エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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『大阪砲兵工廠新聞記事集成(『大阪朝日編』)』

 同題名の『大阪砲兵工廠新聞記事集成』の大阪毎日編は、1/28に本欄で紹介しているが、同著者の久保在久が、続けて大阪朝日新聞に総あたりした労作で、製本はされていないが、データーとしては、毎日編と同程度の記事量が集成されている。上下とも2冊しか作成されていないので、エル・ライブラリーにしかない貴重な歴史的史料である。

 「大阪砲兵工廠」と言っても、どこにあったのか、そこでどのような営みがあったのか、知らない世代の方々もおられるかもしれないが、戦前、アジア最大級の兵器工場で、大阪城周辺で事業を開始してから、2019年で150年という節目となった。

 本題に関わる久保在久の著書は、1987年11月に『大阪砲兵工廠資料集』(上・下、日本経済評論社)があり、「日本産業技術史学会第1回資料特別賞」受賞という高い評価を得て、「朝日新聞」・「毎日新聞の「ひと」欄に掲載された。『大阪社会労働運動史』(大阪社会運動協会)の第1巻・2巻でも、大阪砲兵工廠に関わって、久保が詳細に執筆している。

 創立150年を機に、2019年5月に『大阪砲兵工廠物語~創立150年 新聞記事を中心に』(耕文社)を、2020年に9月に『大阪砲兵工廠年表』(耕文社)を発刊(2冊とも本欄で紹介し、閲覧可能)。今回は砲兵工廠に関わる新聞記事のうち、「大阪毎日」と「大阪朝日」が集成されたことになる。毎日版も20冊の限定版だが、今回の「朝日版」は、わがエル・ライブラリーにしかないので、多くの皆さんと共有したいと思う。

 繰り返しになるが、砲兵工廠についての著者の基本認識は、「侵略戦争推進のための兵器製造工場であったことは事実であるが、反面大阪の町の形成や産業革命推進のために果たした役割も無視できない」と「大阪毎日編」に記されている。戦時下において、陸軍からの厳しい報道規制から、どれだけ実態が記されているか、また、2紙の比較もテーマごとに追えば、興味深いところである。大量の記事を全て読むのは困難としても、毎日版に著者の注目する主要記事83件の概略が最初の5頁にわたって記載され、見出しの後の( )内に初出の掲載年月日が付記されているので、両者合わせて活用されることをお勧めしたい。(伍賀 偕子)