エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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『戦時期日本の働く女たち ジェンダー平等な労働環境を目指して』 

堀川祐里 著(晃洋書房/2022年2月/A5判228頁) 

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 本書は、戦時期の女性の労務動員についての歴史的・実証的研究から、現代にも通じる女性労働者の稼得労働と妊娠、出産、育児に関する課題を照射している。

 著者は現在、新潟国際情報大学国際学部講師で経済学博士(中央大学)。戦時期の女性労務動員についての研究論文が多く、2020年10月には、赤松常子顕彰会より「第49回赤松賞」を受賞している。

<目次> 

全体の構成は以下の通りであるが、各章の見出しと副題が工夫されていて、読者の関心のあるところからアクセスでき、読書会のテキストとして活用できるイメージが湧く。

はしがき
序 章 戦時期日本の働く女たちに関する研究のこれまでとこれから 
第一章 一九二〇年代から一九三〇年代の女性の就業状態 
― 労働運動の指導者と研究者の視点から見た働く女たち 
第二章 未婚女性の労務動員のための「戦時女子労務管理研究」 
 ― 労働科学研究所の古沢嘉夫の視点から 
第三章 既婚女性労働者の困難 
 ― 妊娠、出産、育児期の女性たち 
第四章 女性たちの労務動員に対する態度の多様性と政府の対応策 
第五章 赤松常子の主張と産業報国会の取り組みとの齟齬 
 ― 既婚女性の労働環境をめぐって 
第六章 戦時体制が残した女性労働者の健康への視点 
 ― 生理休暇の現代的意義 
終 章 戦時期日本を生き抜いた働く女たち 
あとがき

<戦時期日本の女性労働環境の研究・提言が問うていること>

 著者曰く「戦時期は、資本主義社会における自助原則、つまり自己責任の原則がむき出しになった時代であった」と。本書では、戦争を生き抜くために、働く女性たちを保護しようという視点をもった労働科学研究所の古沢嘉夫の研究や、戦前の日本労働総同盟婦人部の指導者・赤松常子(産業報国会でも使用者に抵抗した)の提言・行動を中心的に追跡している。

 労働科学研究所の研究者たちは、生殖能力の指標としての月経の調査研究を続け、女性の健康状態を可視化した。

 そして、これらの蓄積が、敗戦直後の労働基準法制定において、国際的にも初の「生理休暇」規定に結実したと規定している。労基法は第8次案まで紆余曲折を経て、生理休暇規定実現までの赤松常子や谷野せつらの健闘も貴重な記録である。均等法制定過程で「生理休暇」規定が労基法から消えたかの風潮が支配的な昨今、コロナ禍で「生理の貧困」が問題となり、最近メディアでも改めて「月経」についての考察が話題となっている。

 著者は現代的課題から戦時期の女性の働き方を照射していて、歴史研究としてだけでなく、今まさに求められている実践的課題を導いている。

 本書の帯には、~「生理休暇」が<消える>ためには?~のキャッチフレーズが踊っている。第6章では、赤松の生理休暇要求の根幹は、労働環境、休暇・休養一般の不備であったのではないか、女性労働者の労働生活の改善のための足掛かりとしてとらえていたのではないか、さらに、この規定制定後もそれで事足れりではなく、女性労働者の労働環境改善に対して主張を続けたと。

 著者の結語は、~ 現代日本を生き抜く働く女性には、仲間と繋がれば、自分たちの生活を、ひいては社会全体を変えられると信じて行動してほしい。戦時期日本の働く女たちについての本研究が、少しでも今を変えるきっかけになればと願う~と。(伍賀 偕子(ごか ともこ))