エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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『炭都と文化-昭和30年代の三池・大牟田-』

(※今回は寄贈本紹介を編著者ご自身に書いていただきました)

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 「萩尾望都SF原画展」が現在、全国を巡回中です。 http://hagiomoto-sf.com/

 先日、東京中野で鴨川つばめの「マカロニほうれん荘」原画展が開催され、往年のファンで賑わいました。http://korukun9951.hatenablog.com/entry/2018/05/20/194043
 大牟田がその活動拠点のひとつだった前衛美術集団「九州派」の再評価の動きが進んでいます。
https://artne.jp/column/387
 そして、地元大牟田では、「九州派が残した大牟田の美術教育 西部美術学園が歩んだ60年」展が開催されました。
https://www.facebook.com/events/1685899944864568/

 これらのニュースの主人公たちの出発点はいずれも昭和30年代の三池・大牟田にあります。当時「炭都」と呼ばれていた三池・大牟田が生んだ文化に今、新たな光があてられていると言っていいでしょう。

 昨年の5月と6月に大阪で開催された「炭鉱の記憶と関西―三池炭鉱閉山20年展―」。『炭都と文化-昭和30年代の三池・大牟田-』は、この展示会の「図録」に「炭都と文化―昭和30年代の大牟田」として収録されている論考に、新たな論考やエッセイ、資料を追加して刊行されました。
(発行:炭都と文化研究会、発効日:5月31日、A4版、本文158頁(内カラー32頁)、発行部数350部、非売品)

本書では昭和30年代の三池・大牟田の文化が、八つの章に分けて論じられています。

序章   大牟田万華鏡
第1章  総論
第2章 個人史
第3章 美術
第4章 市民文化のシンボル 大牟田松屋
第5章 映画
第6章 漫画
第7章 文学者と三池炭鉱
附録

以下、収録されている論考、エッセイのいくつかをご紹介します。

■総論
「未来への記憶-流民たちのコミューン」 荒尾市出身で元毎日新聞論説委員の池田知隆さんによる感動的な論考。
■個人史
「三川鉱炭塵爆発/魂の作曲家 荒木栄」 坑内電気工として戦後最大の炭鉱災害に遭遇した宮脇好光さんによる貴重なドキュメント。荒木栄との出会いの記録も。
■美術 
「三池と美術―激動に触発された表現者たち」 大牟田在住の若手美術史家、國盛麻衣佳さんが三池炭鉱を磁場とする画家たちの作品とその背景を丹念に分析した論考。
■映画
・「大牟田市と映画館―映画が生活の一部だった頃の話―」 大牟田には映画館が18館あった。大牟田在住の建築家、堤洋之さんによる当時の大牟田の映画館の詳細な解説。18の映画館の分布地図も。
・「森﨑東における炭坑と原発」 気鋭の映画評論家、上野昂志さんが『街の灯』、『党宣言』、『女咲かせます』三作品の分析を通じて森﨑映画の魅力に迫ります。
■漫画
萩尾望都と「キーロックス」 高校時代、萩尾望都とともに「キーロックス」同人だった藤井法行さんによる青春回顧録。当時の萩尾望都の貴重なイラストも公開。
・「トーマの心臓」論~許すことで得られる愛と生~」 西日本新聞文化部次長の神屋由紀子さんによる萩尾望都の代表作「トーマの心臓」論。萩尾望都にとって故郷大牟田とは?
・「大牟田漫画家名鑑―大牟田が生んだ22人の漫画家たちー」 大牟田在住の漫画コレクター、原田誠一さん渾身の力作。漫画家のふるさと、大牟田
・「中河のりお―漫画と青春、そして父として」 なぜ父は筆を絶ったのか?『見知らぬわが町 1995真夏の廃坑』の著者、中川雅子さんによる感動的なエッセイ。
■三井炭鉱と文学者
・「三池と文学者たち―1950-60年代の文化運動を中心に―」 若き文学研究者、茶園梨加さんが、戦後の三池炭鉱で炭鉱労働者たちが展開した文化運動を、炭鉱を訪れた作家たちの動向と合わせて丹念に分析した論考。

                   鵜飼雅則(炭都と文化研究会 )

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   残念ながら在庫がなくなりました(2019.7)

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新着雑誌です(2018.7.20)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1366 2018.7.15 (201314010)

月刊人事労務 353号 2018.6.25 (201314085)

労働経済判例速報 2344号 2018.6.20 (201313921)

労働経済判例速報 2346号 2018.7.10 (201313954)

労働判例 No1178 2018.7.1 (201314051)

労働判例 No1179 2018.7.15 (201313988)

労働法学研究会報 No2673 2018.7.15 (201314077)

労働法律旬報 1915号 2018.7.10 (201314044)

賃金と社会保障 1708号 2018.6.25 (201313871)

賃金と社会保障 1709号 2018.7.10 (201313905)

旬刊福利厚生 No2251 2018.7.10 (201313939)

旬刊福利厚生 No2250 2018.6.26 (201314028)

労働法令通信 No2491 2018.7.8 (201313962)

労働法令通信 No2492 2018.7.18 (201313996)

地域と労働運動 214号 2018.6.25 (201315538)

労働情報 No971 2018.7.1 (201315561)

 

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「炭鉱の記憶と関西―三池炭鉱閉山20年展」図録

2017年に開催した「炭鉱の記憶と関西―三池炭鉱閉山20年展」の図録です。

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炭鉱の記憶と関西 : 三池炭鉱閉山20年展

 大阪産業労働資料館, 関西・炭鉱と記憶の会編

 関西大学経済・政治研究所, 2017.3 166p

 

図録についてはエル・ライブラリー(06-6947-7722)までお問合せください(残部あり)。

 

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新着雑誌です(2018.7.13)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち、最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3954号 2018.7.13 (201314069)

ビジネスガイド No858 2018.8.10 (201313863)

賃金事情 No2765 2018.7.5 (201313889)

企業と人材 No1065 2018.7.5 (2.01313913)

人事実務 No1186 2018.7.1 (201313699)

月刊人事マネジメント 331号 2018.7.5 (201313947)

労働経済判例速報 2345号 2018.6.30 (201313723)

労働法学研究会報 No2672 2018.7.1 (201313855)

労働法律旬報 1914号 2018.6.25 (201313897)

労働基準広報 No1963 2018.7.1 (201313970)

労働基準広報 No1964 2018.7.11 (201314002)

 

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『教科書をタダにした闘い 高知県長浜の教科書無償運動』

村越良子、吉田文茂著 (解放出版社/2017年11月/四六判300頁)

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 現在、小中学校の児童生徒には、毎年新しい教科書が無料で配布される。教科書は文科省が作製した紙袋に入れられ、「保護者の皆さまへ」と題して、「この教科書は、義務教育の児童・生徒に対し、国が無償で配布しているものです。この教科書無償給与制度は、憲法に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、次代をになう子どもたちに対し、我が国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いをこめて、その負担によって実施されています(後略)」と呼びかけられている。

 教科書・教育費無償化を迫る運動は戦前から取り組まれ、戦後は各地で多様に展開されたが、歴史的、決定的な闘いは高知県長浜の教科書無償運動(1961年~63年)とされている。本書は、義務教育学校の教科書をタダにさせること(今では当たり前のようになっている)を国に制度化させた高知県長浜の闘いを、運動当事者の回顧と資料・文献・新聞報道等によって掘り起こした、歴史的な書である。内容の多くは、すでに雑誌『部落解放』702号~725号(2014年12月~2016年5月)に連載されているが、今回新たに発見された資料の検証を加えて、より幅広い人たちに向けて単行本として発刊された。

 著者の村越良子は、「長浜地区小中学校教科書をタダにする会」の発足時からの事務局員で、この運動の真っただ中にいた当事者であり(当時は岩松良子、現在は大阪市在住)、吉田文茂(ふみよし)高知市史編纂委員会近現代部会員で、高知県をフィールドとする部落解放運動史、社会運動史などの著書・論文を多く発表している歴史学者

 教科書無償運動の発祥の地=長浜は、高知市の南方に広がる地域で、町政施行を経て、高知市長浜となって、今に至っている。長浜には、被差別部落の原部落(通称「南部地区」)があり、長浜全体の人口の三分の一弱を占める半農半漁の漁村だった。仕事に恵まれず、多くは失業対策事業で働き、その日当は300円、教科書代は小学校で当時約700円、中学校は約1200円で、毎年3月は新学期への工面が大変だった(部落解放同盟中央本部「部落問題資料室」教科書無償闘争より)。1961(昭和36)年2月部落解放同盟長浜支部は教科書無償要求について論議し、教科書の不買運動を決定した。同時に第1回南区教育研究集会に提案して合意を形成した。この合意形成のスタートは、教員と地区の母親たちの学習会(塩谷学習グループ=勤評闘争の中で誕生した女性の読書会グループ)で、憲法26条2項に、「義務教育はこれを無償とする」ことが明記されていることを学び、権利意識に目覚めたことによると記されている。

 同年3月には、「長浜地区小中学校教科書をタダにする会」が結成される。第1回打ち合わせメモ(当時の岩松事務局員メモ)によると、構成団体は、落解放同盟長浜支部、南区民協、南区子どもを守る婦人の集い、市教組長浜分会、全日自労長浜分会、地区労で、後援を解放同盟市協と市教組に依頼するとされている。(この岩松メモは今回新しく発見された)

 なお、前年の1960年11月に高知市で開催された第6回四国母親と女教師の会では、教科書無償要求請願署名運動が提起されている。急速に地域の共闘が形成される背景には、高知県でも激しく闘われた日教組の勤評闘争を支援する地域共闘が、この地にその芽を育んでいたことが推測できる。

 長浜の父母たちは、ただちに市長、市議会、市教委に対して大衆交渉で迫り、その要求の正当性と迫力で事態を動かしていく。高知市議会は、小中学校の教科書を無償にするよう、内閣総理大臣や文部大臣あての意見書を決議して提出した。憲法を守る闘いへの確信に満ちた母親たちのゲタばき・割烹着姿の交渉の迫力は、行間からうかがえる。教科書不買の現地の意志は、数々の切り崩し(部落解放同盟と地区外との対立を助長する)を超えて、新学期から1カ月過ぎても崩れず、教科書なしをプリント授業で補う教員たちとそれを全体で支援する市教組の闘いが続いた。全校生徒のほぼ4分の1が無償になったのを機に1961年の闘いはひとまず収束し、62年63年も取組みが重ねられた。憲法26条を守る大義名分に国会も動かざるを得ず、63年12月に「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が成立した。四国の一地域の運動が一点突破、国の制度化を実現させたのである。本書は、その高揚感を謳いあげるのではなく、あくまで文献や資料にもとづいて検証する姿勢を貫いていて、多くの人々に伝承したい書である。

 ちなみに、高知市立南海中学校には、「教科書無償運動常設パネル展示室」が設けられ、「教科書無償発祥の地」の運動を保存公開している。大阪でも「栄小学校だより」№2(2018年4/11)に、「新しい教科書に込められた思い」として長浜の闘いを紹介し、「無償の教科書は、真剣に子どもの将来と向き合った大人たちの成果であることを心に刻みたいものです」と結んでいる。冒頭にあげた文科省の紙袋に書かれた内容と比較して、民衆の力を伝承したいものである。(伍賀偕子 ごか・ともこ 元「関西女の労働問題研究会」代表)

『打倒安倍政権 9条改憲阻止のために』

 五十嵐仁(いがらし じん) 著(学習の友社/2018年4月/161頁)

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 著者が学習の友社から上梓した政治学習のためのテキスト第3弾に当たる。つまり、同じテーマで三度目の出版になるということなのだから、事態は改善していないと見るべきなのだろうか。著者自身も「本書をもって最後の作品にしたいものです。もう良いでしょう」と「はしがき」で述べている。

 さて、これまでの「シリーズ」のタイトルは以下の通りだ。

「対決安倍政権」2015年3月

「活路は共闘にあり」2017年2月

 本書の内容はこれまでの著作と一部重複しつつも、2017年からの1年余りの間に起きた政治状況の大きな動きをとらえて、安倍政権が目指している「憲法9条の改憲」を阻止するためにはどう考え何をすべきかを訴えている。

 そのための現状分析が述べられており、とりわけ第1章に置かれた、2017年10月の総選挙結果の分析が興味深い。今回も与党は小選挙区制度に守られて、得票率ではさしたる変化もなく過半数も獲得していないのにも関わらず「圧勝」と言われた、と指摘する。同様の指摘は前書でもなされていた。有権者総数に占める自民党の得票率は25パーセントに過ぎないと。

 この1章にはこの間の合従連衡というか四分五裂と言うべきか新党乱立の動きが激しくわかりにくい読者にとって、「日本の主な政党の変遷(1990年代以降)」という系統図がついているのがありがたい。たった20年ほどの間に生まれた政党について、記憶にないものも多いことに驚く。

 第3章「安倍9条改憲をめぐる新たな攻防」は前書と重複する部分だが、よりいっそう叙述が豊かになった。改憲派というのは、必ずしも9条改憲論者だけではないという点が強調されており、「改憲」と「壊憲」は違うということが繰り返し述べられている。そして、2017年10月の総選挙によって改憲の動きは新たな段階に入ったという。すなわち、自民党はこの選挙で「憲法改正」を重点項目として挙げてきたのである。いよいよ9条改正に向けて 自民党政権がスピードアップを図っているので、改憲阻止のためには、改憲に伴う膨大なエネルギーや公金が無駄であり、それよりも「経済の立て直しと景気回復こそ最優先で取り組むべき課題」だと声を大にして訴えなければならない。大企業は利益を拡大しているが、一方で実質賃金の低下は4年間続いており、格差が広がっている。 と、具体的な数字を挙げて著者は生活最優先の課題に取り組むべきだと主張している。また、憲法9条を変えることによって自衛隊が戦争できる軍隊になれば、戦死者が出るのは必至であり、それについては過去のベトナム戦争イラク戦争での戦死者数の統計を引用して、日本が犠牲者を出さずに済んだのは9条があるからだと説明している。

 第4章では2017年7月の都議選の結果を分析し、安倍政権への批判が自民党敗北の大きな要因の一つであるとしている。森友加計問題にも言及しているがそこはさらっと経過をさらえる程度とし、あとは豊田真由子議員や稲田朋美防衛相などのスキャンダルについて言及して、安倍政権の体質が自分に近いものを優遇する「えこひいき」であることを糾弾している。

 第5章は安倍政権の軌跡を外交・基地問題から振り返っているが、なにぶんにも紙幅が限られているので概観にとどまる。

 本書は161頁というコンパクトなものであり、学習テキストとしてわかりやすさと読みやすさを旨として編集されており、さらに各章をそれぞれ独立して読んでも困らないようになっているので、学習会に使うのに適している。 

 巻末に細川孝・龍谷大学教授による著者へのインタビューあり。(谷合佳代子)

新着雑誌です(2018.6.29)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3953号 2018.6.22 (201313822)

賃金事情 No2764 2018.6.20 (201313715)

労働基準広報 No1962 2018.6.21 (201313624)

労働法令通信 No2489 2018.6.18 (201313657)

労働法学研究会報 No2671 2018.6.15 (201313806)

 

詳細な目次はこちら

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