エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

みんなで活かせる!学校資料

◆本書入手希望者に著者が郵送寄贈してくださるそうです。問い合わせ先は最下部をご覧ください◆

『みんなで活かせる! 学校資料 学校資料活用ハンドブック』村野正景、和崎光太郎編、京都市学校歴史博物館 2019.3 150p. 19cm

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 2017年4月に発足した「学校資料研究会」の知見を集めたのが本書である。学校資料とは、学校に関わるあらゆるモノやコトを指すという。学校資料研究会のWEBサイトには、「文書や公文書類、写真、教科書、考古資料、民俗資料、美術工芸品、教材教具、標本、児童・生徒の作品、P.T.A.や部活動に関するものまで、実に幅広いバリエーション」があるとされている(https://gakkoshiryo.jimdofree.com/)。

 本書には、それらの活用方法や実績、資料整理、資料保存の方法にいたるまで、とてもわかりやすく解説されている。大きさも新書判を少し大きくした程度のなので手の中に収まり、ページ数も手ごろ。読者は教師や学校司書だけではなく、生徒、卒業生、学芸員、地域住民に至るまでを対象とする。

 目次は以下の通り。

第1章 学校資料の魅力!

 あなたの学校に、博物館はありますか?

 授業を魅力的にする学校資料

 博物館に行ってみよう!

第2章 こんなに広がる、学校資料の可能性

 学校資料を学校に展示しよう! 学校内歴史資料室をつくる

 学校資料を授業で使ってみよう!

 学校資料を地域の施設で展示しよう!

第3章 学校資料の保存と整理

 何を保存・整理したらいいのか

 どうやって保存・整理したらいいのか

 本書を希望される方は、「冨岡さんを通じてハンドブックのことを知ったので読みたい」旨を書いてメールで以下までお問い合わせを。

 

577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1

近畿大学教職教育部

冨岡勝研究室内

学校資料研究会事務局

電子メール:gakkoshiryo@gmail.com

 

 

合評会、研究会など開催しました

先週行われた催し2つ(主催、協力)についてご報告。

社会運動史研究の現在地 ——『社会運動史研究』第1巻合評会

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社会運動史研究の現在地 ——『社会運動史研究』第1巻合評会(2019.5.10) 

5月10日(金)、エル・ライブラリーにおいて開催しました(20名)。

合評会案内 http://l-library.hatenablog.com/entry/2019/04/04/122744

 『運動史とは何か——社会運動史研究1』(大野光明・小杉亮子・松井隆志編、新曜社)の出版を記念しての合評会です。編集者の3名、コメンテータ―黒川伊織氏、伊藤綾香氏の発言を中心にフロアからもいろいろな応答がありました。合評会は今後も場所を変えて重ねて行われていく予定だそうです。

 

日本図書館研究会情報組織化研究グループ2019年5月月例研究会

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日本図書館研究会情報組織化研究グループ2019年5月月例研究会(2019.5.11)

2019年5月11日(土)(エル・おおさか南館)に開催され、当館が協力し、館長谷合佳代子とスタッフ下久保 恵子が発表しました。エル・ライブラリーと共同で「Ato M」(アーカイブズ資料の目録システム)を運用してくださっている櫻田和也さんにフォローしていただきました。
https://atom.log.osaka/index.php/


情報組織化研究グループサイトより http://josoken.digick.jp/meeting/news.html#201905

発表者 :
谷合佳代子氏、下久保 恵子氏(エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館))
テーマ :
個人コレクションの組織化 ――図書館の中のアーカイブズについて考える
概要:
個人コレクションには、個人アーカイブズ(手稿、日記、文書記録など個人の活動記録)が含まれる場合が多い。これらを従来の図書館資料と同じくNCRで採録すると、資料群の構造が見えにくいという弱点がある。そこで、アーカイブズ資料に特化した目録規則に準じることによってその弱点を克服できるのではと考えた労働専門図書館のエル・ライブラリーでは、近江絹糸労働組合員であった辻保治氏のコレクション目録について、このたびこれをISAD(G)2nd.による目録へと編成しなおすことに着手した。その過程で見えてきた問題点・課題を洗い出し、図書館の中のアーカイブズ資料目録をいかにして図書目録と統合するのかを考える。

 

新着雑誌です(2019.5.14)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

賃金事情 No2782 2019.4.20 (201341781)

労務事情 No1383 2019.5.1 (201341856)

企業と人材 No1075 2019.5.5 (201341724)

人事実務 No1196 2019.5.1 (201341757)

ビジネスガイド No871 2019.6.10 (201341732)

労働判例 No1196 2019.5.1 (201341708)

労働経済判例速報 2372号 2019.4.20 (201341815)

労働経済判例速報 2373号 2019.4.30 (201341765)

労働経済判例速報 2374号 2019.5.10 (201341799)

労働法学研究会報 No2692 2019.5.1 (201341849)

地域と労働運動 224 2019.4.25 (201341872)

賃金と社会保障 1728号 2019.4.25 (201341906)

労働情報 No981 2019.5.1 (201341823)

労働基準広報 No1991 2019.4.21 (201341880)

労働基準広報 No1992 2019.5.1 (201341914)

労働基準広報 No1993 2019.5.11 (201341716)

 

詳細な目次はこちら

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まちライブラリーブックフェスタ2019 in 関西はじまりました

 5月19日まで開催中!
 本を通して人と出会う、まちライブラリーの恒例のイベントに、エル・ライブラリーも参加しています。ブックスポットをめぐるスタンプラリーの場所になっていますので、ご来館くだされば、スタンプを押しますよ~!

machi-library.org

 

 連日古本市も雑貨バザーも開催していますので、ぜひお立ち寄りください。

 <連休中の特別開館>

4月28日(日)10:00~15:00

4月30日(月)10:00~17:00

5月2日(木)13:00~17:00

※連休期間中は一部の書庫の資料が出庫できませんので、4月26日(金)の17:00までに閲覧ご希望資料を下記お問い合わせページからご連絡ください。

http://shaunkyo.jp/contact/

 

新着雑誌です(2019.4.24)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3971号 2019.4.26 (201341674)

労務事情 No1382 2019.4.15 (201341526)

労働経済判例速報 2371号 2018.4.10 (201341609)

労働法学研究会報 No2691 2019.4.15 (201341633)

労働判例 No1195 2019.4.15 (201341666)

月刊人事労務 No362 2019.4.1 (201341468)

賃金と社会保障 1727号 2019.4.10 (201341492)

労働法令通信 No2516 2019.4.8 (201341559)

労働法令通信 No2517 2019.4.18 (201341583)

労働法律旬報 1933号 2019.4.10 (201341625)

先見労務管理 No1604 2019.3.10 (201341658)

先見労務管理 No1605 2019.3.25 (201341690)

 

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『アジア太平洋の労働運動 連帯と前進の記録』

鈴木則之著(連合新書21/明石書店/2019年1月/四六判284頁)

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 本書は、ICFTU(国際自由労連)とその後継組織であるITUC(国際労働組合総連合)とその地域組織であるアジア太平洋地域組織(ICFTU/ITUC-AP)の労働運動の展開とそこにおける日本(連合=日本労働組合総連合会)の役割を、歴史的に解説しており、「連合新書シリーズ」の21号とされている。

 著者は1999年から2017年までの18年間、ICFTU/ITUC-APの事務局に勤務し、1999年にICFTU-APの書記長に就任し、2007年にはITUC-APの書記長を務めて、2017年に退職するまで、国際労働運動の舞台で活躍してきた。出身はゼンセン同盟(当時)国際部長を経て、アジア繊維労連書記長兼務、現在は連合国際アドバイザー、UAゼンセン国際顧問、法政大学大学院客員教授を務めている。

 第1章において、「国際労働運動になぜ参加するのか」の設問に、「国際公正労働基準をつくり、実施するための共同行動」と規定していて、これが、本書の大前提である。また、国際的な労使関係に関わる仕組みについての解説も、数少ない学習テキストとなる。

 ICFTU(国際自由労連)は、1949年、第2次世界大戦後の東西対立が深まっている中で、世界労連(WFTU1945年結成)から自由主義国の労働組合が分かれて、「パンと自由と平和」を掲げて結成された(結成時は53か国4800万人とされている)。

 ITUC(国際労働組合総連合)は、2006年に、ICFTUとWCL(国際労連=前身は国際基督教労働組合連盟)が合同して設立され、2018年現在の組織現勢は、163国・地域、331組織、実人員2億300万人で、世界最大の国際労働組合組織として、ILOOECD等の国際機関でパートナーシップを発揮している。

 地域組織と地域委員会は、アジア太平洋、アフリカ、汎アメリカ、ヨーロッパにおかれ、アジア太平洋地域組織(ITUC-AP)は、34カ国59組織2300万人(実人員は、インドのインフォーマルセクターの組織化の急速な進展により6156万人と記されている)で、日本から加盟しているナショナルセンターは、連合のみである。

 第2章「各国労働運動の課題と挑戦」では、インドネシア、ネパール、ミャンマーカンボジア、中国、アラブ労働組合連盟が紹介されており、中には20年をこえる報告もあり、資料として貴重である。著者は「現場からの報告」と述べているが、ITUC-APが各国・地域にどのような方針で臨み関わったかの視点で系統的に概括できるのは、18年間の国際舞台でのキャリアだからこそと思う。

 どの記述もダイナミックで、資料豊富だが、特に興味深いのは、「共産圏の労働組合との関わり」について独自の接触を禁じていたITUCにおいて、対中国、中華全国総工会への方針についてである。「孤立政策から関与政策へ」の見出しにあるように、その方針転換に日本の連合が果たした役割が、1994年の山岸章・連合会長の意見書をはじめ継続した働きかけが記述されている。

 著者は本書のテーマを「組織調整の課題」としていて、本部と地域組織の関係のあり方を意識している。2004年に、前身のICFTU本部書記長が、「地域大会を廃止」し、地域本部書記長は地域総会で選出される現行規約を、本部執行委員会による任命制に変えるという提案、つまり、組織全体を中央集権的に再編成する提案をした。同年12月に第18回ICFTU大会が宮崎で開催される直前だった。直前の執行委員会に、連合の笹森清会長は、地域組織の自律性を否定するこの提案に対して、「宮崎大会を返上する」を賭けて反対論陣の先頭を切り、本部書記長提案は撤回された。メディアでは報道されていない、このような攻防が展開されていたことも、歴史を刻む貴重な記録である。

 ITUCが世界最大の国際労働組織であることはゆるぎない事実だが、1945年に結成されたWFTU(世界労連)については、欄外の注で「国際的にはほとんど影響力を持っていない」とされているだけで、検証も批判も述べられていないので、ここでの言及も控える。(伍賀偕子〈ごか・ともこ〉元「関西女の労働問題研究会」代表)

過労死・過労自殺の現代史 ~働きすぎに斃れる人たち~

『過労死・過労自殺の現代史 ~働きすぎに斃れる人たち~』

 熊沢 誠 (岩波現代文庫/2018年12月/文庫版435頁)

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 本書は、2010年に岩波書店から刊行された『働きすぎに斃れて―過労死・過労自殺の語る労働史』の現代文庫版であるが、各事例の2010年後の推移や2018年に強行採択された「働き方改革関連法」へのコメントも含めて、「現代文庫版へのあとがき~過労死・過労自殺の現時点」が加えられて、より深みを増している。

 原本は、企業社会のしがらみや「強制された自発性」に絡めとられながら、限界をこえるまで働き、過労死・過労自殺した労働者の50を超える事例(80年代からおよそ2007年頃まで)について、遺族の告発手記や裁判記録などを丁寧に分析して、ニッポンのいびつな社会構造に迫り、「重層的な要因を帰納法的に考察している」。

 80年代「過労死」が社会問題として浮上し、不名誉にも“カロウシ”が国際用語として出回りはじめたこの時期に並行して、労働時間法制が変形労働時間制をはじめ、解体の道を急速に辿る労基法改悪が重ねられてきて、憤りを抑えがたい。そのような時期に刊行された原著の意義はすこぶる大きな役割を果たしたと思う。

 近年、過労死・過労自殺は減ることなく、若者や女性に普通のことになった非正規雇用化と差別化が深く関わって、表面に浮び出ない事態も増えている一方、“働き方改革”がはやり言葉のように謳われているなか、品切れとなっていたこの原著が読みやすい文庫版として刊行されたことは、意義深く喜ばしいことである。

 著者は、――過労死・過労自殺の重層的な要因の論理化にあたり、働かせる企業労務、労働行政の不備と労働組合の機能不全、社会保障の日本的性格を考察した上で、「強制された自発性」に閉じ込められた労働者の主体意識のあり方に注目した。あえて労働者の主体性を凝視したのは、現時点の労働組合の国際相場を割る機能不全と、本来の組合運動のもつ可能性への労働者自身のあきらめとの、相互依存関係の克服を希求するからだ――と強調している。

 とりわけ、「労働行政の不備と労働組合の機能不全」については、終章の「過労死・過労自殺をめぐる責任の所在」の3節にリアルな事例検証を通じて告発されている。多くの事例検証を追っていくと、労働組合はどこに出てくるのか、むしろ労災認定の証言などでは企業と一緒になって抑える側に居て、労働運動に関わってきた者としては苦しくなるような場面がいくつも重なる。

 著者は労働組合について、――今では組合員である正社員についても、一人ひとりのノルマ、残業、サービス残業などには、ほとんどタッチしなくなっている――と指摘し、そして、―企業に求められる能力と成果の内容と水準へのノンエリート的規制、人事考課による労働条件格差の限定を含む「個人処遇」のチェック、労働者が自分に割り当てられた労働にまつわる苦しみをいつでも訴えることのできる組合運営の慣行構築――を提起している。

著者は、――過労死・過労自殺を労働現場で根絶するためには、労働組合こそが「個人の受難にどこまでも寄り添う」思想と行動を取り戻すことがやはり不可欠だという見果てぬ夢を追い続ける――と述懐している。この「希求」が、苦しくなるような事例検証も含めて、本書に貫かれていて、読者を以下の言葉に誘ってくれる。

 ――働く人びとの主体性は、命と生活を守るためには、仕事のありかたについて発言できる、個人の受難に寄り添うことのできる連帯の労働組合運動の再構築に発揮されるべきであろう。普通の労働者と市民がそう気づくとき、長らくただ見送り続けてきた過労死の葬列の途絶える日がきっと訪れる――。(伍賀偕子<ごか・ともこ> 元「関西女の労働問題研究会」代表)