エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第17回 職場新聞(10)『じんし』その1

f:id:l-library:20210908153011p:plain

『じんし』創刊号1面

 『じんし』は、綿・スフ紡績仕上職場の職場新聞で、1956年12月に創刊され、辻資料には、創刊号から7号までが収められている。

 仕上は綿・スフ紡績の最終工程で、彦根工場の各職場の内、最も広く、人数の多い職場であった。前工程の精紡から送られてきた管糸を製品の最終形態である「チーズ」(円筒形)、「コーン」(円錐型)、「綛」に巻き上げる。 

 単糸のまま巻き取る場合は捲糸機にかけ、チーズに巻き上げた。合糸仕上の場合は、2本の糸を合糸機であわせた後、撚糸機で撚りをかけ、最後は綛場で綛に巻き取った。いずれの場合もコーンに仕上げることがあった。これらは「台持」「台付」と呼ばれる機械担当の女子労働者中心の職場で、「捲糸・合糸」「撚糸」「綛場・コーン捲き」の三つの組で構成されていた。他に、各製品を集散場所へ運び、検品や数量確認、梱包指示をする「丸場」、製品を梱包する「荷造」を加え、全部で5つの組が置かれていた。

f:id:l-library:20210908153100p:plain

捲糸機(朝倉克己氏提供、近江絹糸彦根工場、1955-1957年頃)

f:id:l-library:20210908154450p:plain

荷造(朝倉克己氏提供、近江絹糸彦根工場、1955―1957年頃)

 『じんし』の創刊当時、会社側から班単位で割り当てられていた捲糸機の持ドラム数の引き上げと荷造担当の減員が申し入れられており、特に3号(1957年2月発行)までは、このことに関する記事が多い。

みんなで討議しよう 会社の人へらし政策を打ち破るために!!

 最近会社は私達一人一人の作業量に余裕を生じていると云う事を理由に「人へらし」の政策を私達の職場に持ちよつて来ています。この「人へらし」をタテにした生産性向上がどのような形で表れて来ているのでしょうか。

これは先づ捲糸のドラム持台数の増加なのです。現在の百十ドラムから二百二十ドラム(注1)にすると云うのです。もちろん多少回転数は下げると云っているが問題にならない。もう一ツは男子の荷造りの人へらし、現在十六名でやっているのを十二名にへらすと云うのである(後略)」

『じんし』創刊号1面(1956.12.10)より

この内、持ドラム数変更については、『第三回支部大会報告書及議案書』(1957年6月)に、1956年11月15日、会社より現行の持ドラム200、回転数470を持ドラム220回転数390に変更申し入れがあり、職場討議により反対を決定、会社との話合いは、現在もまとまっていない旨の記事がある。荷造の減員についても、同書の別冊であると思われる「支部報告」の彦根支部の箇所に「深夜廃止に関連し、本部よりの指令もあり現状の 人員で作業するよう会社に回答するとの記事がある。

 なお、4号(1957.7.8)以降、これらの問題に関する記事は見られない。銀行資本と夏川社長の対立による金融の行き詰まりにより、1957年9月には綿紡部門は操業停止に追い込まれており、生産関係の問題は一時棚上げになったと推測される。

  • (註1)後述のとおり、組合支部資料によれば、持ドラム200を220に変更となっている。なお、『じんし』2号には持ドラム210本を220本に変更という記事が見られ、統一されていない。
  • 仕上げの工程や仕事の内容については、仕上職場で働いておられた朝倉克己氏にご教示を得た。感謝いたします。(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

新着雑誌です(2021.8.23)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4019号 2021.8.1・27 (201411774)

賃金事情 No2831 2021.8.5・20 (201411808)

ビジネスガイド No907 2021.9.10 (201411782)

月刊人事マネジメント 368号 2021.8.5 (201411816)

労働判例 No1244 2021.8.1・15 (201411980)

労働基準広報 No2073 2021.8.21 (201411840)

 

詳細な目次はこちら

続きを読む

緊急事態宣言中の運営について(8月19日)

 大阪府では9月12日まで緊急事態宣言が延長されました。これに伴う当館の運営は下記の通りとします。

・ご来館利用は原則として予約制とします。閲覧希望の資料を予めお知らせください。
・土曜日の予約制開館については、8月21日・28日、9月4日・11日は休館します。
・マスク着用、手洗い・手指の消毒については引き続きご協力をお願いします。

ご不便・ご不自由をおかけしますが、図書館サービスはできるだけ維持しますので、ご理解ご協力をお願いいたします。

 ご来館前に最新情報をご確認ください。

 Twitterhttps://twitter.com/Llibraryosaka

 開館カレンダー:https://shaunkyo.jp/ の下部にあり

大阪空襲被害者の会報が復刻発行されました

  当館に寄託されている資料を基に、新たに大阪大空襲の被害者運動に関する資料目録と会報の復刻版が掲載された冊子が刊行されました。詳しくは下記「朝日新聞」記事(2021.8.13夕刊)をご覧ください(有料会員記事なので全文を読むためには会員登録が必要です)。

 ※8.16追記、毎日新聞にも掲載されました↓

mainichi.jp

 冊子は大阪空襲被災者運動資料研究会(空資研)編集・発行の『大阪戦災傷害者・遺族の会と代表伊賀孝子関係資料』です。郵送による入手をご希望の方はkushiken.osaka@gmail.comまでメールで(送料込み1370円)。

 当館でも若干数を取り扱っています(1セット1000円)が、ご来館の方に限定しています。閲覧ご希望の方はご来館予約をお願いします。

 来館予約:お問合せ - エル・ライブラリー

digital.asahi.com

新着雑誌です(2021.8.12)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

人事実務 No1223 2021.8.1 (201401445)

企業と人材 No1102 2021.8.5 (201401452)

ビジネスガイド No906 2021.8.10 (201401601)

労働基準広報 No2071 2021.8.1 (201401486)

労働基準広報 No2072 2021.8.11 (201401510)

労働経済判例速報 2450号 2021.7.30 (201401387)

労働経済判例速報 2451号 2021.8.10 (201401411)

賃金と社会保障 1781号 2021.7.10 (201401544)

賃金と社会保障 1782号 2021.7.25 (201401577)

 

詳細な目次はこちら

続きを読む

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第16回 職場新聞(9)『ラップ』その2 

 『ラップ』創刊号には職制との軋轢についての生々しい記事が見られる。1号3面には、「M氏ラクガキ帖を破り捨てる」という記事があり、職場に置かれたらくがき帖に、名指しで非難文書が書かれているのを見た職制がそのページを破り捨てる事件があったことがわかる。

f:id:l-library:20210802135812p:plain

『ラップ』創刊号3面

 そのほかにも、同号には、「便所まで時間、回数を制限される」「時間になってから手を洗うようになっている」「組合大会や職場会にもっともっと、協力してもらいたい」「有休や、生休をもらう時に、今まで気持よく休ませてくれたことがありますか」「主任さんは私らと一緒に話すのがバカくさいような言い方をする」等職制に対する不満記事が多い。一方「貴方は会社にあっては中堅幹部の紳士として、又組合に於いては指導的立場にある斗士であろう。」というような記事もある。

 職場新聞で「職制」と表現されているのは各職場に配置されている係長、主任、組長をさし、彼らは職場における管理職であると同時に組合員でもあるという微妙な立場であった。

 この種の事件はらくがき運動が始まった頃から起っており、組合員同志や職制に対して個人的な中傷が書かれるため、職制が、らくがき帖を隠したり、らくがき帖が破かれたり、赤鉛筆で消されることもあった。

 『ラップ』創刊時、編集に携わった白石道夫氏によると、この時期は、争議後2年しかたっておらず、争議前、旧組合に属していた係長など職制と一般労働者との間にしこりが残っていたこと、1956年半ばから会社側の締め付けが厳しくなり、職制が会社の指示を職場へ持ち込んでくることの影響が見られるという。

 一方、この混打綿職場の問題については、『職場新聞代表者会議のまとめ』(1957)に次のような報告が見られる。

「混打綿ではじめて新聞を出した時、職制に対する批判が生々しい感情のまゝで圧倒的に多くあがってきた。そのまゝ新聞に編集し職制にみせ職制のいい分も聞いた。そしてそれを編集しつぎにその反響をみんなにらくがきしてもらい再び新聞にとりあげた。これを積み重ねることによって解決の方向へ向つている。」

 実際の新聞でも3号以降(2号欠)、職制批判の記事はほとんど見られなくなっている。

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

 混打綿職場の状況等については、当時、同職場で働いていた白石道夫さんにご教示を得た。感謝いたします。

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

緊急事態宣言中の運営について

 8月2日~8月31日まで、大阪府に緊急事態宣言が発出されることとなりました。これに伴う当館の運営は下記の通りとします。

・ご来館利用は原則として予約制とします。閲覧希望の資料を予めお知らせください。
・土曜日の予約制開館については、8月7日のみ10~12時開館館。8月14日、21日、28日は休館します。
・マスク着用、手洗い・手指の消毒については引き続きご協力をお願いします。

ご不便・ご不自由をおかけしますが、図書館サービスはできるだけ維持しますので、ご理解ご協力をお願いいたします。

 ご来館前に最新情報をご確認ください。

 Twitterhttps://twitter.com/Llibraryosaka

 開館カレンダー:https://shaunkyo.jp/ の下部にあり