エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

昔内職、今スキマバイト

 4月14日18時半より、シンポジウム「これでええの? スキマバイト」に登壇いたしました。

 業界最大手のスキマバイト斡旋業者であるタイミーと闘い続ける池田真一さんのご経験からは、私のタイミー経験とは比較にならないほどひどい現場があることを知りました。池田さんのトラブルを支援する大橋直人さんは、スキマバイトで働くことで人間関係が希薄になり「社会関係からの疎外」が生じる可能性を指摘なさいました。私からは、「働き方改革」の影響で収入が減少した正社員が、生活費補填のためスキマバイトに続々参入している現実をお話しし、村田浩治弁護士は、スキマバイトの法的問題点について説明されました。

 さて、私は現在、当館所蔵の総評大阪地評議長・中江平次郎の個人文書を整理する作業に携わっているのですが、そのなかから、大阪府立職業サービスセンター発行の『内職大阪』という小冊子を見つけました。その1975年1月15日号の記事の一部を紹介いたします。

「残業がなくなったので会社を終えてから妻と2人で仕事がしたい」という弱電メーカーの従業員。「週休2日制になったので土・日曜日にできる内職はないか」という会社員。最近の窓口にはこのような相談や問い合わせがよくみられます。

 オイル・ショック直後の50年前にも、同じように収入減少に苦しみ、内職を探す事例があったことに驚きました。「昔内職、今スキマバイト」なのですね。

 ただし、当時は総評も内職者の保護に積極的に取り組んでおり、内職者も労働組合を結成するなどして、賃上げや労災保険への加入を要求していました。現在のスキマバイトワーカー間でもさまざまな情報交換が行われていますが、労働組合を結成しようとは考えないでしょう。半世紀の間に何が失われてしまったのかを考えてしまいました。(特別研究員・黒川伊織)