エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

スキルアップ!情報検索:基本と実践(新訂第2版)

中島玲子, 安形輝, 宮田洋輔著
日外アソシエーツ , 紀伊國屋書店 (発売) 2021.1 185頁

https://www.hanmoto.com/bd/img/9784816928628_600.jpg?2020-12-28T16%3A43%3A57%2B09%3A00

 初版から3年を経て発行された、新訂版。情報検索を初めて学ぶ学生、スキルアップしたい現場の図書館員、体系的に学ぶ機会がなかった社会人のために書かれた入門書、という位置づけは変わらない。

 しかしたった3年でネット上ではさまざまなサービスが終了したり新たに始まったりと、変化が目まぐるしい。さらには検索の方法も多様化し、スマートフォンを使ったりSNSを活用することも増えた。こういった変化に対応した新訂版となっている。

 また、章立ても初版と異なり、コラムとして目次の中では小さく記載されていて目立たなかった項目も大きく配置され、よくわかるようになった。その分、目次が1ページ増えている。やや難解に思えるかもしれない専門用語が目次の中で目立つようになり、しかし全体の読みやすさは変わらないというすぐれものである。

 全体は初版の3章立てから4章立てに変った。応用編と裏ワザが特にお薦めと思うので、目次も少し詳しく紹介する。

<目次概要>

第Ⅰ章 情報検索 基本編
第Ⅱ章 情報検索 実践編
第Ⅲ章 情報検索 応用編(1. 転置索引ファイル、2. 形態素解析とNグラム、3. 忘れられる権利……10. 情報収集にSNSを活用しよう)

第Ⅳ章 検索裏ワザ お役立ち情報編(2. 検索語の数はひかえめに 検索漏れを減らす、3. より広く適したものを探す 論理和や上位概念の活用、5. ソレじゃないのを探したい 論理差で検索ノイズを減らす、7. フィードバックの活用 検索に使える言葉を見つけよう、8. オリジナル情報は早い!正確! Web情報で原典にあたる、9. 失われたWebページを求めて Webアーカイブを使ってみる、11. 機械翻訳を使いこなす 日本語を各言語へコツ、14. 検索は何をもって成功なのか? 検索評価の観点)

 基本編できっちり全体像をつかんだ上で第2章に進むのが常道だが、基礎編は飛ばしてもいいと思える人は第2章から読んでほしい。あるいは、普段から慣れている図書館員や研究者なら、第3章からでもいいだろう。しかしそういう人たちも油断なく、時に1章や2章に戻ってほしい。

 第3章と第4章で紹介されている事例は初版と大きく変わらないが、「SNSを活用しよう」という項目が追加されており、その使い方の注意点が述べられている。

 以上、概ね初版との違いに着目して本書を紹介したわけだが、最後に最も目を引くことに言及したい。それはフォント(文字)である。ユニバーサルデザイン(文化や年齢にかかわらず誰にでも使いやすいデザイン)が注目される昨今、フォントも一層見やすく変更されている。

初版の紹介文はここ。 (谷合佳代子)

 

 

大阪社会運動顕彰塔の清掃

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清掃作業の前に黙とうを捧げ、顕彰塔の由来について話を聞く


1970年に大阪城公園内に建立された「大阪社会運動顕彰塔」は、戦前・戦後、そして現在に至るまで、大阪の社会運動・労働運動に貢献された方々を顕彰するモニュメントです。昨年、コンクリートの耐用年数を迎えたため、巨大なモニュメントを取り壊し、新たに「碑」を設置しました(くわしくはこちらの記事)。

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柵のきわまでびっしり雑草が生い茂る。手前が塔の敷地内


 それから1年、コロナ禍が続いておりますが、10月17日(日)に第52回大阪社会運動顕彰追悼式を挙行しました。式に先立ち、10月16日(土)には連合大阪青年委員会の方たちによるボランティア清掃作業によって草抜きなどが行われました。ありがとうございました! 昨日17日は式典が始まるころには雨も上がり、晴天となって光り輝く天球を眺めることができました。

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溜まった落ち葉を掃く

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柵から1.5メートル以内の雑草はほぼ抜き取りました

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ゴミ袋の成果

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芸術的に美しく「引っ付き虫」がついたズボン

 この清掃ボランティアは、去年までは退役労組員や中高年の労働組合員が担ってくれていましたが、今年はぐっと若返りました。若い力でこれからも大阪の社会運動の伝統を受け継ぎ、新たな歴史を築いていってもらいたいと願っています。(谷合佳代子)

新着雑誌です(2021.10.17)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

賃金事情 No2835 2021.10.20 (201412467)

労務事情 No1435 2021.10.15 (201412269)

労働法学研究会報 No2750 2021.10.1 (201412400)

労働判例 No1248 2021.10.15 (201412434)

労働基準広報 No2077 2021.10.1 (201412343)

労働基準広報 No2078 2021.10.11 (201412376)

賃金と社会保障 1787号 2021.10.10 (201412293)

月刊人事労務 390号 2021.7.25 (201412285)

月刊人事労務 391号 2021.8.25 (201412319)

 

詳細な目次はこちら

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第52回大阪社会運動物故者顕彰・追悼式について

新型コロナウイルス感染症対策のため、参加人数を制限して開催します。

 

第52回 大阪社会運動物故者顕彰・追悼式

日時:2021年10月17日(日) 午前10時

式場:大阪城ホール コンベンションホール(大阪城ホール 0570-0345-33)

 

※本年は式典関係者、新顕彰者関係者のみで開催いたします。

 

 

 

アーカイブズの公開をめぐる課題について考えるシンポに登壇しました

2021年10月10日(日)に開催された、

公開シンポジウム「市民が作る・市民が使うアーカイブズ——アクセスをめぐる課題」に館長谷合が登壇しました。

 このイベントは立教大学共生社会研究センターが主催し、当館などが共催したものです。このブログでもご案内しようと思っていたのですが、その矢先にあっという間に満席になってしまったのでした。もともと少人数でじっくり悩みを持ち合う、という趣旨だったため、当館が広報する前にすでに定員に達してしまいました。

 主催者からこのイベントの趣旨を語っていただきましょう。

 立教大学共生社会研究センターの所蔵資料は、「20世紀後半以降、国内外の様々な地域で様々な社会課題に取り組んだ人々の活動が生み出した記録です。そうした記録は市民社会の財産であり、今を生きる人々の活動を支えるものとして広く活用されることが望まれます。一方、個人に関する情報が「データ」として本人の同意なく共有・利用されることへの懸念は年々高まっており、運動に関わった過去について「忘れられる権利」を主張したいと考える運動当事者がいても不思議はない状況になってきています。

 そこで本シンポジウムでは、労働運動・反公害運動・環境保護運動などの資料を所蔵する機関の担当者をお招きし、人々が生み出す様々な資料へのアクセスをめぐる問題について、それぞれの経験や実践に基づきお話しいただきます。そのうえで、運動当事者の権利を尊重しつつ、現在そして将来の市民に最大限のアクセスを提供するために市民・アーキビスト・研究者ができること・すべきことについて、参加者とともに議論したいと考えています。

日時:2021年10月10日(日) 14:00~16:00
実施方法:オンライン会議システムZoom

 当日の参加者はスピーカーを含めて30名弱でした。公開が難しいセンシティブな資料の扱いや、実名や個人の住所・電話番号のリストが掲載されたミニコミ誌の扱いなど、現場の悩みのタネがつきない資料についてどのように市民のみなさんに活用してもらえるのかを相談しあうような場となりました。終了後は早くも二回目の開催を望む声も聞かれ、今後、研鑽を積んでいく必要性を実感しました。複数アーカイブズ(資料館・文書館)による共同宣言なども作ってはどうかという提案もありました。

 資料は活用されてこそ生きると考えていますが、どのように活用してもらうべきなのか、市販の図書や雑誌とまったく異なる性質をもつアーカイブズ(記録文書)について一層の研究が必要となるでしょう。(谷合)

スピーカー:
川田 恭子氏(法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズ 専門嘱託(アーキビスト))
2017年3月学習院大学人文科学研究科アーカイブズ学専攻博士前期課程修了、2021年3月同専攻博士後期課程単位取得退学。法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズのリサーチ・アシスタントを経て、2018年4月より現職。環境アーカイブズ所蔵薬害被害者記録の公開等を研究。論文に「スモンの会全国連絡協議会・薬害スモン関係資料公開の意義と課題」(『大原社会問題研究所雑誌』730号、2019年、pp.3-18)、「消えたふるさと、使われない水 : 徳山ダム建設反対運動裁判資料からダムの必要性を問い直す」(『大原社会問題研究所雑誌』747号、2021年、pp.27-43)など。

林 美帆氏(公益財団法人水島地域環境再生財団 研究員)

https://www.jiyu.ac.jp/jgs100/img/032-hayashi-01.jpg

2011年3月奈良女子大学大学院博士後期課程修了、博士(文学)。在学中から公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)が所蔵する西淀川大気汚染訴訟関連資料の整理に関わる。2005年より同財団の研究員として西淀川・公害と環境資料館の運営に携わり、全国の公害関連資料所蔵機関をむすぶ「公害資料館ネットワーク」の設立に尽力、現在も運営の中心を担う。2021年4月からは倉敷・水島地域の環境再生・まちづくりの拠点である公益財団法人水島地域環境再生財団(みずしま財団)研究員となり、同地域の公害に関する資料館設立に向けて活動している。共著に『西淀川公害の40年—維持可能な環境都市をめざして』(2013年、ミネルヴァ書房)、論文に「公害資料館ネットワークにおける協働の力」(『環境と公害』50(3)、2021年、pp.9-15)など多数。

谷合 佳代子 (公益財団法人大阪社会運動協会常務理事 エル・ライブラリー館長)
1982年から大阪社会運動協会にて『大阪社会労働運動史』編纂事業に携わり、2000年~2008年、大阪府労働情報総合プラザの運営を大阪府より受託。2008年7月に橋下知事の財政改革により同プラザが廃止されたため、同年10月にエル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)を開設して館長に就任、2013年には図書館サポートフォーラム賞を受賞。帝塚山学院大学関西大学等複数の大学で非常勤講師を務めるとともに、社会人院生として同志社大学図書館情報学を学び、2021年3月修士号(政策科学)取得。共著に『ささえあう図書館:「社会装置」としての新たなモデルと役割』(2016年、勉誠出版)、論文に「エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)のデジタルアーカイブとデータベース」(『コンピュータ&エデュケーション』44号、2018年、pp.22-30) など多数。


主催:立教大学共生社会研究センター
共催:エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)
   法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブ
   公害資料館ネットワーク

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第18回 職場新聞(11)『じんし』その2

 男子の深夜労働(22時30分~翌朝7時15分)は、人権争議前の1952年、彦根工場仕上.精紡の2つの職場で最初に導入され、綿.スフ紡績の全工程に拡大された。当初は昼番と深夜番の二交替制であったが、翌年には深夜専業の男子労働者が採用され、さらに雇用形態が1年契約となった(註1)。深夜専業は「ふくろう」労働と呼ばれ、上部組織のゼンセン同盟の指示もあり(註2)、1956年末から1957年春にかけて組合で廃止闘争が取り組まれ、各職場新聞にも関連した記事が見られる。

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『じんし』3号2面

深夜廃止を私たちも共に

 深夜廃止を私達女性も供に斗おう。一日一日、日毎に体力の衰えて仂く彼等ふくろうは年内にその斗争が進められると情報には流れていた。しかし、難行した賃金体系の為その方針は年を越すありさまになった。

 いや、年を越したとしても私達はふくろう廃止に協力して彼らの体を守らねばならない。彼等だけが一生懸命になってもおそらく勝利することは出来ないだろう。私達女性のしっかり組んだ手に手が彼らと一緒になって斗かわねばならない。(後略)」

『じんし』3号2面(1957.2.18)より

 『じんし』には他にも深夜廃止に関する記事が数本見られるが、深夜番男子本人が寄稿したと思われるものはない。一方、綿・スフ紡績混打綿職場の新聞『ラップ』には、深夜番自身の悩みを示す記事が見られる。

深夜廃止

 私はハシタ者である。そして絹糸にきたがやはりハシタ者である。混打綿でも今は深夜廃止で、ハシタ者としてなれた職場も出されるハメである。(中略)技術収得者、年上の者達が自分の行く前に立っている。行く道をふさがれている自分は迷う、迷う必要もなかろう、でも迷う、どうせ五.六人は余るのだ。オレは過去において職制をためした、しかし混打綿の人員を正確に出さん、オレはそのために希望した職場にも行けなかった。(後略)」

我に太陽を

 如何なる人間でもハートを持っている。唯そのハートをどのように使うかはその人々によってちがう。自分のハートは今のところひたすらに思うこの首のことだけである。自分の首がどこにフッとぶか、もういく日もなきことだ。我々にとって深夜廃止で昼の太陽が見えることは非常にうれしいが現在では照る太陽の光は安々とあびることは出来ないのだ、あびようとするにはギセイを夛分に必要としなければならないのだ、(後略)」

『ラップ』3号(1957.3.6)1面より

  このように、組合方針として深夜業の廃止が推進される一方で、深夜業従事者の再配置が大きな問題となった。彦根支部では深夜廃止に伴い会社との交渉により30名の配転先を確保したが、実際には希望退社者は80人に及び、配転需要を満たせない事態となった。

退社理由は①希望のもてない職場だから ②いつまでもエキストラ的な存在であったから ③自分のいやな職場に配転しなければならないから となっている(註3)。深夜番の配転希望先の多くは外部保全、機械保全など技術が身につく職場であり(註4)、確保した職場とのマッチングが困難であったことがうかがわれる。

(註1)朝倉克己『近江絹糸「人権争議」はなぜ起きたか』(サンライズ出版,2012)93~94・112~113頁

(註2)『大いなる翼を広げてー労働組合30年史』(ゼンセン同盟オーミケンシ労働組合,1989)95頁

(註3)『第三回支部大会報告書及議案書』(1957年6月)9~10頁

(註4)『大いなる翼を広げて』96頁

          註3の報告書によれば、配置予定の職場は、晒練12名、自動車1、倉庫1等となっており、保全技術の修得が期待できない職場も多かったと思われる。

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

新着雑誌です(2021.10.7)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4022号 2021.10.8 (201412244)

賃金事情 No2834 2021.10.5 (201412210)

労務事情 No1434 2021.10.1 (201412061)

人事実務 No1225 2021.10.1 (201412152)

企業と人材 No1104 2021.10.5 (201412186)

月刊人事マネジメント 370号 2021.10.5 (201412251)

労働判例 No1247 2021.10.1 (201412095)

 

詳細な目次はこちら

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