読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

不当労働行為と闘った大阪市労連4年間の記録:まっとうな労使関係の再構築にむけて

f:id:l-library:20170228105023大阪市労働組合連合会、自治労大阪府本部、自治労・市労連弁護団(2016年4月/B5判78頁 付属資料CDあり)

 本書は、2011年12月の橋下徹大阪市長(大阪維新の会)が誕生した直後から、彼が大阪市労働組合連合会(以下、大阪市労連)及び関係労働組合に対して矢継ぎ早に攻勢をかけた「不当労働行為」、労働組合の存在基盤を揺るがすような攻勢に抗して闘った4年間の記録と獲得した成果の意義をまとめた記録である。

 本書に集約されている橋下市長の所業は、以下の通りである。

  • 2012年1月、組合事務所退去通告及びそれについての団交拒否
  • 同年2月10日 職員強制アンケート調査
  • 同年2月29日 チェックオフ廃止通告
  • 同年6月29日 罰則として懲戒免職・停職・減給・戒告を加えた職員の政治的行為の制限に関する条例(職員基本条例)案、政治的中立組織活動条例案、労使関係に関する条例案を市会に提出
  • 7月27日⇒ 大阪市会において 職員の政治的行為の制限に関する条例、政治的中立組織活動条例案、労使関係に関する条例が可決成立

 これら一連の攻勢は、憲法、労働法、地公法に保障された労働者と労働組合の基本的な権利を剥奪するもので、到底容認できないと、大阪市労連及び関係労働組合は、すぐさま労働員会申し立て及び裁判所に対する訴訟提起を通じて反撃した。

 その結果、2015年12月16日の強制アンケート事件高裁判決までに、大阪府労働委員会命令が6件、中労委命令が4件、大阪地裁判決が2件、大阪高裁判決が2件合計14件にのぼる命令及び判決すべてにおいて、大阪市の違法行為が橋下市長在任中に認められて、確定している(ただし、チェックオフ廃止通告を不当労働行為とした中労委命令については、大阪市は国を被告として取り消し訴訟を提起している)。

 本書では、労働組合と共に闘った自治労・市労連弁護団ら9名が、それらの成果を項目ごとに丁寧に各論解説し、大阪市労連の闘いだけに留めず、普遍的な意義にまで高めていて、学びの多いテキストとなっている。(冒頭の「お礼と決意」の文章の冒頭の謝意に、「大阪労働者弁護団等、多くの弁護士団体の皆様」がトップに記されている)

総論「全ての事件で大阪市の違法行為を認定」に続いて、各論では、◆職員強制アンケート支配介入事件=「アンケートを中止させた画期的な府労委勧告、◆職員強制アンケート損害賠償請求事件=「憲法上の権利を侵害した違法行為」、◆組合事務所団交拒否・支配介入事件=「大阪市には明白な不当労働行為意思があった」、◆組合事務所使用不許可処分取消請求事件=「司法の怒り」、◆チェックオフ廃止支配介入事件=裁判所において最後の勝利を」◆大阪水労・病院労組協約破棄支配介入事件=「真摯な団交の積み重ねが、勝利命令を導く」、◆特別顧問・参与報酬支払住民監査請求=「特別顧問等への謝礼の支出負担行為は違法」と、続く。

 そして、大阪市労連と各関係組合の代表が、「発刊にあたって」と「決意を新たに」で、闘いの意義と今後の課題について述べている。

 さらに、この闘いが大阪市労連に留まらない全国的に注目すべき意義をもつ闘いであることを示して、自治労本部の委員長、連合大阪会長に加えて、労働法の第一人者である西谷敏・大阪市立大学名誉教授が「運動の力で違法な組合攻撃の一掃を」というコメントと励ましを寄せている。その意味では、どのような反撃の運動を組織したのか、「上に従う」風潮に対して労働者の権利意識を喚起する討議をどう組織したのかなど、職場や運動の記録が合わせて欲しいと思った。

 かつて公務員労働者や労働組合のナショナルセンターが営々と築いてきた、基本的人権、労働者・労働組合の権利を、一政治家(維新の会の政治姿勢)によってあまりにも簡単に破棄される無謀さに対して、憤りと同時に、労働運動に対する無力感も広がりつつあった事態を憂慮していた人びとが多かったと思う。本書は、それらの憂慮に対して「闘いこそが勝利への道である」ことを再確認させてくれる記録である(伍賀偕子:「女の労働問題研究会」元代表)。