、それならいりませんと仰る方もあったが、それでも欲しいという場合も多かった。ご自分の体験を電話口で話してくださる方も多く、皆さん方の風化させてはいけないという熱い思いが伝わってきた。

先生たちの研修会で使いたいと20部の申し込みがあったこと、30代の堺の先生が記事を見て平和教育に使いたいと申し込みがあったことなど、空資研の期待した反応もあったが、残念ながら少数であるというのが現状である。

また、在日3世の方から、「祖母・母の空襲体験を聞いていたので。」という電話を頂き、以前から気がかりであった、「語る会」の空襲体験記には在日朝鮮人の体験記は無いこと、そして「語る会」以後大阪での空襲体験記が相当出ているがこれについても視野に入れた検討が必要なことなど課題も色々見えてきた。

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