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玉井金五教授退任記念論文集

『玉井金五教授退任記念号』(「經濟學雑誌」第115巻 第3号、大阪市立大学経済学会、2015年2月)B判327頁

 本誌は、玉井金五教授が2014年3月をもって、大阪市立大学経済学部を退任されたことを記念して編まれた論文集である(退任後も愛知学院大学経済学部教授として研究教育生活を継続)。

 玉井教授は、一貫して社会政策研究に従事されてきた社会政策学会の重鎮であり、その著書や諸論文に学んだ人は少なくないと思う。研究活動だけでなく、462名の日雇い労働者への貴重なヒヤリングを重ねた調査活動や、西成労働福祉センター理事・評議員をはじめ、大阪地方最低賃金審議会会長(現在も)などの「社会活動」に幅広く取り組まれてきた。わが大阪社会運動協会も理事、『大阪社会労働運動史』の編纂・執筆に、熱意をもって参画いただき、今もエル・ライブラリーの運営委員としてご指導いただいている。

 巻末には、玉井教授の最終講義「社会政策研究・教育40年」が収録されている。
 代表的な著書『防貧の創造―近代社会政策論研究―』(1992年、啓文社)と『共助の稜線―近現代日本社会政策論研究―』(2012年、法律文化社)(当ブログ内で紹介済み)刊行の背景やその論旨を中心に、研究活動の姿勢と軌跡が述べられている。また、日本の社会政策だけでなく、広く国際比較研究の方法論にも言及されていて興味深く、「国際的視点から日本の社会政策をみる眼を一層豊かにすることに繋がる」と結ばれている。
 そして最後に、300名を超える「玉井ゼミ」(学部・大学院)から多くの人材や研究者が輩出され、国内外で活躍されていることが具体的に名を挙げて、誇らしく強調されている。

 本誌は、そこで紹介されている「玉井ゼミ」の卒業生で現在活躍中の研究者の論文集に加えて、共同研究者・同僚による退任記念に寄せての書き下ろし論文14本で構成されている。字数の関係で個々について紹介できないが、以下に論文名をあげるにとどめる。いずれも示唆深い内容であり、関心のある論文を読むだけでも視野が広がる。

◆「婦人労働行政と労働組合―1950年代の労働省婦人少年局資料を手がかりとして―」
  大森真紀(早稲田大学社会科学部教授)
◆「もうひとりの井上友一―救済局の夢―」
木下 順(国学院大学経済学部教授)
◆「上海市における外来人口のローカリゼーションの現状およびその問題点―」
  鍾 仁耀(華東師範大学教授)
◆「<再生産労働>の社会化と家事労働―<労働>としての再考察―」
  服部良子(大阪市立大学生活科学研究科准教授)
◆「近代日本・現代アジアの経済史像―西洋モデルの盛衰―」
  大島真理夫(大阪市立大学経済学研究科教授)
◆「技術史と労働史の相補性について―機関車・機関車型ボイラにおける燃料、焚火および燃焼―」
坂上茂樹(大阪市立大学経済学研究科教授)
◆「熱帯と世界経済,1880〜1913年―W・Aルイス『熱帯の発展』論ノート」
  脇村孝平(大阪市立大学経済学研究科教授)
◆「Towards Better Family Child Care: Oregon and AFSCME Council 75」
  Charles Weathers (大阪市立大学経済学研究科教授)
◆「都市下層,<都市>社会政策,ロカリティ― 『大正・大阪・スラム』の空間論的意義―」
  長尾謙吉(大阪市立大学経済学研究科教授)
◆「日本社会政策進歩主義者の群像―1910年代を中心に―」
  杉田菜穂(大阪市立大学経済学研究科准教授)
◆「公契約条例と政策目的を反映した入札」
  吉村臨兵(福井県立大学看護福祉学部教授)
◆「介護保険制度における低所得者支援の現状と今後への示唆」
  森 詩恵(大阪経済大学経済学部教授)
◆「日雇労働者を対象とした戦前の社会事業:今宮保護所を事例として」
  大西祥惠(西南学院大学人間科学部准教授)
◆「戦前期日本における定年制再考―桂皋の「理論」と「実践」を中心に―」
  宮地克典(大阪市立大学経済学研究科附属経済学研究教育センター特別研究員)
                                   (伍賀偕子)