エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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「発見」された朝鮮通信使

「発見」された朝鮮通信使 : 在日朝鮮人歴史家・辛基秀の歴史実践と戦後日本
  山口祐香著 法律文化社 2024.3 

 当館の資料を活用していただいた事例として、本書を紹介します。発行から1年近く経ってしまって、ご紹介がすっかり遅くなってしまい申し訳ありません。本書は著者が九州大学に提出した博士論文をもとに刊行されたものです。

 本書は神戸大学を卒業して大阪で活動した在日朝鮮人の映像作家・歴史家である辛基秀(シン・ギス。1931~2002年)の活動を取り上げています。「はしがき」には本書の目的として、「戦後日本社会における歴史研究と社会運動の重なりから、在日朝鮮人および日本人市民の実践の軌跡に焦点を当て、その意義を跡付けることにある」とされています。

 大阪市内に「青丘(せいきゅう)文化ホール」という小さな展示会場を設立した辛基秀は朝鮮通信使の資料を「発掘」して世に出したことで知られています。映画「江戸時代の朝鮮通信使」を制作して1979年に公開し、キネマ旬報文化映画ベスト10の第4位に選ばれました。

 著者は多くの資料を渉猟し、各地の資料保存機関を訪ね、インタビューも重ねています。その一つとして当エル・ライブラリーにも来館されて資料調査と館長・谷合へのインタビューも行われました。「あとがき」に謝辞も頂戴して、図書館員冥利につきると喜んでいます。(谷合佳代子)

目次

序章 「戦後日本」の輪郭
第1章 通信使の歴史実践における在日朝鮮人歴史家の位置づけ
第2章 「アウトサイダー」としての戦後―学生運動から『季刊三千里』まで
第3章 「明治百年」への対抗―映画『江戸時代の朝鮮通信使』の制作と上映運動
第4章 「暗部」から射付ける―「大阪築城四〇〇年まつり」と青丘文化ホール
第5章 「交隣」への模索―「朝鮮通信使の道をたどる旅の会」の人々
第6章 「中心を取り戻す」ための実践―芳洲会から縁地連まで
終章 「朝鮮通信使」とは何だったのか