エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

レッド : 先人たちの闘いの成功と失敗に学び現在に生かそう

『レッド : 先人たちの闘いの成功と失敗に学び現在に生かそう』
  大庭伸介著  社会評論社  2024.8

 まずは、労働運動家としての大庭さんの長年のご経験に、心より敬意を表します。そのうえで、大庭さんが本書に込められた「現在に生かそう」という願いが、現在の労働者には、なかなか受け止められていない現実も多く目にしています。

 たとえば、着替え時間を労働時間に含めないことや、15分未満の労働時間を切り捨てることなど、私が副業で通っていた飲食店などでは当然のこととなっており、労働者の側もそれに同調しているのです。私が「これ労働基準監督署に通報したら、ちゃんと未払い賃金として請求できるから、やってみようよ?」と同僚の同年代の女性パートさんに声をかけても「雇ってくれてるだけありがたい」とか「もめたくない」とかでうやむやになりました。でも、それは労働者の意識の低さだけの問題でしょうか? 中小零細の短時間労働者に向き合ってこなかった運動側の問題でもあるように思います。

 本書の白眉は、「川奈ホテルのリレー式ストライキ」です。組合つぶしにかかる会社側に対して、ゴルフ場のキャディーさん(ほとんどが女性でしょう)や下請けさんも組合に加入してもらい、5年におよぶ長期闘争に勝ち抜いたこの事例は、労働者が労働者としての権利意識を獲得していくなかで、正規雇用であるのか非正規雇用であるのかは、あまり問題ではないことを示しているように思われてなりません。 

 末筆ながら、大庭さんのご健康とご長寿を、大阪の地よりお祈りしております。(当館特別研究員・黒川伊織)

私たちの大先輩たちは、とりわけ戦前については、現在では想像もつかないような困難な状況下で、さまざまな闘いを展開してきました。ときに勝利することはあっても、ほとんどの場合は敗北に終わっています。しかし、その闘いを我が身に引き寄せてとらえかえせば、実に多くの教訓を引き出すことができる。・・・労働運動の歴史を総括し、私たちの共有財産として継承・発展させることが、今ほど求められているときはないのではないでしょうか。(本書「まえがき」から)
<目次>
第Ⅰ部 先人たちの歴史を現在に生かそう【戦前篇】
⑴ 資本の横暴に抗う女性たち─「泣きの涙」から闘う主体ヘ
⑵ ストライキ時代が到来─日本経済の心臓部に闘いの炎
⑶ 左翼労働運動が登場─全戦線を牽引して大活躍
⑷ 在日朝鮮人労働者が奮闘─劣悪な環境、差別と虐待に抗して
⑸ 全国で米よこせ運動─「満州事変」下で左翼が柔軟に対応

第Ⅱ部 先人たちの歴史を現在に生かそう【戦後篇】
⑴ 怒濤の如き労働者の進撃─悔やまれる〈革命の逸機〉
⑵ 延べ六〇〇万人がゼネストに決起 破防法の団体適用を実質不可能に
⑶「あれっ!?  キャディーが消えた」─川奈ホテルのリレー式ストライキ
⑷「革命の子」をめぐる総労働と総資本の対決─戦後労働運動の分水嶺・三池争議

第Ⅲ部 米騒動から百年、日本史上最大の民衆蜂起に学ぶ
⑴ 井戸端会議から全国一〇〇万人の内乱へ
⑵ 軍隊の鎮圧に抗する虐げられた人々
⑶ 内閣を倒した民衆の歴史的な大勝利
⑷ 民衆の力で〝冬の時代〟に終止符を打つ
⑸ 怒りを行動に組織した地域社会の連帯

第Ⅳ部 岸本健一著『日本型社会民主主義』についての覚書

(社会評論社のウェブサイトより)