エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

4月11日までのご来館利用の一部制限について(追記:変更あり)

※下記情報を変更しています。4月8日から5月6日まで休館します。常に最新情報をお確かめいただきますよう、お願い申し上げます。

 

 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当館のご利用は3月5日から4月11日まで下記の通りとします。当初、3月31日まで、さらに4月4日まで延長としておりましたが、再度延長します。

◆入館・閲覧等は事前予約のある方のみ
◆サポート会員さまには会員証をご提示ください
◆非会員のかたは来館に先立ち、ご利用日時と閲覧希望資料をご連絡ください
◆バザーは休止します
◆電話やメールによるお問合せは受け付けます<サポート会員への郵送貸出は可能

※エル・おおさか1階エレベーター前に手指の消毒薬が用意されていますので、ご利用ください

 状況は日々変化していますので、最新情報をお確かめのうえ、ご来館ください。ご利用のみなさまにはご不自由ご不便をおかけすることをお詫びいたします。

お問合せフォーム:https://shaunkyo.jp/contact/

電話:06-6947-7722

当館最新情報:https://twitter.com/Llibraryosaka

祝メーデー100年 連合本部のメーデー展示に当館資料も

 今年は新型コロナウィルス感染防止のため、各地のメーデーが中止に追い込まれ、開催方法の変更をめぐって労働組合関係者が頭を痛めているようです。

 そんな折ではありますが、今年は日本のメーデーが始まって100年の記念すべき年です。1920年5月2日(日)に、東京は上野公園で初のメーデーが開催されたのでした。

 さて、そのメーデー100年を記念して、連合本部の所在地「連合会館」1階ロビーで開催中の特別展示に、当館資料が活用されています。

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 上の写真がその全体像です。昭和初めのメーデーの映像なども流されます。その貴重な記録は当館が提供しました。

 下の写真は、当館所蔵の「種田鉄馬アルバム」から転載した、「1933年の大阪メーデー」です。物語風に配置された一連の写真は、生き生きと当時の労働者の集会やデモの姿を映し出しています。

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 このほか、メーデー会場で使われた鉢巻などもレプリカが展示されています(実物は当館所蔵)。

 当館が提供した資料以外に、ポスターやパンフレット、新聞などが展示されていて、小さなコーナーとはいえ、見ごたえたっぷりです。お近くの方はぜひお立ち寄りください。(写真はすべて連合提供)

◆テーマ「メーデー100年を振り返る 「連合アーカイブス」より」

◆主催:連合(日本労働組合総連合会

◆期間:2020年4月28日まで開催中

◆場所:連合会館 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11.

◆アクセス:https://rengokaikan.jp/access/

『社会運動のグローバル・ヒストリー 共鳴する人と思想』

田中ひかる編著(ミネルヴァ書房/2018/A5判298頁)

 社会運動のグローバル・ヒストリー

 本書は、19世紀から現代までに世界で現れた「国境を越える社会運動」に焦点を当て、歴史をグローバルに学ぶことを目的に、大学1年生向け講義のテキストを念頭に編まれている。

 本書での「社会運動」の定義は、― 社会にあるさまざまな問題を解決する、あるいは社会そのものを変革するために、議会や選挙といった狭い意味での政治的な制度の内部ではなくその外側で形成される、「普通の人々」による集合行為 ― とされている。

 編著者田中ひかる(明治大法学部教授)のほか、次の6名が幅広い社会運動の各分野を執筆している。

― 女性たちの社会運動=崎山直樹(千葉大講師)、国境を越える平和運動=竹本真希子(広島市大准教授)、移民ネットワークと社会運動=山口守(日大学教授)、マイノリティがつくりだす社会運動/難民による社会運動=山本明代(名大教授)、社会主義者アナキストによる社会運動=梅森直之(早稲田大教授)、働く人々の社会運動=篠田徹(早稲田大教授)―

 今日ではグローバルに認められている権利や制度(言論・集会・結社の自由、男女普通選挙権、民主的に選ばれた議会、社会保障制度、人種差別の撤廃、奴隷制度の撤廃、労働者の権利、女性の権利、LGBTの権利、先住民の権利、教育を受ける権利、子どもの権利)も、かつては主張するだけで政府から弾圧され、否定され続けてきたが、数百年間にわたり、世界各地で起きた社会運動を通じて、人類が獲得し、共有し、発展させてきたものである。その意味で、社会運動は、その時代の社会の「鏡」であり、「窓」である。そして、「過去と現在を結びつける預言者」である ―と。

 今ほんの一握りの「普通の人たち」しか声をあげてないように見えても、その運動は潜在的な重要性を持っている― と、「社会運動の歴史の学び」へ誘っている。

 各分野の記述を要約する字数と力量はないが、例えば、女性たちの運動では、1789年7月フランス革命における「人権宣言」で謳われているのは、ブルジョアジーの男性市民のみであって、これに抗議する女性たち7,000人がベルサイユに行進し、その勢いは海を越えてイングランドに波及し、そしてアメリカ独立宣言運動へ。1904年には「国際女性参政権同盟」の設立、第2次大戦後のアメリカにおける公民権運動では1964年の「公民権法」に性差別禁止条項が盛られた。70年代の第2波フェミニズムの世界的なうねりは、国連を動かし、「国連女性の十年」設定と女性差別撤廃条約に結実し、「女性に対する暴力は人権侵害である」という地平を獲得して、「女性に対する暴力撲滅」が国連総会で可決された。

 差別と抑圧の解消を求めた女性たちの社会運動は、女性の人権だけでなく、子どもや障害者の人権を考える重要な論点を提供し、20世紀後半において、平和運動を含めて重要な役割を果してきた―と、展開されている。

 1990年代まで、社会運動は大規模でピラミッド型の組織からなっていたが、インターネットなどの発展により小規模のグループや個人が水平方向で結びつくネットワーク型の運動が可能となった。

 2010年「アラブの春」に刺激され学んだ若者たちは、世界各地で行動を起こした。スペインでは、銀行と金融機関が作り出した不動産バブルに対して、2011年5/15に50以上の都市でデモを行い、マドリードをはじめ100都市での広場占拠に拡大した=「15‐Ⅿ」運動。2011年の「ウオール街占拠」、2014年台湾の学生たちが中国との自由貿易協定締結に反対して1か月間国会を占拠した「ひまわり革命」、同年、香港での民主的選挙を要求して4か月間中心街を占拠=「雨傘革命」、日本では、安保法制反対運動において、若者たちが、国会前や首相官邸前を抗議の場として、新しい運動形態を提起した。それらの共通項は、新自由主義への対抗であり、「われわれは99%である」という認識である。

 これらの社会運動は、インターネットの影響が大きいとは言えるが、それがなかった19世紀の社会運動においても、国境を越えた相互作用や共鳴が見いだされる。労働運動においてしかり、平和運動においてしかり、本書は、広い分野にわたって社会運動の歴史を紐解き、絶望的な状況下でも勇気と希望をもてることに繋げている。(伍賀 偕子〈ごか・ともこ〉元「関西女の労働問題研究会」代表)

【今だけ特別サービス】送料無料で図書とDVDを貸出

 新型コロナウィルスのせいで家から出られずストレスをためているサポート会員のみなさまに朗報です。ひごろのご支援に感謝して、当館の図書・雑誌を送料無料で郵送貸し出しします(雑誌の最新号は除く)。おひとりさま3冊まで、「お問合せページ」からご連絡ください。貸出期間は3週間です。
・2020年4月10日12:00お申込みまでの期間限定措置

・サポート会員様限定サービス

蔵書検索ページはこちら 

・貴重書など貸し出しできない資料もあります

・雑誌記事の複写郵送サービスも4月11日まで会員の送料無料(非会員は送料有料)

 

さらに! 映画DVDも送料無料で貸出します。

 下記のタイトルに限定して、4月10日12:00までにリクエストをお寄せいただいたサポート会員様にはおひとり2本まで送料無料で貸出します。貸出期間は1週間です。

<タイトル、制作年、制作者(出版者)>

・三池たたかいの記録 [1976] 三池炭鉱労働組合

・荒木栄の歌が聞こえる [2016] アートヒル

・坑道の記憶 炭坑絵師・山本作兵衛 [2015.5] TOブックス(発売)

・震災を語り継ぐ人々 名取市東日本大震災語り部」の映像記録 2015.3

・未来への記憶 名取市東日本大震災映像記録 2014.3

・ブラックバイトに負けない! クイズで学ぶしごとのルール 2014 アジア太平洋資料センター

ブラック企業にご用心! 就活・転職の落とし穴 2013 アジア太平洋資料センター

・外泊 [2011.1] FAV連連影展

・アブバとヤーバ [2011] エクリプス

・岩手は半歩歩き出す。 2011.3.11東日本大震災から : 永久保存版 2011 総合広告社(発売)

・三池の闘いと向坂教室 団結・抵抗・統一 [2010?] 林信男

・映像で見る賀川豊彦とその時代 2009.12 不二出版

死線を越えて 賀川豊彦物語 200- 雲柱社賀川豊彦記念・松沢資料館

・三池 終わらない炭鉱(やま)の物語 2008 シグロ(発売)

・雲の柱に導かれて 雲柱社の歩み 2008 雲柱社

 

◆ご希望が殺到した場合は発送が遅れる場合がありますが、ご容赦ください。

新着雑誌です(2020.3.31)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

月刊人事マネジメント 351号 2020.3.5 (201371481)

労働基準広報 No2021 2020.3.1 (201371440)

労働基準広報 No2022 2020.3.11 (201371382)

労働基準広報 No2023 2020.3.21 (201371416)

先見労務管理 No1625 2020.1.25 (2013713250)

先見労務管理 No1626 2020.2.10 (201371358)

労働判例 No1215 2020.3.15 (201371432)

労働法律旬報 1954号 2020.2.25 (201371457)

労働法律旬報 1955号2020.3.10 (201371267)

賃金と社会保障 1749号 2020.3.10 (201371234)

月刊人事労務 No372 2020.1.25 (201371291)

 

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蛾のおっさんと知る 衝撃の学校図書館格差 ~公教育の実状をのぞいてみませんか?〜

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    (株)郵研社ホームページより
  • あなたのお子さんの学びに寄り添うはずの学校図書館自治体によって信じられないような教育格差があることをご存知でしたか? その実態を蛾のおっさんと共に考えてみましょう。
  • 「こんな図書館は、花マルだね!」
    「こんな図書館はバツだね(涙)」
    子どもたちのための学校図書館を考えながら、蛾(が)んばって飛び回るのだ!

山本みづほ 著
四六判 218ページ
税別 1,500円

   蛾(が)のおっさん? 学校図書館? なんでエル・ライブラリーにそんな本が? とお思いのあなた、もちろん当館は労働専門図書館であり、学校図書館とはかなり相当だいぶ館種が異なります。しかし、この本を読み進むにつれて、じつは学校図書館の格差問題が、労働問題にも行きつくということがわかるのです。

 結論を急ぐ前に、本書の構成を見てみましょう。

 全体は5章に分かれていて、「蛾のおっさん」が全国学校図書館を飛び回って見分してきたことを山本みづほ先生に語り、みづほ先生はおっさんのつっこみを受けながら、自らの歩んできた司書教諭の仕事を語っていくという構成になっています。

 蛾のおっさんというのはおっさんの顔をした蛾のことで、図書館の書架(書棚)の奥でひからびているのがしばしば発見される、あの”蛾”と似ています。蛾のおっさんは好奇心が強く、とりわけ図書館が大好きなので、世界中の図書館を飛び回っています。ついにある夜、山本みづほ司書教諭のもとに全身白タイツづくめの姿で現れたのでありました。

 そもそも学校図書館とはなんでしょうか。小中学校と高校に設置されている図書館(図書室)のことです。学校図書館法によって設置を義務づけられています。12学級以上の学校には専門教員として司書教諭の資格もった教員の設置も義務付けられています。職員である「学校司書」の配置も努力義務とされています。

 法律の条文だけ読めば、日本国はかなり力をいれて学校図書館を運営しているように思えますが、実態はまったくそうではありません。実際には有名無実な司書教諭の存在、10校もかけもちさせられている学校司書の存在など、さまざまな問題点が本書であぶりだされています。

 もちろん、みづほ先生のように熱意と努力で学校図書館を素晴らしいものにしようと懸命に奮闘された方もおりますし、成果を上げている学校もあります。その格差が問題だと、みづほ先生は蛾のおっさん相手に語っています。

 みづほ先生が35年間取り組んできたさまざまなプロジェクトの歴史が目をひきます。落ち着かない生徒たちの心を朝の読書タイムが和ませ、読書の習慣をつけさせたというくだりでは、「ヤンキー」とみなされていたような生徒が一体どんな本を一生懸命読むようになったのか、具体的なタイトルを知りたいものだと興味をそそられました。

 最後の第5章「愉しきかなトランジッション」には、早期退職して「独立系司書教諭」となったみづほ先生が、いま学校図書館に何が必要か、なにをすべきかを提言しています。学校司書の劣悪な待遇については労働条件の向上を。忙しすぎる司書教諭は担任業務から解放して図書館に取り組む維持間の確保を、と。

 教育の根幹にかかわる読書習慣や自分の頭で考えるための知的資源にお金をかけない日本国の貧しい文教政策が見て取れます。国がそもそも問題なだけではなく、自治体によって大きな差が出ていることも事実で、図書館先進県の鳥取県などは手厚い図書館行政が実施されているということです。

 本書を読めば大規模校から離島の学校まで多くの学校を異動しながら学校図書館の向上のために尽力してきたみづほ先生の苦闘を知って、思わず声援したくなります。そして、特に心に残った「忘れられない学校図書館5つの物語」の節では、図書館が生徒にとって居場所として機能していたことがわかり、とても大事な場所であったことに感銘を受けました。生徒とともに教師も育っていくのです。

 いまや、図書館界は業界全体がブラック業界と化し、公共図書館員の7割以上が非正規職となっています(『日本の図書館 統計と名簿』2018年版より)。学校図書館もご多分に漏れず、司書教諭は正規職ですが司書教諭を助けて図書館運営の実際を担っていく学校司書は非正規職が多く、低賃金のうえに何校も兼務させられているのに交通費も支給されないといった問題が本書で指摘されています。

 労働者を大事にしない、教育を大事にしない、そういった施政が長い目で見ればどれだけ多くの知的財産を日本から失うことになるのか。暗澹たる気持ちになってしまいますが、蛾のおっさんとみづほ先生は希望を捨てません。

蛾「学校には図書館があることと、その学校図書館自治体によってものすごい格差があること、そしてその格差とはそこに配置された『人』の差であることをわしももっと伝えていくぞ」

山本「そして学校図書館にはできることがたくさんあり、ハナマル図書館は子どもたちを幸せにすること。逆に言うならバツ図書館は、子どもたちを不幸にすることをもっと私もつたえていくわ」(209頁)

(谷合佳代子・エル・ライブラリー館長、司書)

当館資料の活用成果「家族賃金観念の形成過程」

 当館所蔵資料を利用した研究成果がまた一つ公開されました。社会政策学会の機関誌『社会政策』に掲載された最新の論文です。

 法政大学の梅崎修先生を代表とする科研費プロジェクトの成果でもあります。

 

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  本稿の目的は、「人権争議」として名高い近江絹糸争議(1954年)朝護における近江絹糸紡績株式会社の「賃金体系をめぐる交渉過程を分析し、日本企業における「家族賃金」観念がどのように形成されたのかを考察すること」(p.113)です。

 そのために使われた一次資料が当館所蔵の「辻保治旧蔵近江絹糸労働組合資料」(通称辻コレクション)や、近江絹糸労働組合長浜支部長だった故中村幸男さんの日記や、彦根支部長(のち、組合長、彦根市議、滋賀県議)だった朝倉克己さんのオーラルヒストリー記録なのです。

 「家族賃金」とは男性一人の賃金で家族を養い、妻は家事育児に専念するというジェンダーバイアスがある賃金体系のことを指します。こういう男女差別的な賃金を、人権争議を経験した労組が提案するということは何を意味するのでしょうか。

 その実際を、一次資料から探っていくのが本稿です。その結果、「賃金体系をめぐる労使交渉の中で結婚や家族がどのように議論されたのか」が分析されています。

 興味深いことに、近江絹糸労組が提案した男女別賃金体系は上部団体である全繊同盟から批判され、結果的に男女同一の賃金体系に戻されています。

 ふんだんに引用されている労組の職場新聞や議事録等から拾える文言が、当時の社会意識を反映していて、とても面白いです。

 なお、114p.右段下から9行目「近江絹糸では、人権争議直前に文化サークル運動が活発化していた」の部分は、「直後」の誤記ではないかと感じました。誤記とまでは言えなくても、この部分は前後の文脈から「近江絹糸内には争議直前から文化サークルがあった」と誤読されるおそれがあります。その点は既に著者に伝えてあり、いずれ単行本としてまとめられるときに適宜補記されることとなるでしょう。(谷合佳代子)

「「家族賃金」観念の形成過程 ―近江絹糸人権争議後の交渉を対象に―」

共著:梅崎修(法政大学)、南雲智映(東海学園大学)、島西智輝(東洋大学)、下久保 恵子(当館)

社会政策学会編『社会政策』11巻3号、2020年3月. ミネルヴァ書房