エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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玉井金五教授退職記念号(愛知学院大学『経済学研究』10巻2号)

 当法人が40年をかけて編纂発行を続けている『大阪社会労働運動史』の第1期(第1~3巻)からずっと執筆していただいている玉井金五先生が2022年3月に愛知学院大学を退職され、その退職記念号がこのたび刊行されました。

 玉井先生は社会政策学の泰斗であり、社会政策学会代表幹事も務められました。『大阪社会労働運動史』では第9巻で企画委員(同代表)、現在編纂中の第10巻では編集委員(共同代表)を務めていただいています。また、当法人(大阪社会運動協会)の理事にも就任されていました(2006~2012年)。

 玉井先生は1980年から2014年まで大阪市立大学(現・大阪公立大学)の教員であり、2014年から2022年まで愛知学院大学で勤められました。

 退職記念号(2023年3月)では、ご退職に当たっての講演録「愛知学院での研究・教育を振り返って」と研究業績目録などが掲載されています。

 講演録の中で玉井先生は、愛知学院大学で十分な研究環境を整えてもらえたこと、その結果、『共助の稜線』の増補版を出版できたことが大きな成果と述べられています。そして当協会の『大阪社会労働運動史』は、社会・労働面は言うに及ばず、行政、産業、経済、技術の分野も視野に収めている、類書が存在しない大きな事業であると、その意義を高く評価されています。

 いっぽう、教育では当初苦労されたことが述べられています。特に英書講読は思うように成果が出なかった模様です。しかし、ゼミは大きな成果を上げて、学内で表彰される成績優秀者を輩出したことが誇らしく語られていて、読んでいるわたしもうれしくなりました。最後は、愛知学院大学が東海地区大学中のランクを下げている現状を憂うとともに、飛躍のチャンスは経済学部にあると鼓舞されています。

 ところで、玉井先生が2014年に大阪市立大学を退職される際の講演録が『経済学雑誌』115巻3号に「玉井金五教授最終講義 社会政策研究・教育40年」として掲載されています。玉井先生の研究歴が学生時代に遡って語られており、愛知学院大学の紀要よりもかなり詳しいので、社会政策学史に興味のある方には併せてご一読をお勧めします。

 なお、愛知学院大学『経済学研究』本号には、玉井先生の教え子であり今では大学教員となられた方々、特に『大阪社会労働運動史』執筆者でもある吉村臨兵、森詩恵、宮地克典、大城亜水の各氏が論考を寄せられています。(谷合佳代子)

◆玉井金五氏 略歴

1950年三重県生まれ。大阪市立大学博士(経済学)。大阪市立大学名誉教授。